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Side‡R  作者: 付焼刃 俄
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REI:研究と技術の間の相互作用 その十一

 一日おいて、職業体験実習の初日。早朝七時半――。

 阪急梅田駅のホームにて、志空は光沢のある黒煉瓦の上で人混みを避けて立っていた。服装は一昨日(おととい)と同じリクルートスーツに鞄とオーバーコートである。

 自宅が梅田から十駅以上離れているので、朝六時起きという苦行を強いられた志空は昨夜から今に至るも絶食状態であった。乗車中からいましも、胃はカロリー摂取をしろと喚き立てている。

「とにかくどこでもいいから店に入って、金と引き換えに食事を()(よう)して貰おう」

「悟成さんはいつから(さん)(ぽう)の仲間入りをしたんですか?」

 押し出しの良い声に振り返ると、長身に栄えるレディーススーツにダッフルコート、いつものボストンバックという出で立ちで仁美が挨拶してきた。

「え? どうしたの万道さん。そんな格好して、就活はもう終わったんじゃ」

「私も悟成さんと一緒に実習を受ける事にしたんです」

「はぁ! なんでぇ?」

「後は卒業論文だけだから暇なんですよーだ」

 仁美は「れっ」と舌を出した。

「まあ、気にしないで下さい。さっ、朝ご飯を食べに行きましょう」

 普段から広い歩幅を殊更に広くして歩くその姿は、そうならざるを得ないほど人目に付く。実際、通りすがりに目を向ける人はいつもより多い。それでも、ずんずん歩を進める仁美は全然気にしていないようだった。

 ――これだから人間は分からない。どういう心境の変化だろうか?

 思考を重ねるだけ分からなくなってしまうように思われ、駆け寄った志空はもう一度訊ねた。

「やっぱり気になるよ。なんで万道さんまで――」

「私も明無さんが好きなんです」

 志空を見下ろしてそう言い、仁美ははにかんだ。

「それじゃダメですか?」

 脳内に伝達された幻想を、今一度しっかり振り切ってから志空は答えた。

「それでいいんじゃない?」

 ホームの窓から見渡せる景色は、陽光に照らされたビル群とそれを越えての(へき)(くう)

 青色に染まった粒子はどこまでも受け身に透き通り、一切のモノがくっきりと判別できそうだった。

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