奪還戦(ユースケ視点)
カイルとルミナスの心が心配で、セディスと呼ばれた魔族の男の相手をしながらも、様子を確認していた。
もし、無理そうなら戦闘から外そうと決めていたから…。
順調にフィーの命を削るために攻撃する二人を見て、そんな心配は杞憂だったかと胸を撫で下ろす。
いくら莫大な力を持つ魔族と言えど、大人数である俺達の相手をするのは、かなり骨が折れるようで、もうすぐ戦闘が終わる…そう思った矢先の事だった。
セディスと呼ばれた魔族に止めをさし、カイルたちの方に駆け付けようと目を向けると、カイルがフィーにフラフラと近付いて行くのが見えた。
フィーを見れば、カイルに向かって腕を差し出している。
(なんだ?)
俺は混乱した。
フィーがカイルを求めているように見えたから。
だが、フィーがニヤリと笑ったのが見えてハッとなる。
(罠か!!)
「カイル!駄目だ!」
俺の制止の声も届かず、カイルがフィーに触れようとしたところで、カイルの背中から剣が突き出した。
流れ続ける赤い血を見て、目の前が真っ黒に染まる。
「あーっはっはっはー」
フィーの高笑いが聞こえて怒りが沸いてくる。
とその時、異変は起きた。
フィーの目の色が高速で変化していたのだ。
魔族の色である赤から、本来の色である紫へと。
その様子を俺達は呆然と見ていた。
(何が起きている?!)
フィーの口が僅かに動いて何事か呟いた後、リリスが武器である鉄扇でフィーの頸動脈をバッサリと切り、血が吹き出す。
俺は急いでフィーの元へ向かった。
「ルマン!カイルに蘇生魔法だ!俺はフィーをやる!」
「はい。わかりました!」
「「ホーリースピリチュアル!!」」
淡い光が二人を包み込む。
俺の体から、魔力が急激に減っていく。
その感覚で蘇生が成功していることがわかる。
(さっきフィーは何て言ったんだ?ああ、そうか。ありがとうだ。)
そんなことを考えながら、俺は意識を手放した。
目を覚ますと、そこは知らない場所だった。
「ユースケ!目が覚めたのかい!?」
起き抜けの耳に響く姐御の声に頭を押さえながら「ここは?」と尋ねると「王城じゃ!」とルミナスから返事が返ってきた。
どうやら魔力が切れて気を失った俺を、皆が王城まで運んでくれたようだ。
「そうか…すまん。ッッフィーとカイルは!!??」
ガバッと体を起こすとまだ頭がクラクラした。
「二人は別室で眠っていますわ。まだ目覚めませんの。脈は正常のようですので眠っているだけのようですわ。」
リリスのその言葉でほっと胸を撫で下ろす。
「そうか。良かった…」
俺の様子に仲間から笑みが溢れる中、ルマンから不機嫌な声が飛んできた。
「良かったじゃありません!ユースケさん、なぜ回復してから蘇生魔法を使わなかったのですか?魔力が完全に切れたら貴方も無事では済まないんですよ?わかっているんですか!?」
初めて見るルマンの怒り顔にタジタジになりながら「すまん…」とだけ言うと、皆から笑い声が起こる。
それを聞きながら、俺は今回の作戦が成功したことを噛み締めたのだった。
戦闘が意外とあっさりですみません。
私の文章力不足です。




