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ここって異世界ですか?  作者: 瑠紆
王都編
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迷子ですね


瞼に光を感じて目を覚ます。


「ここは?」


「洞窟だ。具合はどうだ?飯は食べられるか?」


私の問いにすぐに返ってくる答え。


カイルが心配そうな顔をして私を覗き込む。近い近い。顔が目の前にある。まだ半分眠っていた意識が一気に覚醒する。


「カイルっ!顔が近い!」


「すっすまん!」


耳まで真っ赤になったカイルが慌てて距離をとる。手に持っていた皿とフォークを私に手渡すと、

「片付けしてくる。」

と言って洞窟の入り口へと歩いていってしまった。


カイルから渡された皿の中身は野菜のスープ。

カイルが作ったのだろうか?一口食べるとじんわりと優しい味が体に染み渡った。

スープを食べ終わり、片付けをしているカイルに声を掛ける。


「カイル、ご馳走さま。美味しかった。」


「ああ、昨晩フィーが置いていった食糧があったから作ったんだ。口に合って良かった。」


「あ、そういえばカイルはどうして昨日、私がいるところがわかったの?あと幼竜は?!」


昨日の事を思い出した私はカイルに不思議に思ったことと幼竜の様子を尋ねる。


「雨も降ってないのに稲妻が見えりゃ誰でも気付く。着いたときにはフィーが男に斬りかかられそうになっててかなりビックリしたが、ネックレスのお陰で間に合った。まぁ、フィーが黙って斬られるとは思わんが。あと、昨日の竜ならそこにいるじゃねぇか。朝から元気いっぱいで飯食ってたぞ?」


カイルの指を辿って目線を向けるとそこにはチビ竜がいた。そっか、元気になったなら良かった…ってチビ竜!?

私の目の前にいるのは、どうみても15センチ程の真っ白な竜。

青いサファイアのようなつぶらな瞳でこちらを見上げていた。おかしいな?まだ夢の中にいるのだろうか。

昨日見た幼竜は6メートルくらいあったはずなのだが。


『きのうはありがとう。たすけてくれて』


昨日聞こえた男の子の声が頭の中に響いてくる。

まさか!!


「あなたが助けを呼んでいたの?」


私はチビ竜に話し掛けてみた。


『うんそうだよ。ころされそうになっちゃっていっしょうけんめいたすけてっていったんだ』


ふむ。話をまとめると、今ここにいるチビ竜は昨日私が助けた幼竜である。

幼竜は殺されそうになって必死で助けを呼んでいた。

その声が私に届いた、と。うん、全然わからん。

いや、話はわかるのだが、6メートルが15センチになったことと、カイルが聞こえなかった声が私に聞こえた意味がわからない。唸っていても何も判明しないので、思いきって聞いてみることにした。

私の問いの答えは、

『おおきさはねんじればかえられるんだよー。おねぇちゃんにしかきこえなかったのは、まりょくをさがしてはなしかけたからだよー』


と思わず脱力するような調子で答えられてしまった。

つまり、

「あなたは大きさを自由に変えられて、魔力を探してたら私の魔力を見付けたから助けを求めたってこと?」


『うん、でもきのうのからだよりおおきくはなれない』


何だかシュンとしてしまった。何か悪いことを言っただろうか?


「どうかした?」


『だっておおきいほうがかっこいいでしょ?ぼくまだあれよりおっきくなれないの』


ショボーンと効果音が聞こえてきそうなくらいの落ち込みっぷりである。

チビ竜を私がいじめている様で、かなり居心地が悪い。これは何とかしなければ。


「私は今のあなたも可愛くて好きだよ。それに昨日のあなたもかっこよかったな。」


丸め込んでいる訳ではない。決して。実際、今の大きさのチビ竜はとても愛らしい。

くりくりの青い瞳。頑張れば手に乗せられそうな体。萌え要素満載である。

昨日見た幼竜も、かっこよかった。と思う。色々ありすぎて、あまり覚えてはいないが。


『ほんと!?ぼく、かわいくてかっこいい?』


キラキラのまん丸おめめで見上げてくる。


「うん。」


純粋な目に気圧されて、どうにか一言だけ答えると、聞かなければならないことを聞こうと、心持ち姿勢を正す。


「ところであなたはなんであんなところに居たの?」


チビ竜の目がさっきとは一転、悲しそうな目に変わる。


『えっとね、おかあさんにしかられていえからとびだしたの。きづいたらしらないところをとんでて、かえれなくなって、つかれたからやすんでたら、こわいひとにいじめられて、おねぇちゃんがたすけてくれた』


うん。これは家出と迷子ですね。

疲れて休んでいた所を昨日のヘナチョコ冒険者達に攻撃されて、私に助けを求めたと。これはどうすればいいんでしょうか?大霊山まで送り届ければいいんでしょうか?

それよりも、お母さんはこの子を探してるんでは?

神竜が大霊山から出て、町中に出たら大騒ぎどころの騒ぎじゃない。

神竜は頭の良い竜だ。ただ、子を想う母親が理性を優先させられるかはわからない。

母親の気持ちなんて孤児だった私にわかるはずもないが。


「よし、わかった。何とかお母さんと連絡を取ろう(ルミナスに丸投げしよう!)」


『ほんと?』


「うん、その代わり、私とカイルとルナを精霊の谷まで乗せていってもらえないかな?」


『うん、いいよ』


旅が一気に楽になった、瞬間だった。




カイルにチビ竜と話した内容を伝えると、とても微妙な顔になった。そりゃ、死にそうになっていた原因が、家出と迷子だと知ればそんな顔にもなるだろう。

そんなカイルだが、幼竜に乗れると知るや否や、小躍りしそうなほど喜んだ。何でそこまで喜ぶのかと聞けば、


「竜に、それも幼竜とはいえ、伝説の神竜に乗れるなんて喜ぶに決まっているだろう!」


と力説されてしまい、聞かなければ良かったと後悔したのは余談である。



チビ竜に幼竜に戻ってもらい、カイルと私は背に乗る。ちなみにルナは、カイルの神竜への興奮っぷりに、完全に拗ねている。

何はともあれ、今はまだ午前中。竜の飛ぶ速さなら今日中には精霊の谷に到着出来るだろうが、諸事情の為に、今日は谷の近くで夜営をしてもらうことにした。明日にはルミナスに会えるだろう。


「カイル準備はいい?」


「ああ、いつでも大丈夫だ!」


「じゃあ、行こうか。しゅっぱーつ!」


『はーい』


なんとも締まらない私の号令と幼竜の間延びした返事で私達は地上を後にした。


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