運命2(リリス視点)
「ふ、フレイ!!」
「んー?どうしたんだ?」
「あなた、あのお城見える?」
「ああ、見えるぜ!リリス!やったじゃねぇか!見つけたんだな!」
「でも同族とは限らないわ…どうすればいいのかしら!?」
「どうするもこうするも…行くしかねぇんじゃねぇ?でもなー」
「何よ?」
「どういう仕組みかわかんねぇけどかなり強い結界が張ってあるな。今は少しゆるんでるみたいだけど…」
「つまりどういう事?」
「だーかーらー!リリスや俺が見つけられないくらい強い結界を張れる相手だってこと!それこそユースケよりも!」
驚愕で言葉が出てこなかった。
私や精霊王のフレイが見つけられないくらいの結界を張れる相手があの城に居るなんて、簡単に信じられることではない。
この世界で最強であろうユースケよりも強い結界を張ることが出来る?ありえない!
でも、現実は目の前にある。
「フレイ…行くわよ!戦闘になったらお願いね!」
「ああ…っておい!本当に行くのかよ!?相手は化けもんだぜ!?」
「それでも行くわ!」
「はぁ…仕方ねぇな」
フレイの溜め息を背中で聞きながら、私は漆黒の羽を広げ窓から外へ飛び出した。
「ここね…フレイ、結界は破れるかしら?」
「ああ、これだけゆるんでれば楽勝!…だけどいいのか?これ不法侵入ってやつだろ?」
「あなたどこでそんな言葉を…まぁいいわ。やってちょうだい」
「はいはい。ほーれよっと!」
目の前にあった見えない壁が消えた途端、肌を刺すほどの膨大な魔力の波にのまれそうになる。
無理矢理それを打ち消して、私は魔力の源である城へと歩を進めた。
魔力にあてられてクラクラする体を奮い立たせ、城の中へ入ろうとした私の背後から声が掛かる。
「我が家へ何用か?」
耳をくすぐるバリトンの声は明らかに冷気を含んでいた。
殺気にも似た気配に思わず鉄扇を構えようとするも、その手を捕まれてしまう。
(どうして…さっきは背後に居たのに…!フレイは…!!)
目の前に立ち塞がる男性の体に頭がパニックになる。
急いでフレイを探すも、フレイは男性のもう片方の手によって首根っこを捕まれなすすべもなくバタバタと暴れていた。
「何用か?と聞いたのだが?」
呆気にとられている私が正気に戻る。
声の主を確かめようと恐る恐る顔をあげた私は雷に撃たれたような衝撃を受けた。
「…貴方は…吸血鬼?」
「そうだ。我は王候吸血鬼。まさか…お主は…」
冷気を含む声音が驚きと歓喜に変わったのを感じた私は笑顔でこう答えた。
「会いたかった!!」と。
私の羽の倍ほどある漆黒の羽を持つ同族に…私は一目で恋をした。
夢なら覚めないで欲しいと思いながら、魔力にあてられ続けた私はその場に倒れこむ。
頬に湿ったような柔らかな感触を感じるも、それが何か確かめることも出来ずに、そのまま意識を手放した。
「会いたかった。我が花嫁」
その言葉を聞くこともなく。




