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男は、それを手にとってまじまじと眺めた。

透明なケースに収まった濃い緑の基盤の束は、まるでスズメバチの巣のようにも見える。手のひらほどのその部品は、普通の機械をばらしたところでお目にかかれない異質な雰囲気を纏っている。

引っくり返してみたが、部品にはどこにも接続部がないようだった。

男は、あきらめて部品を机の上に投げ出し、部屋を出ていった。

乱暴に閉められたドアの振動で、その部品は机から音を立てて落ちる。途端に、部品の中で赤のランプが不規則に点滅、部屋に小さな駆動音が響き始めた。


夢はそこまで。

ハッと目をさませば、夢と同じ部屋にいた。部品が落ちたはずの場所に、大の字で寝転がっていた。思わず飛び起きて部品を探したが、夢は夢。それが見つかるはずがなかった。

なにかとても大切な物だった気がする。だから なおさら残念な気分だ。

部屋を見渡せば、大きな鏡が自分の目をとらえる。そこに写った自分。大きく目を見開く自分。

誰だお前?

姿だけじゃなく、自分が誰か思い出せない。ここがどこかも分からない。

記憶喪失。その言葉ばかりが冷静に頭にループする。こんなことなら、夢からさめなければよかった。そんなこと、いまさらすぎる。

困惑していると、ドアの向こうから、話し声が近づいてきた。

反射的に、ドアの鍵を閉める。

話し声の主は、ドアの鍵が閉まっているのに気づくと、ドアを激しく叩き始めた。その音が、ガチャガチャ鳴るドアノブが、尚更のこと恐怖を煽った。

ここから逃げなければ!

ドアに向き合ったまま辺りに目を走らせれば、窓が一つ。ほとんどつき動くようにしてその窓を開けると、身を乗り出した。

階にして2つ分ほど。地面付近には低木の植え込みが腕を広げている。それでも、身がすくむ。

悪いけど、迷ってる隙はなさそうだ。ドアを破るつもりらしく、重いものをぶつける音が部屋を揺する。

警告する生命本能を無視して。

窓枠を蹴って、勢いよく飛び出した。

後にまた出てきます。

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