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ここって異世界ですか?  作者: 瑠紆
王都編
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新しい情報


精霊の谷を出発した日の夜。


私達はヨルグの森で夜営の準備を始めていた。

ドラちゃんで王都までひとっとび出来れば楽なのだが、それをしてしまうと大騒ぎになる為、ここからは王都へ歩いて帰ることにしたのだ。

幼くとも竜。しかも、神竜である。いくら、ルミナスが光の屈折を利用して可視出来ないようにしてくれているとはいえ、念には念をいれるべきだと判断したからだ。

そして夜営の準備を始めた私は感動していた。


「凄い!凄いよ!ドラちゃん!」


カイルが集めてくれた薪に火をつけようとしたところ、『ぼくできるよー』との言葉が聞こえたと思ったら、チビ竜になったドラちゃんが薪へ向かって火をはいたのだ。そう、炎のブレスである。

チビ竜サイズなのでチャッカマンの火力くらいしかないが、火をつけるには充分だ。


『えへへー』と照れているドラちゃんを撫で回して、やっと感動がおさまった私は、食事の準備に取り掛かる。

今日のメニューは、ポルク村で貰った野菜や卵、お米を使ったオムライス。

ニンジン、ピーマン、玉ねぎを刻み、バターで炒める。そこにアイテムボックスから取り出したベーコンを刻み投入。トマトを煮詰めたソースを絡ませ、スパイスで味を整える。

炊いておいたお米をソースと混ぜ合わせたら、人数分のお皿に盛り付ける。

もうひとつのフライパンでフワフワに焼いたオムレツを乗せ、オムレツにナイフで切り目を入れればふわとろオムライスの完成だ。

デザートは錬金を駆使して、精霊たちに貰った桃?を使ったゼリーを作った。

出来上がる頃には、夜営の準備を終わらせた皆が匂いに誘われて周りに集まっていた。


「待たせてゴメンね。じゃあ食べようか?」


「主様、妾も食べてよいのか?」


私が人数分、配り終えて座ると、戸惑ったように隣に座ったルミナスが聞いてくる。

精霊は本来、食事を必要としない。

マナを栄養とするからだ。でも、必要としないだけであって、味覚もあるし、食べることも出来る。

ただ、必要としないものを与える契約者は少ないらしい。確かゲームの頃も食べていなかった気がする。


「当たり前じゃない!皆のぶん作ったんだから。それにルミナスは私の大事な相棒なんだよ?これからは同じものを食べて一緒に感じるの。」


それでも私はルミナスだけに食事を与えないという選択肢は初めからなかった。

私の大事な相棒なのだから。


「主様……」


「よし、じゃあ、食べよう。いただきます!」


「『いただきます!』」


「キャン!」


「主様、いただきますなのじゃ」


皆が一斉に食べ始める。

勢いよく食べて口のまわりがソースで赤くなってしまっているルナとドラちゃんを見て、カイルと顔を見合わせて笑う。

ふと隣を見ると、一口一口ゆっくりと噛みしめながら嬉しそうに食べているルミナスがいる。

私はこんな何気ない時間がとても幸せに感じた。



だが、そんな幸せな時間は長く続かなかった。

いち早く異変を感じ取ったルミナスが警戒を呼び掛ける。


「主様!敵が近付いておるのじゃ!」


「わかった。数は?」


「おそらく50体ほどじゃ。」


「了解!私とルミナスは殲滅に向かう!カイルは打ち洩らした敵が森から出ないように、そこで待機してくれる?ルナとドラちゃんをお願い!」


「わかった。フィー!気を付けろよ!」


カイルに夜営地とドラちゃん、ルナを任せると、ルミナスと一緒に森の中へ向かう。

夜の森だが、ルミナスが灯してくれる灯りで迷うことなく敵の気配へ近付いていた。

数が多いのが心配だが、後ろには信頼できるカイルがいる。私が打ち洩らしても問題ないだろう。


「ルミナス、近いよ!」


「主様、わかっておる。」


そろそろ姿が見えようかという距離まで近づいた私は、大事な事を思い出した。


「あ、そういえば森じゃ魔法使うなって言われてたんだった」




15分後、視認できる場所は屍が転がっていた。

敵の正体はゴブリン。

またお前らか!と思ったが、現実で初めて見るルミナスの戦い方に一瞬で目が引き付けられた。

淡く光るルミナスが手を挙げると、無数の光の矢が現れる。その手を降り下ろせば、向かっていった光の矢はゴブリンたちを貫いて霧散する。

暗い森の中で見る、その光景は戦闘だとは思えないほど幻想的で美しかった。

ぼーっとその光景にみとれていた私にルミナスが振り返った時、既に生きているゴブリンはおらず、静かな闇が広がっていた。



ゴブリンたちを殲滅したルミナスと共に夜営地へ戻り、警戒を解いたカイルたちと共にホットミルクを飲んだ後、眠りについた。



夜中に周囲を警戒していたカイルと交代してルミナスと警備にあたる。

そこで私はルミナスに聞きたかったことを聞いてみた。


「ねぇ、ルミナス、150年前に何か変わったことはなかった?」


「主様の魔力が突然感じられなくなったのじゃ!」


「それ以外には?」


「それ以外には何もないのう。」


「そっか、ありがと」


プレイヤーやNPCがどうなったか聞きたかったが、プレイヤーとNPCの違いをルミナスがわかるとは思えなかった。

結局何もわからなかったかと思ったその時、

「そういえば、フレイも主の魔力を150年前に突然感じられなくなったと言っておった。だが2年程前に主の魔力の波動を感じたと言って飛び出していったのう。」


「!!!(それってもしかしてプレイヤー?!)」


フレイとは火の精霊王だ。私と同じ時期に突然魔力を感じられなくなったという契約主。


時期は違うが、今の私とルミナスの状況に似ている。

いや、似すぎている。

契約している精霊と契約主の繋がりが突然消えたり、また同じ魔力を感じることなどあり得ないのだ。本来ならば。

一人一人の魔力は違う。

似ている魔力はあれど、同じ魔力はない。

人間には違いがわからないが、精霊や神獣、神竜、幻獣などには判別が可能だった。

ゲームの中ではの話だが。

たが、ルミナスが私の魔力を感じたとウィンディから聞かされた数日前に、私はこの世界へ来ている。

現実でもそれが可能だと考えると、フレイが契約主の魔力を間違えたという可能性は限りなく低い。


「ねぇ、ルミナス!フレイと連絡は取れない!?」


「な、なんじゃ?」


思わずルミナスの肩を掴んでガクガクと揺らしてしまった。


「あ、ごめん。」


「ふむ、フレイと連絡は取れん。妾たちは相手がどこにおるかわかれば念話が可能じゃ。だが、居場所がわからん者とは連絡が取れんのじゃ」


「そっかぁ、わかった。ありがとうルミナス。詳しい話は王都でしよう。」


フレイと連絡が取れないことに申し訳なさそうな顔で答えるルミナスに笑顔でお礼を言い、日が昇るのを遠目で確認した私は話を打ち切る。

詳しい話は王都に戻ってからでもいいだろう。

私も今聞いた情報を整理したい。

話を打ち切ると、丁度テントからカイルとルナ、ドラちゃんが出てくるのが見えた。


皆におはようと挨拶をして、私は朝食の準備に取り掛かる。

ルミナスが加わったことで少しだけ賑やかになった朝食が終わり準備をした後、私達は夜営地を出発して王都へ向かうべく歩き出した。






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