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ここって異世界ですか?  作者: 瑠紆
結集編
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ルマンの秘密


「なぜ魔族のことを知っているんですか!?」


気付けば私は身を乗りだし、ルマンさんに詰め寄っていた。

まさか、ルマンさんも魔族に狙われているのだろうか?

それとも、やはり魔族側の人間なのだろうか?

信じたい気持ちだけあっても、現実は無情だと言うことはユキナの件で痛いほど身に沁みた。

疑ってしまうのも当然だと思う。

それでも、記憶にあるルマンさんの行動やゲーム時代の噂、何よりも自らの直感がそれを否定する。



一気に緊迫した私達の様子を見て、ルマンさんは微笑んだ。

それだけで私達の心に暖かいものが満ちるような気にすらなるのだから不思議だ。

ルマンさん自体が魔法のようにさえ思える。


私達が冷静になったのを確認したルマンさんは口を開いた。


「まず、私は謝らなければなりません。これから少し昔話をします。」


そう言ったルマンさんの顔は苦しそうで、今にも消えてしまいそうで…私達は一言も言葉を発することが出来なかった。






「ここがユグドラシルの世界だということはもうご存知ですね?」


私達は一様に頷く。


「ユグドラシルというゲームは…ゲームではありません。現実世界です。」


「は?あんた何言ってんだい?」


姐御がすかさず口を挟む。

そんな姐御を一瞥し、ルマンさんは話を続けた。


「ユグドラシルはゲーム会社であるSADコーポレーションが作ったVRMMOだと言う触れ込みでサービスを開始しました。ですが現実は…SADコーポレーションというゲーム会社など存在しないのです。」


私達を見回して更に話を続けるべく口を開いた。


「SADという研究機関がありました。その機関が研究していた内容は…異世界への干渉。つまり異なる世界へ地球の人間を転移させる装置の研究です。」


ここまで聞けば、いくら私が鈍くともこの話が重要なものだとわかる。

目で続きを促せば、ルマンさんは悲しそうに頷いた。


「SADは装置を完成させました。ですが、実験に必要な人が足りなかった。そこでユグドラシルというゲームだと触れ込みを出し、実験に必要な人間を集めました。それがゲームユーザーです。」


「そんな!?じゃあ私達は実験に参加させるために集められたんですか!?」


「はい。フィーさんの言う通りです。」


「なんてことだい。そんなの許される事じゃないよ!」


「姐御さん、それは今ならば誰しもそう思うでしょう。ですが研究者たちは装置の完成を疑ってもいなかった。まさか自分達の研究成果が不具合を出すことなど想像もしていなかったのです。」


そこまで話したルマンさんは一息つき、お茶を口に含む。

それをゆっくりと飲み干したあと、何も言えなくなっている私達に向かって、真実を語り続けた。



「装置は完璧だと思われました。そう、サービス終了の一週間ほど前までは…。あの日、AIの暴走が確認されたのです。暴走は日に日に酷くなっていった。AIは心を手にいれたかのように、命令を全く聞かず、好きなように動き始めていました。研究者は研究成果とともに、ゲームを破棄するという苦肉の策で対応しました。そこで異世界転移プロジェクトは終わったかのようにみえました。ですが…」



それからルマンさんが語った内容は衝撃だった。


全てを破棄した筈が、AIの暴走は止まらなかったこと。

装置を破壊することを躊躇った研究者の一人が秘密裏にプロジェクトを継続させていたこと。

それの弊害が、今になって出てきたこと。


つまり、私達がゲームだと思っていた世界は紛れもない現実世界だったということだった。


「でっ、でもならばなぜ、姿が違うんですか?それに力が違いすぎます。私は日本ではお世辞にも運動神経がよかったとは言えないし、ひ弱だったはずなのに…」


そうだ。私はお世辞にも運動神経がよかったとは言えない。逆上がりすら出来ず、二重飛びなんてもってのほかのひ弱女子だったはずである。

それが今では魔力やスキルを使いこなせる凄腕なのである。

信じろと言う方が無茶な話だ。


「それはここが地球より下位に位置する世界だからですよ。地球からこちらへ来ただけで、力は飛躍的に上がります。ゲーム内でレベルが上がりやすかったのもそのせいです。容姿の事ですが、こちらの世界に転移する際、一度分子レベルに分解されてから体が形成されるので、そのせいでしょう。」


ルマンさんに言われて納得する部分が確かにあった。

他のVRMMOに比べてユグドラシルはレベルが上がりやすいと聞いたことがある。

それに、この世界に来たときに体が軽く感じたのだ。

フィーになっているからかと思っていたが、そう言われれば不思議としっくりくる。


それにしても、なぜルマンさんはこんなに詳しいのだろう?


私達が不思議そうに見ていたのを気付いたのだろう。

ルマンさんは私達にむかって申し訳なさそうにこう言った。



「私はゲームの運営、つまり、研究者の一人でした。もちろん、AIの暴走を見付けたときにすぐ対処しましたが、私には責任があります。なぜなら…魔族を作り出したのは私ですから。」











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