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海辺の道は歩行者、自転車用の道だ。にも関わらず、バイクがこっちに突っ込んでくる。
慌てて左右に避ける。通り過ぎる刹那、アキナが声をあげた。何かと思ったら、アキナの手元にさっきの銃がない。彼女がみるみるうちに青ざめていくー…シェルムは反射的に振り向きつつ叫んだ。
「止まれ!」
その程度でバイクが止まるはずもなく、後ろ姿にシェルムの怒りが爆発する。
「止まれって言ってんだ!!」
その途端、不思議なことが起きた。銃が、重力を無視して後方に吹き飛ぶ。それをしっかり掴んでいたライダーも引きずられるようにバイクから投げ出された。そして、乗り手を失ったバイクがなんとUターンしてこっちにやってくる。シェルムめがけて突進してくる! 石の力で引き寄せられたのだ。と、するにはあまりに不自然なバイクの動き。
だが、彼の怒りはそんなこと問題にしなかった。向かってくるなら上等、壊してやる。
まっすぐに向かってくるバイクを直前で避け、側面にとり付いて無理矢理に乗り込む。バイクは思わぬ乗客にぐねんぐねんと大きく軌道をカーブさせて抵抗し始めた。振り落とされそうになりながら、シェルムは重いハンドルを力一杯捻った。急に進路を変えられたバイクの目の前にはガードレール、見渡す限りの海が広がっている。危機を感じてブレーキをかけたがもう遅い。
バイクとシェルムはガードレールを突き破って崖から飛び出した。派手な水柱が挙がる。
ライダーは壊れたガードレールに走り寄って下を覗きこんだ。小さく「マジかよ」と呟く。そしてぽかんとしているアキナを振り返った。瞬間体を強ばらせる彼女の前でライダーはヘルメットを取り去った。
「HEY、そこのまな板少女!ちょっと助けてくるから荷物とっといてくれ」
20歳ぐらいだろうか、クリーム色の髪に緑のタレ目が愛嬌たっぷりの男性だ。
アキナはおずおずと頷いたが、すぐにこの男の失礼な発言に気づいて顔をしかめた。下品だ。
だがそんなこと構ってられなかった。男はその場で上だけ脱ぐと、バンクル以外の物は全て置いて海に飛び込んだ。
彼女は男が飛び込んだ方を見やると、足元の荷物に視線を移した。おや、さっきの銃がある。
被害者に荷物を任せるなんて変わった盗人だな。銃を拾いあげる。手の中で、細かな装飾がキラキラ輝いた。同時に、被害者を助けに行く盗人も初耳だ。
「変な奴…」
(((((└(:D」┌)┘)))))))_(:3 」∠)_(:3[____]