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ここって異世界ですか?  作者: 瑠紆
対決編
80/118

魔族の真実

「○○○、お前は俺が守ってやる。」

「○○○、あんたは一人じゃないよ。」

「○○○、仲間なんだから当たり前だろ?」


『人間の娘よ、闇に身を預けるな』


自室のベッドから飛び起きる。

酷く具合が悪い。

変な夢を見たからかもしれない。

輪郭のぼやけた人間が、私に向かって何かを言っている夢。


ここは城の自室だ。

日の光すら入らず、とても居心地がいい。

でも自分の中の何かが、今の私を強く否定する。

その煩わしい感情を憎しみで塗り替えた私は声を張り上げセディスを呼んだ。


「セディス!」


「お呼びでしょうか?王」


部屋の外で待機していたらしいセディスは、直ぐに私のもとへ来て跪く。


「うん。ついに明日だね。明日は私とセディスで行こうか。二人は置いていこう。ミナミは身籠っているんだし。」


「は!仰せのままに。」


「それだけ。下がっていいよ。」


「はい。失礼致します。」


セディスが部屋から出ていったのを確認した私は大きく息を吐き出した。

王として振る舞っているときだけ、私は正気でいられる。

それがこの二日間で気付いたことだ。


この城には三人の臣下がいる。

セディス以外の二人はカナタとミナミという名だ。

二人は夫婦で、ミナミはカナタの子を身籠っている。

子が出来にくい魔族にとって、子は宝。

ミナミを戦場に連れていく事はできない。

カナタもしかり。

男が居なければ女は子を成せぬ。


圧倒的な私とセディスの力をもって敗北などということはあり得ないだろうが、保険は残しておくべきだ。

我が種の繁栄の為にも。


「ついに明朝か…」


誰に聞かせるわけでもなく、私は一人呟く。

拭いきれない不安を抱え、再び眠りについた。



ーーーーーーーーーーーーーーー


Side セディス



王の部屋を出た私はそのままカナタとミナミの元へ向かう。


王の言葉を二人に伝えるためだ。


「カナタ、ミナミ、居るか?」


二人の部屋の前まで辿り着いた私はノックをしながら声をかけた。

すると、少し間を置いて、扉が開く。


「セディスか。どうした?明日の計画の事で何かあったのか?」


促されるまま部屋に入れば、カナタが開口一番にそう尋ねてきた。

ミナミも不安気にこちらを見ている。

私はそれに答えるべく口を開いた。


「王は私と二人だけで計画を実行されると仰った」


二人の目が驚愕に見開かれる。


「何故だ!?俺たちじゃ役にたてないとでも!?」


「私だって戦えるわ!!」


責めるような言葉を投げかけられた私は、王の意思を伝える。

『身籠っている者を連れてはいけない』と。


「王は先を見ておられる。」


そう言えば、二人は口を閉ざす。

辛そうな悔しそうな顔をしている二人を一瞥し、私は部屋を後にした。



私は広くない廊下を歩きながら思いだしていた。

王を見付けた時の喜びを。


私達はこの土地から解放されるべく、方法を探していた。

そして150年ほど前、漸く見付けたのだ。

その時はわからなかったことも、今ではわかる。

我々は虐げられる為に作られた生命だと。

漸く見付けたヒントや真実から目を背けるほど我々は愚かではない。


だからたどり着けたのだ。

全ての真実に。

この世界が他の世界の人間の手で作り替えられたにも等しいということに。


初めは意味がわからなかった。

異なる世界へ干渉する事など正気の沙汰ではない。


だが気付いたのだ。

こちらへ干渉する事が可能なら、こちらから干渉することも可能なのでないかと。



我らが漸く探しだした手掛かりである、『研究者』とやらが作った『装置』とやらの記憶を闇魔法で盗み見た時、我々は歓喜にうち震えた。


魂が漆黒の者を見付けたのだ。

我々魔族にとって黒は至高の色。

深い絶望の色。


そして今、その方はこの城にいる。

求め続けた我らの王となって。


だが、せっかく呼び寄せた王は、こちらの世界に来て変わってしまわれた。

漆黒の魂は光が混じり、絶望の感情の中に喜びが混じりこんだ。

総ては人間どものせい。

我らの王を穢す人間どもを我々は許さない。


「ふっ、明日が楽しみだ」


私は口の端を僅かに上げて、一人微笑んだ。




Side Out

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





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