作戦会議2(ルマン視点)
短めです。
今日中にもう一話上げます。
「男神セルフィスの腹心マテス…」
私の口からこぼれ落ちた言葉は、自分でも驚くほどにホールに響き、そして震えているのがわかりました。
男神セルフィスといえば、女神コーネリアと対と言われているこの世界の神です。
私が研究者時代、何度も名前は聞いた存在。
今でこそ、宗教が廃れているが、私が研究者でありプレイヤーであった時代は崇められていた神という存在。
今でも一部では狂信的ともいえる信者がいると伝えられています。
文字通り、雲の上の存在である神の腹心がなぜここに?
まさか、何かの怒りに触れたのだろうか?
私は震える体と声を抑える事ができませんでした。
「はぁ?男神の腹心?何でここに?」
私が問いたかった事をユースケさんが代わりに尋ねてくれました。
人の心の動きに敏感なユースケさんの事ですから、私の表情で何かを察したのでしょう。
他の方々は、武器をおさめ、ユースケさんとマテスさんの会話に耳をすませようとしています。
「はい。私は男神セルフィス様の臣下であるマテスと申します。今回の事にセルフィス様は、お心を痛めておいでです。不束ながらこのマテス、皆様のお役にたつようにとこちらへ参った所存でございます。」
「今回の事って…フィーのことか?!」
マテスさんの言葉に一番に反応したカイルさんが身を乗り出して尋ねました。
「はい。フィーさんという、魔族に操られている方の件でございます。」
私達は顔を見合わせ頷き合いました。
「話を聞こう」
ユースケさんの一言に、マテスさんは笑顔で答えました。
今、ホールではマテスさん以外の全員が苦い顔をして黙りこんでしまっています。
なぜなら…マテスさんが仰った言葉は想像以上に過酷なものだったからです。
「つまり、フィーは魔族に操られているってことだな?」
「はい。私はあまり詳しくは知りませんが、フィーさんという方は心に深い闇を抱えていらしたのでは?」
「……」
ユースケさんが黙ってしまったことが何よりの答えということでしょう。
私にはわかりませんが、カイルさんも何が心当たりがあるように見えます。
ルミナスさんが、そんな二人を見て口を開きました。
「主様の心に暗い感情が渦巻いておったのは妾もわかっておった。だが、主様を救うには、本当にその方法しかないのか?」
「はい。魔族に操られているとはいっても、今のフィーさんはあなたたちの事を完全に忘れています。」
「それはあの夜のフィーの様子からもわかるよ。」
姉御さんがマテスさんの言葉に同意を示します。
ですが、皆さんの顔色は一向に晴れません。
リリスさんに至っては、顔面蒼白で言葉もないようです。
無理もありません。
リリスさんは、フィーさんを異常にも思えるほど慕っておいででしたから。
そんな私達を見渡して、マテスさんは一言、そう一言だけ言いました。
残酷とも言える言葉を。
「あなたたちが力を合わせてフィーさんを殺してください。」
私達は再び悲痛な気持ちで頭を抱えることになったのでした。




