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ここって異世界ですか?  作者: 瑠紆
結集編
62/118

新たな仲間

時はユースケが命の灯を消す直前まで遡る。


未開の地に三人の魔族が集まっていた。


「あら、エイムがやられたみたいよ?」

妖艶な女が水鏡を見ながら男に話し掛ける。


「人間どもと馴れ合って失敗したんだろう。まあいい。あいつは一番弱かったからな。」


バカにしたように男がいうと、もう一人の男がピクリと反応を示した。


「人間など滅びればいいのだ。我らを虐げた人間どもに裁きを!」


憎しみに支配された男の腰に妖艶な女の腕が絡み付く。

「ふふっ、そうね。人間と仲良くしようとしていた私達をいきなり襲って、戦って負けたからって、また封じ込めた人間なんて滅びてしまえばいいのよ」


今から150年ほど前、抗うことのできない力で魔族である四人は、この地に縛り付けられていた。

そこへ人間がやって来た。

寂しかった四人は歓喜に打ち震えた。

だが、その人間達はいきなり斬りかかってきた。

まるで敵を見るかのような目をして。

四人は戦った。自分達を守るために。

戦いに勝った四人は、また抗うことのできない力でこの地に縛り付けられた。

訳がわからなかった。

ただ、嬉しかっただけなのに。友達になりたかっただけなのに。

どうして?どうして?

悲しみが憎しみに変わるのに時間はかからなかった。


これは、とても悲しい昔々の物語。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「お久しぶりです、姐御!!」


私が笑顔で言った言葉を噛み締めるかのように、姐御の表情が次々と変わる。

まるで百面相のようで、自然と顔が緩む。


「あんた!やっぱりフィーじゃないか!元気だったかい?」


駆け寄ってきた姐御に肩を揺すられ、首がガクガクとしている私は、なんとか「はい!」とだけ答えた。


「あ、すまないね。つい興奮しちまって。」


軽くグロッキーになっている私に気付いたようで、申し訳なさそうに肩から手を離す姐御を見て、何だかとても嬉しくなった。


(姐御、変わってないなぁ…なんかとっても懐かしい。)


にこにこしている私に、姐御は困ったような顔をして爆弾を投下した。


「フィー、ここはどこなんだい?」


え?そこからですか?





幾らなんでも食堂で離す内容ではないので、私の泊まっている部屋に移動し、今までの事を話した。

ルミナスは最初、姐御を敵かと身構えていたようだが、精霊化して食堂でのやり取りを見ているうちに『何度か一緒にクエストを受けた人』だと思い出したようで、今は大人しく椅子に座っている。


「はぁ、やっぱりここはユグドラシルの中だったか。しかも150年後とはねぇ」


話を聞き終えた姐御はため息をつきながら、自分の言葉を噛み締めているように見えた。


「はい。私もびっくりしたんですが、ステータスも確認しましたし、スキルも使えますから間違いありません。それにルミナスも居ますし…」


「そうだね。精霊王が日本にいるわきゃないからね。それにしても大変だったんだねぇ」


「はい…」


「あんたが落ち込むことなんてなんにもありゃしないよ!ユキナは自業自得だし、ユースケの爺はアイテムで生き返るんだろ?なら、いいじゃないか」


俯く私に姐御が言った言葉は、ストンと心に落ちた。

この人はゲーム時代からいつもそうだ。

決して甘やかすことは言わない。

口が悪くても、何故かとてもあたたかい。

そんな優しい人。

だから信用できる。


「あの、姐御!私達の仲間になってくれませんか?」


「……」


私の言葉に、姐御はぽかーんと口を開けて固まっていた。


「いや、無理ならいいんです。でもさっきも話した通り、魔族とも戦うことになるだろうし、ユースケも生き返らせたいし、なんていうかっ…あっ、やっぱ無理で「いいよ。」へっ?いいんですか?」


「ああ、いいよ。ユースケの爺のことも気になるし、こっちからお願いしたいくらいさ。これからよろしく頼むよ!」


涙目になって狼狽える私に姉御が手を差し出す。

私は、その手を力強く握り返した。


「あのー、主様。妾はいいんじゃが、一応カイルにも知らせておいた方がいいのではないか?」


「あっ!そうだった!」


ルミナスに指摘され、急いでカイルの部屋へ向かう私が聞いたのは、姐御の楽しそうな笑い声だった。





私がカイルの部屋の前に着くと、中からカイルが出てきた。

どうやらバタバタと足音が聞こえていたらしい。


「フィー?どうした?そんな急いで何かあったのか?」


「カイル、あのね、仲間が増えたんだけどいい?」


「ふむ。全く意味がわからん。とりあえず落ち着け。」


「あー、もう、上手く説明できないっ!とりあえず私の部屋に来て!」


「フィーの部屋?いいのか?でもさすがに…こんなところでは…」


姐御に会った興奮がいまだおさまらない私は、なんかブツブツ言っているカイルを無理矢理引っ張り、とりあえず私の部屋につれていくことにしたのだった。


















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