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ここって異世界ですか?  作者: 瑠紆
王都編
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王都帰還


夜営地を出た私達は着々と王都へと歩みを進めている。

昨夜のゴブリンたちとの戦闘で、全くの役立たずだった私は、道中何が来ても大丈夫なように、今出来うるフル装備で警戒しながら歩いていたのだが、呆気ないほどに平和であった。


「いやぁ、別に敵襲を望んでた訳じゃないんだけどさ、ちょっと汚名返上できる機会があるかもって思ってたりしなかった訳じゃないけども。まぁ、平和にこしたことはないんだけどさ。」


「フィー?何をブツブツいってるんだ?もうすぐ王都に着くぞ?」


「あ、うん。ごめん独り言。」


「主様は昔から独り言を言う癖があるのじゃ!」


「そ、そうか。なんかすまん。」


「いや、カイル、そこは流そうよ!ってより、ルミナスのその発言はどうなのよ?」


本当に平和である。




「帰ってきた!王都!」


門番の人達に若干白い目で見られつつも、無事戻ってこれた事を大声(両手を上げるポーズつき)で喜んだ私は、久々に見る人の活気に少々ネジがゆるんでいた。

カイルは今回の旅で、かなり精神的に鍛えられたらしく、ちょっと私が不思議な行動をしても平気な顔をしている。

ちなみにルミナスには念のため、王都に入る直前にチビ竜とルミナスの姿を消してもらって同行しているので、端から見れば、一人で叫んでいる女と腰のポーチに子狼を入れた厳つい男という何とも形容し難い構図が出来上がっている。


閑話休題(それはともかく)




「とりあえずお風呂入りたい!カイル、いい宿知らない?」


「それならギルドの先にある『夜明け』っていう宿がいいんじゃないか?少し値段は高いが、大浴場もあるし、部屋も広いぞ。」



カイルは家に戻るようだったので、明日一緒にギルドへ行く約束をして一旦別れ、紹介して貰った宿『夜明け』に向かう。


宿へ到着し、看板娘?のお姉さんから、ダブルの部屋の鍵を受け取り部屋へ向かう。一人なのにダブルの部屋を取ることに不思議な顔をされたが、寝相が悪いからと誤魔化しておいた。



「さて、ルミナス、ドラちゃんもういいよー」


『はーい』


「わかったのじゃ」


部屋に入り、ルミナスとドラちゃんに声を掛けると返事と共に姿が見えるようになった。


「さてと、私は大浴場に入ってこようと思うんだけど、二人?はどうする?」


「妾は主様と行くのじゃ!」


『ぼくはここでおるすばんするー』


「わかったよ。じゃあルミナスは一緒にいこう。ドラちゃんはお部屋に居てくれる?」


「『わかった』のじゃ!」


大浴場は一般解放しているらしいので、ルミナスが居ても怪しまれることはないだろう。ドラちゃんを一人?部屋に残していくのは不安だが、鍵も掛けたし、最悪、盗人が入ってもチビ竜サイズならどこにでも隠れられる。と考えた私は姿を隠したルミナスと一緒に大浴場へ向かった。




「ふぅー、極楽極楽」


大浴場は想像以上の大きさだった。

体を洗った私達は二人で湯船に浸かっている。周りを見ると、一般解放しているだけあって、宿の宿泊客ではないと思われるおばちゃんや子供の姿もチラホラ見える。

ルミナスは、お風呂が初めてらしく、「主様!おふろというのは気持ちよいのう!」と嬉しそうに目を輝かせている。

そんなルミナスが可愛くて和んでいたら、のぼせて頭がクラクラしてきたので急いでお湯から上がる羽目になったのは余談である。




お風呂から上がり、姿を隠したルミナスと部屋に戻ると、ドラちゃんはベッドの真ん中で眠っていた。

ドラちゃんが眠っている事を確認し、ソファーへ座った私はルミナスに向き直った。


「ルミナス、大事な話があるの」





私の大事な相棒、ルミナス。

私が会いに行って涙を流してくれたルミナス。

そんなルミナスに話すのは恐い。私はこの世界の人間じゃないってことも、ルミナスと出会ったのも一緒に過ごした日々も、全部ゲームの中の出来事だったということも。

でも、やっぱり私はルミナスに黙っていることは出来なかった。たとえ嫌われようとも、契約を解除されようとも。過去の私を、この世界に存在していた私を証明してくれる唯一の存在。だからこそ、全てを知ってほしかったのかもしれない。




「ということなの。私はあなたの主じゃないのかもしれない。ごめんね。ルミナス。」


「…」


「…」


「妾は、妾はっ!そんなことぐらいで主様の側を離れたりはせぬ!」


「ルミナス…怒ってないの?」


「主様は主様じゃ!げーむとやらの世界で谷を守ってくれた主様も、昨日妾にご飯を作ってくれた、今ここにいる主様も同じ。優しい妾の主様なのじゃ!妾は谷へ主様が迎えに来てくれた時、もう離れないと誓ったのじゃ。」


「ルミナス…」


私が全てを話し終わった後、ルミナスは泣いていた。涙で顔がぐしゃぐしゃになりながらも、私を主と呼び続けてくれている。

私はカイルの時のように、また間違えてしまったようだ。拒絶される事を恐れず、これからも一緒に居てくれるかを聞けばよかったのに。ルミナスの言葉を聞いた私の頬も気付けば涙で濡れていた。


「ごめんね、ルミナス。あなたを傷つけて。ダメな主だけど、これからも一緒に居てくれるかな?」


「当たり前なのじゃ!ずっと一緒なのじゃ!」


私は涙でぐしゃぐしゃになった顔で仁王立ちのルミナスと顔を見合せ、笑いあった。

胸にあたたかいものが満ちていくのを感じながら。





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