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ここって異世界ですか?  作者: 瑠紆
王都編
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疑念

お気に入り登録してくださった方々、ありがとうございます。

なるべく間を空けずこまめに更新していきたいと思います。

これからもよろしくお願いします。

夜営地を出て、草原を歩く。

遮るものが無いため、遠くに小さく山々が見えた。


「ねぇ、カイル、あれって…」


私が小さく見える山々を差してカイルに尋ねると、

「ああ、アルト山脈だ。あの山々を越えれば、精霊の谷だぞ。」

との答えが帰ってくる。


「うわぁ、大変そうだねぇ。大丈夫かなぁ。」

と思わず弱音がこぼれる。

何と言っても元現代日本人、山といったら新幹線から見える富士山しか見たことがない。もちろん、山登りの経験もない。

ゲーム時代に精霊の谷へ行ったことがあるので、山脈を越えてはいるのだが、疲労度や体感温度など、ゲームと現実の世界とでは比べ物にならないだろう。


「王都から一緒に旅をしてきたが、フィーの体力なら問題ないだろう。今日は山の麓を目指して、行けるところまで行こう。山に登る前にゆっくり休んだ方が良い。麓まで行けば村がある。山の中にも集落はあるが、外から来た人間に、あまり良い顔はしない。食糧も補充していった方がいいだろうな。」


もっともな言葉である。


腐ってもカンストレベル、そうそう簡単に死ぬことはないだろう。ここまで来たのだ。とにかく前に進むしかない。

ルミナスに会って、少しでも情報を得なければ。

不安そうな顔をしていたのだろうか。カイルの腕の中にいるルナが、こちらを心配そうに見つめている。


「そうだよね。よし、麓の村まで行けるように頑張ろう!ルナも心配掛けてごめんね。」


カイルの腕の中のルナの頭をひと撫ですると、『キャン!』と尻尾をパタパタしながら可愛らしくないた。

それにしても何か忘れているような気がする。



「あーっ!」


「何だ!?どうかしたのか!?」


私の大きな声にびっくりしたのであろう。カイルが真剣な顔で問いかけてくる。


「違うの!いきなりおっきな声出してごめん。あのね、これなんだけど、昨日の夜、作ったの。ルナをこのまま抱きながら旅を続けるのは厳しいんじゃないかと思って、ベルトに通せるように作ったウエストポーチなんだけどね?この中にルナに入ってもらえばどうかなって。」


「……」


「あ、えっと一応、特殊素材で作ったから防御力もあるし、伸縮性もあるから窮屈じゃない筈だよっ?」


アイテムボックスから、昨日作成したポーチを出して、説明しながらカイルに見せる。

反応がないことに焦って、機能説明を追加する。

やっぱり、ルナをここにいれるのは反対なんだろうか?


「づくり…… 」


「え?」


沈黙が痛くて俯いていた私の耳に小さなカイルの声が聞こえてきた。聞き返すと、


「手作りだと…?フィー、貰っても良いのか?」

と、カイルが肩を掴んで聞いてくる。

何だか軽く目が血走っている気がする。


「う、うん。はい、これ。」


ポーチを渡すと早速といったように、いそいそとベルトに通している。何だかとても嬉しそうだ。

そんなにウエストポーチが欲しかったのだろうか?

カイルがポーチを装着し終わると、ルナがよじ登って、自らポーチの中に入っていった。


「ルナ、きつくない?」


私が尋ねると、顔と前足をちょこんと出したルナが

『キャン!キャン!』

と嬉しそうに返事をした。

大丈夫そうだ。喜んで貰えたようで何よりである。

昨夜、ヘトヘトになりながら作ったかいがあるというものだ。

嬉しそうにしているルナを見て癒されていると、

「フィー、助かった。さすがにこのまま旅を続けるのはどうかと思っていたんだ。ルナも喜んでるようだし、ありがとう。」

とカイルに笑顔でお礼を言われた。


とても心があたたかくなった。




てくてくと草原を歩く。昼食のサンドイッチを食べた時間以外はひたすら歩く。

そのかいあって、どうやら夜には麓の村に着けそうらしい。それにしても、この世界はこんなに魔物やモンスターがいなかっただろうか? 王都から何日か旅をしてきたが、 ゴブリンにしか出会っていない。

草原といえば、初心者御用達フィールドだった筈だ。

ゲームを始めた頃の私も、草原を走り回り、強くはない魔物をレベルを上げるために狩りまくった記憶がある。まぁ、150年もすれば、討伐されまくって数が少なくなったのかもしれない。

倒しても、再度ポップしないのであれば、その可能性はあり得なくもないだろう。

ならば、クエストモンスターはどうなっているのだろうか?

カイル達と一緒に倒した魔物1000体。もうあのクエストが出現する事はないのだろうか?

クエストの存在は確認済みだ。

中級クエストまでなら、高ランクの冒険者が集まれば対処できるだろうが、上級クエストが発生したら?


「ィー!フィー!大丈夫か?顔が青いぞ?」


「え、あぁ、大丈夫。ちょっと疲れちゃったのかも。」


「そうか。もうすぐ麓の村に着く。今日は宿でゆっくり休もう。明日の出発はゆっくりでいい。しっかり休め。」


「ん、ありがと。 」


私はさっき頭に浮かんだ最悪の結末が頭から離れず、心配そうな顔をしているカイルとルナに何も言うことが出来なかった。


魔物=動物型

モンスター=人型

という設定です。

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