歓迎会
「ちょっとここで待っててね」
道すがら拗ねているルミナスをなだめ拠点へ戻ってきた私は、リリスに入り口でそう声を掛け、ルミナスと共にホールへと向かう。
ホールでは楽しそうにユースケ達が談笑していた。
笑っているところを見ると、姐御の『説教』とルマンさんとの『お話』は終わったようだ。
「お?もう帰ったのか?早かったな。」
「うん。ちょっと色々あって…」
私の存在に気付いたユースケが声をかけてくる。
姐御とルマンさんもこちらを振り向いた。
私が困ったように答えれば、全員の顔が厳しく変化した。
「まさかなんかあったのかい?!」
姐御の心配そうな言葉に、私は焦る。
「いや、そうじゃなくてちょっと厄介なことが起きたというか…個人的に。」
「それは後ろの奴の事か?」
ユースケの言葉を聞いて振り向けば、私の背後には入り口で待っているはずのリリスとフレイが居た。
あんた達は待ってることも出来ないのか?!と、若干呆れながらも、肯定の意味を込めてユースケに頷く。
「仲間が増えるのは良いんじゃないか?お前は大変だろうけど…」
「そうだね。フィーちゃんは大変そうだけど、ヴァンパイアが仲間なら心強いからね!」
「何と!?吸血族がまだ残っていたとは驚きです!皆さん、正式サービス時に種族変更されたとばかり思っていたものですから。いやぁ、興味深い!」
ユースケ、姐御、同情的な意見ありがとうございます。
そしてルマンさん、研究者としての顔が覗いてますよ?
とは言えずに、曖昧に笑ってごまかす。
ユースケは同じギルド所属だからもちろん、姐御もうちのギルドと仲が良かったため、私がリリスの吸血攻撃から逃げ回っていたことを知っている。
「ユースケさん、姐御さん、お久し振りですわ。そしてルマンさんでしたかしら?お噂はかねがね。素晴らしい腕前の僧侶だと聞いております。道すがら、大体の事情はお姉さまからお聞きしました。ふつつかものですが、これからフレイ共々よろしくお願い致しますわ。」
花もほころぶ様な笑顔と丁寧な言葉遣いで好感度はMAXだろう。
私以外には。
とにかく、私には幸か不幸かリリスの仲間入りが実質決定付けられた瞬間だった。
意図せずに仲間はずれの様になってしまったカイルが、女性陣が入浴中にユースケから話を聞かされて、軽くいじけてしまっていたのは余談である。
何はともあれ、余っていた部屋を姐御、リリス、ルマンさんにあてがった後、仲間も増えたということで歓迎会と称した宴会が開かれることとなった。
「じゃあ、私とルミナスは料理作るね!」
「なら俺は酒の買い出しに行ってくる。」
「俺は一応、国王に挨拶してくるわ!無事だってしらせねぇとな。」
と言うことで、それぞれ作業に取り掛かる。
カイルは買い出しのために街へと繰り出し、ユースケは王城まで転移していった。
姐御、リリス、ルマンさんは、今日はゲスト扱いな為、部屋で荷物を整理しつつ寛いで貰うことにする。
約二時間後、ホールのテーブルには和洋折衷な料理が並び、目にも鮮やかな光景が広がっていた。
部屋から出てきた面々も全員テーブルについている。
なぜか国王にカイル父、知らない少女までいるが、それは見なかったことにしておく。(後で知ったが、少女は皇女様らしい。)
全員のグラスに見るからに上等だと解る深赤のワインが注がれたところでユースケがグラスを持って立ち上がる。
うっとりとした顔でワインを見つめているリリスは無視だ。
なにを思っているか考えたくもない。
「んじゃ、仲間も増えたし、俺も生き返ることができたっつーことで…乾杯!」
「「「「「「乾杯!」」」」」」
全員がグラスを掲げ、宴会が始まった。
これが最後の晩餐となる者が出ることなど、誰も想像すらしないまま……
第二章 了
第二章終了しました。
第三章は対決編です。
ここまでおつきあい頂きありがとうございました。
これからもよろしくお願いします。




