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ここって異世界ですか?  作者: 瑠紆
結集編
63/118

姐御、冒険者になる


「というわけなんだけど…勝手に決めちゃってごめん。怒ってる?」


宿の私の部屋で、姐御をカイルに紹介した。

もちろんルナにも。

私とカイル以外にはなかなかなつかなかったルナが、姐御に撫でられて目を細めているのに驚きつつも、カイルに尋ねると、何故だか顔を赤くして固まってしまった。


「ははっ!フィーは相変わらずだねぇ!そんな潤んだ目で見つめられたら、男はいちころだよ!」


「ああ、わかってくれるか!えっと姐御だったか?」


「そうだよ。これからよろしく頼むよ!」


「俺はカイルだ!こちらこそ頼む。ルナも随分なついているようだしな。」


(なんでいきなり意気投合してるんだろ?)

ガシッと手を握りあう姐御とカイルを見て首を傾げていると、二人から溜め息が聞こえ、私はさらに困惑することになったのだった。






「姐御。さっそくで悪いんですが、そろそろ準備してエルフの里へ向かおうと思うんですけど…」


二人の溜め息の理由がわからない私は、とりあえず考えることを放棄し、頭を切り替える。


「そうだね。ユースケの爺が生き返らなきゃ大変だからね。エルフはいけすかないが…」


何だか黒いものが姉御から出ているような気がする。

エルフと昔、何かあったのだろうか?

そういえば、姐御のギルドと仲の悪かったギルドがエルフ集団だった気がする。

斧闘会(せんとうかい)』という名の通り、斧を武器に使う戦闘系だった姐御のギルドと、エルフという種族で魔力にものを言わした魔法使いギルドが仲が悪かったのは、何となく頷ける。

剣呑な雰囲気を醸し出している姐御に腰がひけつつ、これからの方針を話し合うべく話を進めた。



結果、カイルとルナは食糧の買い出しに、私とルミナス、そして姐御は街にある冒険者ギルドへ向かうことになった。



旅をするなら身分証明としてギルドカードを持っている方が何かと都合がいい。

姐御は「冒険者ギルドなんて一人で行けるさ!」と言っていたが、まだこの世界に来て間もない姐御を一人で行かせることに、とてつもなく不安を覚えた私が、同行することとなった。

ゲーム時代での常識、つまり今の世では非常識とも言われる行動を取られては困るのだ。


「じゃあ行きましょうか?」


カイルにギルドの場所を聞いた私達は、宿を後にした。





姐御と二人で歩く街は活気に溢れていた。

王都ほどではないにしろ、色んな種族の人々が雑多に混じりあっている。


「あ!ドワーフ!あっちはドラゴノイドじゃないか!」


道行く人を見ながらはしゃいだように声をあげる姐御を見て、着いてきてよかったと本気で思う私であった。


「姐御。着きましたよ。」


冒険者ギルドはすぐ見つかった。

王都やシュッペンは西洋風の建物だったが、ここは…まぁ、よく言えばレトロだ。

それでも大きな街だけあって、建物自体は王都にもひけを取らない。

そんなギルドの扉を開け、中に入ると、ざわざわしていた声が一斉に止んだ。


【おい、あの二人ヤバイな。】

【ああ、めちゃくちゃレベル高いじゃねぇか】

【美人だなぁ】


こそこそと話している声も聞こえないほど、私は焦っていた。


(なんでこの国でもこんな状態なのよー!)


自分達の容姿が人を静かにさせているとは気付かないフィーであった。




カウンターに近付き、受付譲に話し掛ける。


「すみません、冒険者登録をお願いしたいんですか」


「はい。登録はあなたですか?」


「あ、いえ、こちらの方なんですけど…」


後ろにいた姐御をぐぐいと前に押しやる。


「そうですか。紹介者はいますか?」


「あ、私ともう一人います。これカードです。もう一人は今は居ないんですけど…」


「大丈夫ですよ。もう一人の方のお名前をお伺い出来ますか?」


「はい。えっとカイルって言うんですけど」


私がカイルの名前を出した途端、受付嬢の顔がひきつった。

そして、テーブルに置かれたままだった私のカードを凄いスピードで手に取り、内容を確認していく。

段々と顔色が悪くなっていく受付嬢が心配になり、声をかける。


「あの、大丈夫ですか?」


「ハッ!!大丈夫でごじゃる。」


言葉遣いからして、全然大丈夫そうには見えないが、話が進まないので突っ込むのはやめておいた。


「あー、こほん!すみません、少し取り乱しまして。まさかSランクの方だとは思いもしなかったもので。」


受付嬢の言葉に、ギルド内が騒然となる。

なんとかそれをやり過ごし、姐御の冒険者登録を済ませた頃には、カイルとの待ち合わせの時間が過ぎていた。

その後、心配したカイルがギルドまで迎えに来たことで、『Sランクが二人とも居る!!』と、さらに場を騒然とさせたのは余談である。












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