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久々の更新エイッ(ノ゜∀゜)ノ ⌒ 口 ポィッ
例えば自分が巻き込まれつつあることに気づいていたとして、誰がこんなに早く狙われると予測できただろう?
シェルムが組の重役に接触したのは散歩に出て十数分のことだった。何の気無しに海沿いの道をぶらついていたところ、遠くから誰かが呼んでいる。声のした方を振り向くと、さほど遠くない位置にフードをかぶった少年が、にこにこしながらシェルムを見ていた。
「やぁ、散歩?僕もそうなんだ。御一緒してもいいかな。」
シェルムは無表情と無言で否認したつもりだったが、彼はそれをOKと受けとったようだ。少し間を空けて斜め後ろをついてくる。
最初は無視に近い態度をとっていたが、いつまでたっても話しかけてこなさそうなので、痺れを切らしてこっちから話しかけることになった。
「何?」
肩越しにチラリと目をやりながら棘々しく言う。
少年は驚いて大きな目を真ん丸に見開いた。その様子からかなり子供っぽい印象を受ける。
「何って、何が?」
イライラして思わず乱暴に応える。
「なんか用かって聞いてる」
少年は腕を組んで考える素振りを見せる。
「なんだろ、用事以上にさ、僕君に見覚えがあるんだよ。うーん…変だな。同世代の知り合いなんてほとんどいないはずだけど」
用事?嫌な予感がしてシェルムは身構える。
そんなシェルムの様子に気づいて少年は悲しそうに微笑む。
「交通事故で無くしてね。気持ち悪いだろ?」
そう言われ改めて少年を見たシェルムは面食らった。少年は両足とも義足だったのだ。膝から下を精密にできた木製の足が肩代わりしている。
全く気づかなかった!現に彼は普通の人と見分けがつかないほど滑らかに歩いている。
唯一足に木目があることぐらいしか気づく要素が無い。遠くからみればただの裸足にしか見えないだろう。
「だから学校とか行けなくてね。同い年の友達は一緒に入院してた子一人なんだ。その子がその時励ましてくれたのをいまだに思い出すよ」
そう語る彼は生き生きしているようだった。彼にとってその記憶は美しい思い出に違いなかった。シェルムはどうも何か思い出しそうで、彼の話にヒントを見出だすべく立ち止まる。
「まあ、その子はすぐに退院できたから一緒にいられたのは本のちょっとなんだけど…ってゴメン、不幸自慢なんて聞きたくないよね。」
先程の元気は何処へやら、彼はすぐに目を伏せ た。たちまち不気味なフード人間に姿を変える。 シェルムの掴みかけていた何かもそれと共に泡と消えてしまった。
「そうだ、君に用事があるんだった!」
危ない、危ないと首を振る彼の顔に、フードの暗い影が落ちる。そうして影から覗く瞳には、さっきとは違う光が宿っている気がした。