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しばしの間だけ学生達が解放される放課後、ポケットの中でミュージックプレイヤーをいじりながら、それでいて無心に、シェルムは歩いていた。

アキナにああは言われたものの、スリをやらないわけには行かった。まだ先月の電気代を払い終えてない。電気を切られるのはあまりに痛すぎる。

何の気まぐれか足はなんとなく裏通りに向いていて、表通り以上に騒がしい露店の小路を縫うように進んで行く。

すれちがう人々は皆、油断無さそうに辺りに気を配っていた。奇声をあげて物乞いする人もいれば高そうなスーツに肥満気味の体を包んだ男が革のバックをぶら下げて歩いていたりもする。

…おや、男の鞄からポーチが半分ほど出ている。

男は何を急いでいるのか上の空で、気づいてないようだが、あれではちょっとぶつかっただけで落ちてしまうだろう。

盗り易そうだな。

シェルムはスリを好きでやっているわけではないといったが、手癖の悪さは元からのようだ…。

さっそくフードを目深に被り男に接近、隙を狙ってなんてことないかのごとくポーチを拝借する。

男は、まったく気づくこともなく足早に通り過ぎていった。まさに熟練者の鮮やかな手つきである。

だが、シェルム自身が失敗したことに気づくことになる。なんと、ポーチを狙っていたのは彼だけでは無かった。

ポーチを手に入れた途端、人混みに隠れていたゴロツキ達がシェルムめがけて人を押しやるように迫ってきた。きっとポーチを持って来るよう依頼を高額で頼まれたに違いない、どいつも俺の出番だとばかりギラギラと意地悪く目を光らせている。

大人より子供からの方が奪いやすい。たかが少年にすぎないシェルムの手に渡ったのを見て、今がチャンスと思ったのだろう。

なんて冷静に判断している場合じゃない、これはまずい。このポーチは予想以上に貴重な物だったらしい。

今これを手放してしまおうか?シェルムは速度を上げながら考える。いいや、そういう問題じゃない。この面倒事に首をつっこんでしまった時点でただで済むわけがない。今更引き下っても無駄だということだ。

だったら。

シェルムは落ちこぼれだか、頭が悪いわけではない。面倒なのが嫌いなだけだ。今、その大きい面倒事を回避するため、敢えて小さな面倒を被る。

彼は走り始めた。追手も気づいて全力で追ってくる。

占めて5、6人。これだけいるということは、どうせ組同士の細かい駆け引きか何かだろう。盗むとか汚い仕事を無関係な奴等にやらせるあたりとかもろそうだ。だったらなおのこと関わるのは得策ではない。

すぐにでもこのポーチを追ってきている方々に返してやるべきだが、普通の方法じゃだめだ。「はい、返します」で奴等が納得するとは思えない。むしろ何か裏があると思われかねない。そしてそうなれば本当にこの問題に首をつっこまなければいけなくなる。

つまり、自分は「ただの盗人」を貫き通す必要があるのだ。

しばらく追っかけっこ……シタタタッ ヘ(*¨)ノ

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