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ここって異世界ですか?  作者: 瑠紆
王都編
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王都へ

部屋で色々な事を考えていると、カイルがご飯に呼びに来た。初めての冒険者メンバーが集まっての食事だ。少し緊張する。

食堂に降りると、もう皆集まっているようだった。

急いで空いている席に座る。


「よーし、全員揃ったようだし始めるか」


やっぱり私が最後だったのかと申し訳なさに小さくなっていると、

「フィー、立ってくれ!」

とカイルの声が聞こえてきた。

まさか、怒られるのかとビクビクしながら立つと、皆が笑いを噛み殺しているのがわかる。


「おい、フィー、お前はここにいる奴等の命を救ったんだ!もっと堂々としてりゃいい。」

とカイルが笑いながら言うと、

「そうよぅ、フィーちゃんは私達の恩人だもの。王都までしか一緒に居られないのは残念だけど、何かあったらいつでも頼って頂戴」

と、冒険者メンバー紅一点のナージャさん。


「そうだよ、僕はフィーさんの魔法に感動したよ。もっと、自信を持って」


魔法使いのリクルさんが言えば、周りから声が飛んできた。


「そうだそうだ」


「フィーちゃん、ありがとう」


「結婚してくれ!」


「俺達で良ければいつでも力になるぜ!」


「今度うちの嫁さんの料理ご馳走するぜ」


食堂が優しい言葉で埋め尽くされる。

さりげなくプロポーズしてくるひともいたけど、皆の言葉に涙が出た。

なんでこの世界に来てしまったのかなんて考えたけど、この優しい人たちを守れただけでも来てよかったと思える。



「皆、ずるいですよ。こんな不意討ち。」


私が泣きながらジト目で言えば、食堂に笑いが起こった。


「おい、皆!、今日は俺の奢りだ!ジャンジャン飲め!」


カイルがそう言った途端、お酒や料理の注文が飛ぶ。椅子に座り、ちょこちょこ料理を摘まんでいると、カイルが隣に座った。


「フィー、あまり抱え込むな。」


頭をぽんぽんと軽くはたかれる。恥ずかしくなって、目の前にあったお酒を煽った瞬間、私の意識は暗転した。




翌朝。


「頭痛い。」


二日酔いである。今日は午後から王都に出発なので、それまでに冒険者ギルドに行って、ギルドガードを取ってこなくてはいけない。体が辛いので試しに治癒魔法を掛けたら、すぐに効いた。二日酔いが、治癒魔法で治るのもびっくりしたが、腕輪があるから大丈夫だと、お酒を煽ったのに普通に酔っ払った事にショックだった。


「酔いは状態異常に含まれない事を学習したよ。ゲームでは飲んだことなかったからなぁ。よし、二日酔いも治った事だし、ギルドでも行こうかな」


下に降りておかみさんに水を貰い、顔を洗ってから朝食を貰う。今日の朝食は二日酔いが多いため、お粥のようなものだった。おかみさんありがとうございます。胃に優しいです。感動していると、おかみさんが溜め息をつきながら言った。


「フィーちゃんは火酒をグラス一杯煽ったったって聞いたけど、二日酔いがないなんてすごいねぇ!あいつらは皆二日酔いだって言ってだぁれも、降りてきやしない。情けないねぇ…」


すみません。私ズルしました。

私もどちらかといえば皆さんの仲間です。とは言えず、曖昧に笑って部屋に戻り、歯磨きをしてからギルドへ向かった。



ギルドに着いて受付まで行くと昨日のエルフのお姉さんに、

「いらっしゃいませ、ギルドマスターがお待ちですので、奥のお部屋へどうぞ」

と笑顔で奥に通される。

昨日話をした部屋に着くと扉をノックした。


「どうぞ、お入り下さい。」


「失礼します」


部屋に入るとウィンディがお茶を淹れている。


「お早う御座います。えっと、ウィンディ? 」


ウィンディは聞こえているのかいないのか、真剣な顔でお茶を淹れている。手元が覚束無いので、とてめ危なっかしい。ハラハラしながら見ていると、ギルドマスターが苦笑していた。


「フィー様がいらっしゃったと聞いて自分でお茶を出すと言って聞かないのです。フィー様は精霊王に本当に好かれているのですね。」


「ギルドマスター、私の事はフィーと呼び捨てで構いません。 どうも、フィー様と呼ばれる事に慣れていないもので。」


「ふぉっふぉっふぉっ、そうですかな?ではフィー殿と呼ばせて貰っても宜しいですかな?」


「はい、構いません。」


ギルドマスターと二人で和やかに話していると、危なっかしい姿勢で私の元へお茶を持ってくるウィンディ。ガチャッと音を立てて私の前にお茶の入ったカップが置かれた。

ウィンディはソワソワしながらこっちをうかがっている。

私はお茶に口をつけ、一口分飲み干した。


「ウィンディ、おいで。」


私が呼ぶと緊張した様子のウィンディが下から見つめてくる。


「ウィンディ、目を閉じて」


「はっはい。」


ぎゅっと目を閉じるウィンディの口にアイテムボックスからこっそり出した砂糖菓子をそっといれる。


「!?」


目を見開いたウィンディが可愛くて、そっと笑顔で頭を撫でると、嬉しそうにはにかんだ。


「主様、ありがとうございます。暫くお会い出来なくて寂しいです。」


さっきとは一転、目を潤ませるウィンディ。


「ウィンディ、また遊びにくるよ?やらなきゃいけないことが終わったら一番に会いにくるわ。今度はルミナスも一緒に!」


「はい!」


よし、ギルドガードを貰って帰ろう。


「あの、マスター、ギルドガードを貰っても良いですか?」


「あ、すみませんな。お二人の柔らかな雰囲気にのまれておりました。では、こちらがギルドガードになります。あと、もうひとつ」

と言いながら、マスターは一通の手紙をテーブルの上に出した。何かと不思議に思い尋ねてみる。


「これは剣聖らと共に王都に向かわれるとききましたので、差し出がましいかもしれませんが、王都の冒険者ギルドのギルドマスターに当てた手紙です。王都のマスターとは古い友人でして、何か困ったことがあれば必ず助けてくれるはずです。」


「何から何までありがとうございます。お世話になりました。では次にお会い出来る日までお元気で。ウィンディ、いいこにしてるのよ。またね。」


ウィンディに手をふりながら部屋を後にした。

ギルドから出て宿に戻り準備を始める。持ち物は全てアイテムボックスに入っているので、おかみさんへの挨拶だけだ。

食堂にいるおかみさんを見つけて近づいた。


「あら、フィーちゃんどうしたんだい?」


「おかみさん、1日だけでしたが、お世話になりました。食事も凄く美味しかったです。またかならずきます。」


ペコリと頭を下げると

「あらあらあら、フィーちゃんはいいこだねぇ。またおいで。とっておきの美味しいご飯をたべさせてあげるからね!気を付けて行くんだよ!」

と言って宿の外まで手をふりながら送ってくれた。



「よし、そろそろ待ち合わせ場所に行こうかな」


私は少し早足で待ち合わせ場所の南門前に向かった。









南門に着くと、殆どの人が集まっているようだった。


「よぉ、フィー来たか。あと二人来たら出発するからな。」


カイルと話してるうちに最後の二人が同時に到着した。


「よし、全員揃ったな!出発!」


号令と共に馬車が動き始める。

記憶の片隅にある王都の街並みに思いを馳せ私は一歩踏み出した。



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