侵入
城の前へと辿り着いた私達は一旦足を止める。
恐らく、結界が無くなったことも、私達がこの地へ足を踏み入れた事も気付いているであろう魔族はいまだなんの動きも見せていない。
外から見る夜の城は、その事も相まって不気味な様相を醸し出していた。
「私が行くよ」
「ああ、気を付けろよ」
場にのまれるのを何とか抑えた私の言葉にユースケの注意が飛ぶ。
勝手知ったるとまではいかないが、この中では私が城の中を一番知っている。
例え、玉座があった大広間と、与えられていた部屋しか知らなくとも、なにも知らない他の人よりは先頭を歩くのに適しているとの判断からの発言である。
心配そうな仲間の表情を見渡し、私は城へと一歩を踏み入れた。
殆ど灯りがついていない廊下に私たちだけの足音が響く。
ルミナス曰く、この城のなかでは魔力察知が出来ないとのこと。
「魔力の認識阻害がされてんな」とユースケが言ったことにより、更に緊張を強いられる。
そんな緊迫感を抱えたまま、辿り着いたのは玉座のある大広間の扉の前だった。
「開けるよ?」
私の言葉に全員が頷き、戦闘態勢を整えたところで扉をゆっくりと開く。
開ききった扉の中、つまり大広間には二つの影が静かに佇んでいた。
ミナミとカナタである。
私達から庇うように前に立つカナタを押し退け、ミナミは言った。
「いらっしゃい。早速だけど…さぁ、始めましょう?」
妖艶に微笑むミナミの言葉に緊張感が走る。
どちらも動かず、敵の動向を伺っている。
それを破ったのは姐御だった。
「行くよ!」
姐御の脚が地を蹴り、斧による一閃をミナミに向かって放った事で戦いは始まった。




