精霊の谷へ
「ドラちゃん、そろそろ降りようか。」
『うん、わかったー!』
そろそろ日が傾きかけようとしていたので、私達一行は、今日の夜営地を探すため、地上に降り立つ。
私達が背から無事に降りたことを確かめた後、幼竜はシュルシュルと15センチサイズへ変化していった。
ちなみにドラちゃんとは、言わずもがな幼竜の名前である。
道中、あなただの君だのと呼ぶことに抵抗を感じた私が名前を聞いたところ、神竜には名前をつける習慣がないとの事だったので、ドラゴンだからドラちゃんがいいんじゃないかとの私の脳内の安易な発想でこの名前になったというわけだ。
私が名前をつけた時、
『やったー!ぼくのなまえどらちゃんなのー。』
とかなりの喜びようだったので、名前の由来は墓まで持っていこうと誓った事は余談である。
ドラちゃんから降りて、早々に夜営地を決めた私達は食事を済ませ、私以外はのんびりとした時間を過ごしていた。
カラカラカラカラ。
カラカラカラカラ。
そんな私はというと、一人で火にかけた鍋を回している。
「フ、フィー?一体何をしてるんだ?」
カラカラカラカラ
「ん?お菓子を作ってるんだよ?」
手を止めて、カイルに鍋を掲げて見せると目に見えてほっとされた。
「そ、そうか。旅疲れでおかしくなったかと……」
「ん?どぅしたの?」
「いや、なんでもない。俺たちはそろそろ休ませてもらう。周囲の警戒を頼む。交代の時間になったら起こしてくれ。」
何かを誤魔化すように言葉を繋いだカイルは、眠るためにテントへ向かって歩いていった。
その後をルナが追いかけていくのを横目で見た私は作業を再開する。
ちなみにドラちゃんはなぜか私の頭の上で気持ち良さそうに眠っている。
カラカラカラカラ
ひたすら鍋を回し続ける。
作っているのは砂糖菓子。俗にいう金平糖だ。
精霊たちの大好物である。
今日精霊の谷へ入らずに、わざわざ夜営をした理由。それは拗ねているルミナスや、谷にいる精霊達へあげる砂糖菓子を作るためだ。
ところがこの砂糖菓子、可愛い見掛けをしているが、作るのにかなりの労力を要する。
まず、氷砂糖と水を合わせて煮詰め、蜜を作る。
その後、特殊な形をした鍋にザラメを入れたら、蜜をほんの少しずつザラメにかけながら蜜を纏わせる。
それを鍋を回しながら固める。
という工程を1週間ほど続ければ出来上がりだ。
鍋は錬金で用意し、鍋を回す時間は魔法で短縮させたが、それでも一回作るのに、約二時間は掛かる。
何度もその作業を繰り返し、ようやくバケツ一杯くらいの砂糖菓子を作り終えた頃には、空が白んでいた。
「よし!やっと出来たぁ。疲れたー。」
『ねぇ、おねぇちゃん、それなぁに?』
いつの間にやら目を覚ましていたらしいドラちゃんがお菓子を見て、不思議そうに尋ねてくる。
「ん?これは砂糖菓子っていうお菓子だよ。食べてみる?」
砂糖菓子をひとつ手に取り、ドラちゃんがいる頭の上へ渡す。パクッ
『んんー!!あまーい!』
どうやらとても気に入ったらしい。
それはいいのだが、私の頭の上でピョンピョン跳び跳ねるのは止めていただけないだろうか。
徹夜の脳が揺れてHPが減りそうだ。
なんとかドラちゃんを落ち着かせ、朝食の準備をする。起きてきたカイルに見張りを交代しなかった事で叱られ、その理由が徹夜で菓子を作り続けた事だという事に呆れられながら朝食を済ませ、ドラちゃんの背にのり、私達は旅の目的地、精霊の谷へ向かった。
かなりの難産でした。
文章がおかしいかもしれませんが、どうかご容赦下さい。
半分ほど書き終わっていたのを手違いで消してしまった為、構成が狂ってしまいました。
後日、修正をしていきたいと思います。




