契約
今回、少し短いです。今日中に頑張ってもう一話上げます。
精霊の谷、ルミナス宅にて。
只今カイルに説明中の為、しばらくお待ちください。
「つまり、かくかくしかじかで(説明中……)」
「ふむ、まったくわからん。」
「もー!なんでわかんないのよ、カイル!」
「そんなこと言われても、フェンリルなんてもんはほとんどお伽噺の中の生き物だぞ!理解がおいつかないんだよ。」
「そんなこと言ったら、神竜だってお伽噺になっちゃうじゃない!」
「神竜は伝説だ。」
「……」
「……」
カイルに状況の説明を始めて、約一時間が経とうとしている。当の本人?のルナとドラちゃんはソファーの上でお昼寝中。ルミナスはお土産に渡した砂糖菓子に夢中である。
「そんなこと言っても、現実に今ここに居るんだから仕方ないじゃない。」
私がソファーを指差しながら言うと、カイルは溜め息をつきながら周りを見渡した。
「人間二人に、フェンリル、神竜、光の精霊王か。信じられん。」
それはそうだろう。
今の世界で、フェンリルや神竜が住む場所へ辿り着ける者が何人いるだろうか。
確かに、お伽噺や伝説になるのはわからんでもないが、今はこの状況を理解してもらわなければ話が進まない。
「とにかく!ルナは幼いとはいえフェンリルなの。カイルと契約すれば、言葉を話すことが出来るかもしれない。」
「だが、ルナはまだ子供だぞ?」
「戦わせようっていうわけじゃないんだよ?契約するにはルナの意思も確認しなきゃいけないけど、これから一緒に居るなら言葉を交わせた方が良いと思う。」
「それはそうだが「クゥーン」ルナどうした?」
いつの間にかカイルの足元に頭を擦り付けているルナがいた。
そのままじっとカイルの顔を見つめている。
カイルは溜め息をひとつつくと、ルナを抱き上げて目を合わせた。
端的に言うとお互いの意思によって、契約は成った。
だが、カイルがいくら話し掛けても、ルナは言葉を話すことは出来なかった。
ルミナスいわく、まだ幼すぎる故らしい。一緒にいるうちに話せるようになるじゃろうとのこと。
それはともかく。
「カイル。カイルの右目、金色になってる。」
「なに?!」
「あ、戻った。」
驚きは尽きそうにない。
翌朝、精霊の谷を出発する日。
「皆、準備出来た??」
「ああ。」
「キャン!」
『できたよー』
「万端なのじゃ!」
精霊たちに貰った果物や水をアイテムボックスに入れながら私が聞くと、準備が出来たらしい皆が口々に答える。
約一名、砂糖菓子のはいった袋を抱えながら返事を返してきた子もいるが、それは見なかったことにしておく。
昨日の夜、久々に泉の水で水浴び出来た私はご機嫌なのである。
「じゃあ、一旦王都に戻ろう!ドラちゃん御願いね?」
ドラちゃんの背に乗り込み、私達は精霊の谷を後にした。




