王都の夜
恋愛色が強いです。内容は薄いので、嫌な方は飛ばしてください。
「カイル!ねぇ、カイルったら!」
イドさんの店からカイルを回収した私は、路地裏でカイルに話し掛けていた。
「あ、おぅ、とうした?フィー?」
「どうしたじゃないよ!ボーッとして大丈夫?食事は今度にして今日は休んだ方がいいんじゃない?」
「ダメだ!いや、大丈夫だ。すまん。」
カイルの強い否定にビクッと肩が震えた。それに気付いたカイルはすぐに謝ってきた。
「ふぅ、カイルが大丈夫ならいいけど、ねぇ、食事まで時間ある?」
「あぁ、まだ少し早いな。どっか行きたいとこあるか?」
「うん、あのね、今着てるような洋服が欲しいの。どっかいいとこ知らない?」
初心者の服以外の洋服は2セットしか持っていない。下着も買いたいし、明日から旅に出るなら市場で食糧も買わないと。
「実は俺は王都出身なんだが、俺の妹が王都で洋服屋をやってるんだ。結構大きな店だから、種類は多いと思うが行ってみるか?」
「うんっ。カイルありがとっ。」
「う。」
カイルが顔を赤くして言葉に詰まってしまった。やっばり体調悪いんじゃないのかななどと考えながら、カイルの後を着いていく。
しばらく歩くと下町のような所から静かで高級そうな街並みに変わっていく。
「ね、ねぇ、カイル、この辺りって」
「あぁ、貴族街だ。」
「そっか、私みたいなのが入っても大丈夫なの?」
「大丈夫に決まっているだろう!お、着いたぞ。」
「う、うん。」
着いたお店は大きな高級ブティックのような店構えだった。入るのに気後れしてしまう。
店の扉をカイルが開けて店内に促してくる。
恐る恐る足を踏み入れると、そこはとても素敵な店だった。
色んな色の洋服が、ところ狭しと並べられている。
「うわぁ、かわいい。」
店を見回して、思わず言葉が漏れる。
「ありがとう。」
横から声が聞こえて首を向けると、ドレスを着た綺麗な女の人がいた。
「フィー、こいつが俺の妹のクリスティーナだ。」
「えぇっ!!、この綺麗な人がー!っと、ごめんなさい。」
驚いて大声で叫んでしまったことに恥ずかしくなって謝ると、クリスティーナさんにガバッと勢いよく抱き締められた。
「まぁ、なんて可愛いの!お兄様、この子は?」
「おい、離れろ!こいつはフィーだ。冒険者で、
危ないところを助けてもらったんだ。シュッペンから王都までエルダーさんの仕事で一緒に来た。」
「ふぅん、それで今日は?」
「あ、あのはじめましてフィーと言います。あの、これからカイルと食事に行くんですけど、まだ時間が余ってたので洋服を見たいといったら、ここにつれてきて貰って」
「あっ、おい!フィー」
「あらあらあら、そうなの!食事にねぇ。」
カイルが苦虫を噛み潰したような顔をして、クリスティーナさんはニヤニヤと楽しそうにしている。
私は訳がわからずに首を傾げる。
「とにかく、お洋服が欲しいのね。お姉さん頑張っちゃうわ!どんな感じのお洋服がいいのかしら?」
「えっと、今着てるような洋服がいいんですけど、ありますか?あと、出来ればローブと下着も…」
カイルがいるから恥ずかしくて最後は小声で言ったが、隣にいたクリスティーナさんには聞こえていたらしい。ニッコリと笑みを浮かべられてしまった。
「解ったわ。それじゃあ、二階に行きましょう。あ、お兄様はそこで待っててね。」
一緒についてこようとしたカイルにしっかり釘を差して私の手を引くクリスティーナさん。
二階には、沢山の下着とカジュアルな服が揃っていた。ほしい服はすぐに見つかってキュロットとショートパンツ、シャツと下着を5セット買った。
ローブは濃い紫色で首もとに小さな魔石がついている。温度調節の出来る優れものだ。
旅に必要だと思ったので少し高かったが思い切って買ってしまった。
全部で金貨8枚(八万円)だったが、満足のいくいいものが買えた。これで買い物は終わりのはずなのだが、
「フィーちゃん、どうかしら?」
私はクリスティーナさんに何故かドレスを試着させられている。
「あの、クリスティーナさん、私ドレスは」
「あら、もちろんこれは私からのお近づきのプレゼントよ?今日食事に行くならお洒落しなきゃ!」
「そんな、こんな高そうなものいただけません!」
「いいのよ。その代わり、王都に来たら一緒にお茶でもしていただけないかしら?お友達になりたいの。」
「はい、それくらいならいつでも。」
「嬉しいわ!なら、私の事はクリスと呼んで頂戴!私もフィーって呼んでもいいかしら?もちろん敬語もなしよ?」
「わかった、クリス。」
「まぁ嬉しいわ!フィー。」
結局、薄紫のドレスに同じ色のヒール、髪飾りまでプレゼントされて、化粧やら香水やら、髪のセットまでされてしまった。
「じゃあ、お兄様が待っているから下に降りましょう」
「でも、私変じゃない?」
「なにいってるの?とってもきれいよ!」
コツコツと慣れないヒールで階段を降りる。
ヒールの音に気付いたカイルがこちらを見上げて目を見開いている。
「あ、あの、カイル、私変じゃない?」
「まさか!凄く綺麗だ!」
「あ、ありがとっ」
嬉しくてニッコリ笑うとカイルがまた赤くなってしまった。
「お、俺も着替えないとな。クリスティーナ適当に見繕ってくれ!」
「解ったわ」
15分後、正装したカイルと一緒に食事に向かった。
レストランは高級そうなお店だった。
個室に案内されて食事が出てくる。
「ねぇ、カイル話って何なの?」
思い切って聞いてみると、カイルは何かを決意した目をして言った。
「フィー、俺と一緒に居てくれないか?」
「(うん?旅に着いてきたいのかな。カイルなら強いし大丈夫かな。)うん、いいよ。」
「ほ、ホントか?」
「うん、旅に着いて来たいんでしょ?いいよ!明日の朝、一緒に市場で食糧補給しよう。」
「……」
「え?違った?」
「いや、大丈夫だ。」
何故かカイルがガックリと肩を落としたような気がして私は首を傾げたのだった。




