ユースケの決意
「おい!てめぇら!そんなんじゃ魔物に食われるぞ!」
魔族を倒してから3年、フィーへの想いを吹っ切るようにがむしゃらに働いた。
今ではご丁寧に『鬼教授』なんてあだ名まである。
実際、今も実習中だ。
生徒は魔物に食われそうになってるが…。
俺が教授職に復職したのは、何もフィーへの想いを吹っ切る為だけじゃない。
この世界の人間の底上げをするのも目的の一つだ。
カイルがスキルを取得できた事で、この世界の人間もスキルが取得可能なことを知った。
実際、俺が教鞭をふるう魔法学院の生徒も僅かではあるがスキルの取得に成功している。
元々、魔力がある生徒達だ、今後、そういった奴らは増えていくだろう。
それを後世に残してくれれば…と思う。
そうすれば、危険地域である大霊山のような場所にも踏み込み、魔物やモンスターを倒すこともできるだろうしな。
「あれは地獄だったからな…」
フィーと再会し、大霊山へ同行した時の魔物やモンスターの多さを思い出して一人ごちる。
このまま放置すれば大霊山にはそういったものが溢れかえり、山を追われた奴等が町へとなだれ込むだろう。
そうなったらこの世界は終わる。
間違いなく。
対抗できる人間が居ないのだから…。
魔物相手に奮闘している生徒たちに視線を移し、俺は ニヤリと口角を上げた。
「おい!お前ら、死ぬぞ!?しっかり相手しろよ!」
生徒たちが相手しているのはワイバーン。
冒険者ギルドではAランク相当の魔物だ。
死なせるつもりは欠片もない。
でも甘やかすつもりはもっとない。
最悪、俺が魔法を放てば一発で終わる。
まぁ、ギリギリまで手は出さねぇけどな。
空を見上げて俺は思う。
日本に残してきた家族のこと、そしてフィーを。
忘れようとしても忘れられない。
足掻くのはもうやめだ!
家族は俺の胸に確かに存在している。
フィーへの想いは変わることはない。
それが俺の答え。
それに気づいたことがある。
この世界は魔力がある人間ほど長生きするって。
幸い、俺は月光樹の雫で生き返ってから寿命が延びた。
フィーも魔力量からして500年は生きるだろう。
カイルの魔力量だと80年といったところか…。
ならばまだチャンスはある。
そう思うくらいは許してくれるよな。カイル。
俺の気持ちに唯一気付いてたお前なら…。
「あ、やべ、サンダーレイン!」
生徒がやられそうになってるのに気付いて、俺は慌てて魔法を放つ。
撃墜されて落下していくワイバーンの先には、雲一つない青空が広がっていた。




