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噂
ある村が消えてから何世紀も過ぎた
いくつもの国ができ、世界は進化を遂げた。
しかし、昔から変わらない噂がある。
満月の夜には魔女が出る、と。
魔女は願いを叶える代わりに大事なものを奪って去っていく。
魔女にあって生きて帰ったものはいない。
いろいろな噂があるが、どの噂にも共通しているものがある。
“願いがかなう”
人はいつの時も欲求に忠実だ。
それは黒く歪み、いつか自分の首を絞めることになろうとも。
満月の夜
今夜もたくさんの欲望につられて魔女が姿をあらわす。
魔女の名前は“マリー”
かつて消えた村に住む少女は姿を変えて破滅への協奏曲を奏でる。
「マリー、お客さんだよ」
「…わかっておる」
紅い髪をゆらしながら重い腰を上げる魔女と黒い髪をゆらして歩く少女
二人の住むこの城には濃い霧と深い森の中心に位置している。
ここに辿り着くには願いを叶えたいという強い思いがないと城につく前に“番犬”に殺されてしまうだろう。
「エリーゼ、客人にもてなしの準備を。」
「はーい」
ぱたぱたと走っていく少女-エリーゼ-を見送るとマリーはそのまま正面玄関へと足を進めた。
願いを叶えるために。