いざ晩餐会へ(ユースケ視点)
時刻は午後四時。
俺とカイル、ルマンは正装に着替え、晩餐会の会場である大ホールへと向かっていた。
「それにしてもかたっくるしいな」
「そう言うな、ユースケ。正装なんてこんなもんだ」
「そうですよ。ユースケさん。とは言っても私はそうでもありませんが…」
着なれないタキシードの堅苦しさに俺が愚痴をこぼせば、すぐさまカイルとルマンから諌められる。
カイルはさすが貴族の息子だけあって、完璧に着こなしているし、慣れているようだ。
ルマンは僧侶ということで、何故か神官が着るような正装。
つまり神官服を着ていると言うわけだ。
ゆとりのある神官服を着こなしたルマンにジト目を向けながら歩いていると、大ホールの手前で女性陣とフレイに出くわした。
思わず感嘆の溜め息が漏れる。
カイルなんて、顔を赤くして完全にフィーに魅入っている。
うちの女性陣はルミナスを含め、皆綺麗だ。
ルミナスは子供の姿だから可愛いと言った方が正しいのかもしれないが、精霊王だけあって神々しさを感じる容姿である。
フィーは、自分では無自覚のようだが男性を惹き付ける容姿をしているし、リリスは若いながらも淑女のような雰囲気を醸し出している。
こんな二人に微笑まれたら、男はイチコロだろう。
姐御は…まぁ、喋らなければ迫力美人で通る。
喋ってしまえば、山賊の女頭領みたいになってしまうが…。
それはともかく、そんな美人揃いの女性陣が正装であるドレスを着て立っているのだ。
感嘆の溜め息も漏れるというものだ。
フィーは細かい意匠が凝らされた、瞳の色と同じ濃い目の紫色のドレスに身を包み、少し空いた胸元と背中がセクシーだ。
ルミナスは瞳の色より薄い黄緑色のフワフワしたドレスを着てとても可愛らしい。
リリスは水色のドレスで清楚な雰囲気が際立っているし、何よりもこういう場に慣れているのか気後れした様子が見えない。
姐御は真っ赤な魅惑的なドレスで豊満な肉体が惜しげもなく晒されている。こちらも堂々としたものだ。
姐御に至っては性格的な面が大きいと思われるが…。
ビシッと子供用タキシードを着こなしたフレイも、ルミナスほどではないが、火の精霊王らしく雰囲気がどこか神々しい。
だが、それを上回るだけの女性陣の装いに目が離せなかった。
暫くながめていたのだが、フィーのモジモジとした様子が気になって声をかけてみた。
「フィー?どうかしたのか?」
「いや、皆がじっと見てるから気になっちゃって…やっぱ似合ってないよね?」
モジモジしながらそう尋ねてくるフィーの上目遣いに、隣から「グハッ」という撃沈したカイルの声が聞こえた。
姐御はそれを見て、一人で大爆笑している。
「フィーさん、とても似合っていますよ。そろそろ時間ですので会場に入りましょうか」
ルマンの助け船で、俺たち一行はやっと会場に入ることができたのだった。




