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ここって異世界ですか?  作者: 瑠紆
王都編
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人非なるもの




食事が終わって、精霊化したルミナスとユースケとレストランを出たところで思いがけない人とバッタリ会った。



「クリス?」


何故だか、目を見開いて、私とユースケを交互に見ているクリスに怪訝な顔をしながら声をかける。

すると、ハッと我に返ったらしいクリスが、私の方を見ながら、目で説明を求めてきた。

なんだか真剣な様子のクリスに首をかしげながらユースケを紹介する。


「クリス。こちらはユースケ、えっと…私の仲間。ユースケ、こちらはクリス、私の友達だよ。」


ユースケにもクリスを友人として紹介して、二人を伺う。

その後、概ね好意的な様子でお互いの自己紹介を済ませた二人を見ながら、仲良くなってくれてよかったなー。とのほほんと考えながら街ゆく人々を見ていた私は、今まで聞こえていた二人の話し声がしなくなったのに気付いて視線を戻す。

すると、クリスが驚いた様子で私を見ていた。


「ん?どしたの?」


「フ、フィー?ちょっと確認したいんだけど、ユースケさんと一緒に住むって本当??それに、その指輪…」


「うん?今日これから(ギルド拠点に)引っ越ししようと思ってるよ。いつまでも宿暮らしじゃお金もかかるしね。あと、この指輪は大切な指輪なの。ユースケに買って貰ったんだけどね。」


拠点でのルミナスとの指輪のやり取りを思い出して緩んだ顔で指輪を見ながら答えると、クリスは、用事を思い出したから失礼するわ。と慌ててどっかへ行ってしまった。

その行動に私が呆然としていると、なぜかユースケに大爆笑された。


「なに?!いきなり大爆笑するとか!」


「いやぁ、お前が相変わらずで俺は嬉しいよ」


何がなんだかわからない私は、ユースケの笑い声を聞きながら首を傾げることしか出来なかった。




クリスと別れた私とユースケは二人で街を歩いている。


「ねぇ、ユースケ、私、ユーランに行く前に洋服とか買いたいんだけど」


「ん?じゃあ俺はギルドで近場の依頼受けてくるわ。お前と一緒に依頼受けられるようにランク上げといたほうがいいだろ。」


王都の近場に強い魔物やモンスターが居るとは思えない。一体何をしてランクを上げるつもりなのか。かなり不安だが、最高クラスの魔法使いであるユースケがこう言うという事は何か考えがあるのだろう。

その考えを想像したくはないが。



意気揚々とギルドへ向かうユースケの背中を見送りながら、半ば無理矢理不安をかき消した私はクリスの店へと向かった。





引っ越すとはいっても、荷物はアイテムボックスに入っているし、拠点には必要なものが揃っているので身一つでいい。

ただ洋服は何着か買っておきたかった。



ユーランの街を歩いて気付いたが、可愛い服を売っている洋服屋が少ないのだ。

魔道具やローブ、杖等、魔法使いに必要な物を売っている店ばかり。たまにある洋服屋も、魔法学院の制服や、魔法を付与しやすい布製の服しか扱っていない店がほとんど。

完全に魔法使いの街である。

それはともかく、到着したクリスの店で精霊化しているルミナスと相談しながら、自分とルミナスの洋服や下着などを買った。

女同士キャイキャイ言いながらするショッピングは初体験で、想像以上に楽しい時間だった。

いくら他の客や店員に、独り言を言いながら買い物をしている怪しい女に見られていたとしてもだ。





洋服を買った私は、のんびりと王都の街を散策している。

ユースケとの待ち合わせにはまだまだ時間の余裕があるからだ。

何回か来たことのある市場の屋台で串焼きやらフレッシュジュースやらを買い食いしながら歩いていた時だった。


「ねえねぇ、そこの君。」


後ろから肩を叩かれ声を掛けられる。

振り返ると真っ黒のローブを着た人物が立っていた。

フードを被っているため表情は影になってわからない。異様に印象的な赤い目が不気味にギラギラと光っている。声で辛うじて男なんだとわかる。


「(気配がしなかった!?何この人、気持ち悪い。)」


活気ある市場に不似合いな突然現れた男に思わず腰が引ける。


「聞こえてる?」


「あ、はい。なにかご用ですか?」


何とか私が答えると、ニヤリと男の口が弧を描いたのを見ながら私は異変に気付いた。

誰も私たちを見ていない。市場の通路のど真ん中で立ち止まっている私達はかなり目立つ筈なのに。

そう。まるで何も見えていないかのように。

私の頭の中で警鐘がなり響く。

無意識のうちに剣に手をかけていた。

ルミナスも男を警戒しているのがわかる。


「イヤだなぁ、そんなに警戒しないでよ。今は何もしないよ、今はね。今日はご挨拶。また会おう。違う世界の女の子♪」


「っ!!!」


何時の間にか男は消えていた。忽然と。

市場に溢れる声や音がさっきよりもはっきり聞こえてくる中で、私はしばらくその場に立ち尽くしていた。




「お嬢ちゃん、ちょっとどいとくれ。」


「あ、すみません」


どのくらいそうしていたのだろうか。

市場のおばちゃんの声で我に返った私は、ユースケとの待ち合わせ場所、ギルド前に急いでいた。

とてつもない焦燥感が沸き上がってくる。

ルミナスが心配してくれたが、とても落ち着く事など出来なかった。

あの男は強い。まさかあれが私達がこの世界に呼ばれた理由なのか。

だとしたら…。


話の感じからして味方ではない。いや、味方にはなれない。だって感じた狂気が……人ではない。




「おう!フィー!Aランクに上がったぞ!ってどうした?おい!何があった!?」


ギルド前に先に来ていたユースケに崩れるように抱きつく。

震えている私に気付いたユースケが問い掛ける言葉を聞きながら私は恐怖に支配されたまま意識を失った。

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