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彼女から聞き出せるのはここまでのようだ。
最後にシェルムは心から彼女に伝える。
「チル、会えて嬉しかったよ。また会えると良いな。」
表情は読めなかったが彼女は小さく頷いた。
両者が動いたのはほぼ同時だった。チルはしなやかな動きでナイフの刃から少し距離をとり、シェルムのナイフを高く蹴り上げた。その足を、今度は彼の脳天めがけて振り落とす。パーツによって勢いをました踵落としが空を切り、音を纏う。威力はあるが動きが大き い。これなら避けれる。シェルムは間一髪でそれをかわしながら間合いを詰め、手刀で彼女のうなじに鋭い一撃を入れる。
意識を手放した彼女を支えてやる。寝ているようなその顔を見て、なんとなく複雑な気分だ。
ともかく、この場がどうにかなったのとこれからのこと、シェルムは両方に大きなため息をついたのであった。
シェルムの頭の中に、昨日得た情報が渦巻いている。オーパーツとは何なのか、“教会裏”は何をするつもりなのか、そして自分はどうなるのか。疑問も不安も、減るどころか増えてしまった。つまらないSHRも終わり、廊下を歩きながらバリバリ頭を掻きむしった。あちこちから下らない会話が聞こえてくる。それらの笑い声は彼の神経を逆撫でした。
その上アキナが無断欠席ときた。あのバカ真面目に限ってそんなわけがないはずだ。何かあったに違いない。シェルムは例のごとく一人で考えるため、体育館の屋上へ向かうことにした。
屋上には既に先客がいた。安心と呆れで息を深く吐いたのち、シェルムは声をかける。
「ここで怠けるのは俺の特権かと思ってたけど?アキナ」
アキナはゆっくり振り向いた。途方に暮れた顔に、涙の跡が見えてシェルムを驚かせた。
「シェルム、あぁシェルム!」
彼女は彼にタックルして抱きつく。シェルムはバランスを崩して危うく屋上から落ちかけた。
「私、どうしたらいいか解らないの。どうしてこんなことしてしまったのかも」
どれに対してバクバクしているか判断がつかない心臓を深呼吸で宥めて、まずは泣いているアキナを引き剥がす。
「全く状況が読めないんだけど」
義足少女はしばらく出てきません・*・:≡( ε:)