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ここって異世界ですか?  作者: 瑠紆
王都編
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確かな光

『おい、娘!人間の娘よ!』


直接、頭に響いてくる男の声に、闇に塗りつぶされていた意識が浮上する。


私は何もない白い空間に立っていた。


カイルもルミナスもルナだって居ない。

もちろんユースケも。

ユースケの事を考えると、鼻の奥にツンとした痛みが走る。


(ああ、これは夢なんだな)


再び、意識を闇の中に戻そうとすると、また聞こえてくる声。


『娘。これは夢であって夢ではない。それよりも、そこへ戻ってはならぬ。お主、人に戻れなくなるぞ。』


(そこ?居心地のよかった闇の中の事だろうか?)

そんなことを考えていると、今更ながら自分が一言も話していないことに気付く。

そして、姿の見えない相手と会話が成立している事にも。


驚いて周りを見渡すが、やはり自分以外の姿は見えない。

ただ真っ白な果ての見えない空間が拡がっているだけだ。


「やっぱり夢か…」


夢の中で何をやってるんだかと、自嘲しながら呟くと、僅かに怒りが感じられる声が響いてきた。


『だから夢ではないと言っておろうに!』


「ッッ!!夢じゃない!?だったらここはどこ?!」


『夢の中だ』


全く意味がわからない。

夢なのに夢じゃないとは何なのか?

禅問答をしているようで段々と怒りが込み上げてくる。


「どういうこと!?ていぅか、あなたは誰!?」


『ふむ。そこから話さねばならんな。いわゆる神と呼ばれる存在だ。実際のところ神ではないがな。』


「神じゃないのに神?ふざけないでよ!…もしかして私達をこの世界に喚んだのもあなた!?」


『ふざけてなどおらぬ。私は管理者と呼ばれる存在。この世界の神であって厳密には神ではない。それと、確かにお主らを喚んだのは私だ。』


姿の見えない相手に、私の怒りが爆発した。


「何のために!!?ふざけないでよ!こんな世界に来なければユースケは死なずにすんだのに!!返してよ!ユースケを!」


叫びにも近い私の言葉が、白い空間に虚しく響く。

無茶な要求をしていることはわかっていた。

いくら神と言えど、簡単に人を甦らせることなど出来るはずがないと。

理解はしていても、感情を抑えることが出来なかった。

だが、膝をつき俯いて涙を流す私に神が言った言葉は、絶望を感じていた私の心に確かな光をもたらした。



『済まないが、それは出来ん。だが、申し訳なくは思っている。だからユースケという人間を生き返らせる方法を教える』








神だか管理者だかが言うには、『月光樹の雫』というアイテムで、ユースケを生き返らせる事が出来るらしい。

ただ、それは隣の国のサイードの森にあるエルフの里にしかないようだ。

しかも、生き返らせる事が出来るのは一ヶ月以内。


その間は、神竜がユースケを守ってくれるらしい。

国を出て、エルフの里まで行くのにどれくらいの時間が掛かるかはわからないが、ユースケを生き返らせる方法がそれしかないのなら、迷う理由はない。


結局、なぜこの世界に喚んだのか?という質問には『まだ時ではないから言えぬ。』の一点張りで聞くことは出来なかったが、今はユースケを生き返らせる方法がわかっただけでもよしとしよう。


『もう時間だ。この先、お主は決断を強いられることがあるだろう。決して間違えてはならぬ。お主らの人生に幸あらんことを』



言葉と共に溢れた光が眩しくて、思わず目を閉じる。

私が再び目を開けると、白い空間はなく、神竜の住み処である洞窟で、横になっている私を心配そうに覗き込むルミナスの顔があった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


Sideサイファス


「よろしかったのですか?サイファス様。」


「よいのだ。」


「しかし、あの娘は闇に飲まれそうになっておりました。あの娘は危険です。今のうちに」


「よい!原因を作ったのは私。責任は管理者である私がとる。」


「わかりました。ですが、もし闇に飲まれた時には…」


「ああ、排除しろ。この世界に仇なす者になった時には」





Sideout


ちなみに蘇生魔法は死亡後すぐではないと効果がないという設定です。

説明をいれようと思いましたが、今回の話には割り込ませることが出来ず、後書きでの説明となってしまったことをお詫びいたします。

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