紫陽花の香[6]
「あやつらのペットに手を出すのなら、あやつらの眷属になるしかないのう。」
「どんなのでもいいわ!
はやくなんとかして!
私がこれ以上、何も苦しまない世界を、早くかえしなさい!」
「…もうよい。
貴様の願い、叶えようぞ。
童についてくるのじゃ。」
マリーについてパステルカラーの部屋を出ると、そこは歩いてきた廊下ではなく、禍々しい空気をかもし出した部屋についた。
部屋にはたくさんの蝋燭、なにかの魔方陣のような床の上には、黒くずっしりとしたテーブル。
マリーはそのままテーブルに近づくと大きな壺を持ち、壁においてある瓶詰めの液体を大量に注ぎ始めた。
「…なに、やんてんの…?」
「なにって、貴様の主との通信じゃ。
主には、何も話さなくてもようぞ。」
話しているうちに、壺から液体が浮き上がり、それは満月のようになり、ノイズを発している。
「貴様、何の真似だ?」
《怒るでないよ、マリー?》
「貴様のペットがうるさいのでな。
…どうせ、みていたんだろう?」
《まあ、ね。
…さて、撫子。君は本当にその願いでいいのかい?》
「あ、当たり前よ!
あんたが私の願いをかなえてくれるの?」
《ニンゲンは本当に面白いね。
いつの時代も同じことの繰り返しだ。
撫子、君の前世も同じことを繰り返したよ》
ソレはクスクスと笑いながら、穏やかに言う。
光は撫子を優しく包み込むように輝き、地下のような薄暗い部屋を、暖かくしてくれた。
《どうやら、君には反省する気はないようだね。
8000年かけてやっと転生できても、同じことを繰り替えすなんて。
君みたいなオモチャは、もういらないよ。
マリー、君の好きなようにしてくれ。》
「ほう。
あの女も消していい、というわけじゃな?」
《何言ってるの?
アレは君のじゃないか》
ケラケラと無邪気に笑うソレはふわりとマリーの周りを飛ぶ
《君はとことん残酷になっていくね。
…そんなにはやくこっちにきたいかい?》
「…貴様に言われたら終いだな。
どの口が行っておる。」
《相変わらず、だね》
「はやく帰れ。
貴様への用件はとっくに終わっておる。
できれば二度とかかわりたくないわ。」
マリーの言葉を聴いていたのか、いないのか既に知る方法はないが、ソレは勢いよく魔方陣の中へと溶け込むように消えていった
「…なん、だったの、あれ…」
「貴様らでいう、神じゃ。
悪魔、仏、などともいうのう。」
「なんか想像とだいぶ違ったわ
」