君がため
「主様!!良かった。」
私が目覚めたのを見て、ホッとしたような顔をしたのち覆い被さるように抱きついてきたルミナスに愛しさが込み上げる。
ルミナスの声に反応したカイルやルナ、ドラちゃんが私の元へ駆け寄ってくるのに時間はかからなかった。
「フィー、大丈夫か?」
「おねぃちゃま、へいき?」
『おねぇちゃん!ぼくしんぱいしたんだよ』
私を目の前にして、口々に掛けてくれる気遣いの言葉を聞いて、暖かいものが心に満ちるのを感じる。
「皆、心配掛けてごめんね。もう大丈夫だから。それよりも、ユースケを生き返らせる方法がわかったの!」
私の起きぬけの台詞に、面々が不思議そうな顔をした。
今まで寝ていた相手が、起きた途端にそんなことを言えば、気が狂ったかと考えられてもおかしくない。
カイルに至っては、悲痛な面持ちを崩すことはなく、完全に私を可哀想な子として見ているような気すらしてきた。
だが、私が白い空間で聞いたことを皆に話すと、どうやら理解したようだ。
それでもまだ、納得するには至っておらず、半信半疑といった様子だが。
「にわかには信じられない話だが…フィーが言うなら本当の事なんだろう。」
「そ、そうじゃ!妾ははじめから信じておった!決して疑ってなどおらんのじゃ!本当じゃぞ?!」
『ぼくはさっき、おかあさんからきいたからしってるー』
「わたち、よくわかんない…」
どうやら、神からお告げ?みたいなものが神竜へ届いたようで、ドラちゃんはそれを聞かされたらしい。
カイルとルナの反応は当然だとしても、ルミナスの反応はどうなのか。
軽くジト目でルミナスを見てしまったのは仕方ないことだと思う。
見られたほうはかなり萎縮してしまっていたが。
閑話休題。
『月光樹の雫』を手に入れるという総意の元、これからの事を話し合うことになった。
のだが…、話し合いを始めてすぐ、私達は行き詰まっていた。
「ユキナの事、どうしようか?」
そう。この一点である。
隣国であるガーディナルへ向かうのは問題はない。
50年ほど前は他国との戦争で情勢や治安が悪化していたらしいガーディナルだが、今は平和らしく、国同士の仲も良いようだ。
国を出るには旅券が必要との事だが、それもアクア経由で国王に確認を取ったところ、「旅券?ええでー。出したるわー」との返答が帰ってきたので、問題はない。
エルフの里に入れるのか?との疑問も、ルミナスが居れば大丈夫だろうという話になった。
精霊を大切にしているエルフが、精霊王であるルミナスを連れている私達を邪険に扱うことはないだろうとの考えからだ。
むしろ、歓迎されすぎて帰して貰えない可能性すらある。
本気で。
ユースケを生き返らせる事が出来る期限が一ヶ月以内とのことから、一番の懸念であった移動手段についてだが、神竜の許しを得て、ドラちゃんが同行してくれることになったので、これも解決した。
となれば、やはり問題はユキナだ。
神竜いわく、山の麓にあった禍々しい魔力が消えたのを感じて様子を見に行ったらユースケが倒れていたとのことなので、ユースケは魔族に勝利したのだろうと予想できる。
ならば、王都にいるのは、ユキナとシリウス王子のみだ。
「やっぱり憂いを残しては行けないよね。」
「ああ、王都が落ちれば、この国は終わりだ。」
私の言葉に対するカイルの発言で心は決まった。
王都には、守りたい人が沢山いる。
時間は惜しいものの、捨て置くわけにはいかない。
「行こうか。王都へ」
「ああ。」
向かうは王城。
倒すべき敵はユキナ。
ユースケをこんな風にした奴の仲間であるユキナに対して、仲間だという意識は既にない。
シリウス王子は…まぁ、家族の問題なので国王にどうにかしてもらおう。
ドラちゃんの背に全員で乗り込み、私達は王都へ向かった。




