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ここって異世界ですか?  作者: 瑠紆
対決編
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譲渡

イドさんの店からそのまま王都を出て、ユースケへと連絡を取り拠点へと戻る。


イドさんの店に長居しすぎたせいか、ホールでは全員が夕食を摂るべく座っているところだった。

まぁ、長居してしまったのは、カイルとイドさんの口喧嘩が原因なのだが。



転移陣に現れた私とカイル、ユースケに驚くことなく口々に「おかえり」と声を掛けてくれる仲間に「ただいま」と返事を返しながら、今となっては所定となった椅子へ座ると、みんなの目がカイルの持つ双剣に向けられているのがわかる。

どうやら興味津々らしい。


その様子に苦笑しながら、カイルに武器のお披露目をと話し掛けようとすると、いち速くリリスの隣に座っていたフレイが嬉しそうな声を上げた。



「なぁなぁ!それ精霊石使ってるだろ?俺の!」


「なぬ!?ほんとじゃ!アクアの物も使っておるようじゃの」


流石、精霊王二人。

かなり目ざとい。

ルミナスに至っては、食事を作っている最中だったらしく、おたま片手にホールまで飛んでくる始末だ。


お陰でホールにいる全員の目が玩具を見付けた子供のように爛々と輝きだしてしまったではないか。


「なぁ、とりあえず飯食おうぜ…」


とのユースケの一言で、窮地は脱したが、姐御の強い希望という名の脅迫のような言葉によって、夕食後、スキル発動の練習に全員が立ち会うことになった。






夕食を済ませた私達は急かされるように転移陣へ乗り込み、大霊山の麓へと向かう。

カイルのスキル発動の練習に全員が立ち会うことになるのなら、私が指導役じゃなくてもよかったんじゃ?と思ったのは秘密である。


それはともかく、仲間立ち会いのもとというのはありがたいことには違いない。

カイルのスキルが無事、発動するとは限らない状況で大霊山の魔物は少々危険であるからだ。

フォロー人員がこれだけ居れば、神竜が敵にならない限り、この場では何があっても対応できる。



「よし、じゃあ、始めようか」


私の言葉にカイルが頷いたことで、特訓が始まった。







一時間後……


私とカイルは疲労困憊して、突っ伏していた。

他の仲間は退屈そうに地面に座っている。

ユースケに至ってはあくびを噛み殺している。



一時間前、意気揚々と特訓を始めた私とカイルは、すぐに悟った。


『これでは無理だ』と。


何故なら、カイルが魔力を感知出来ないからである。


スキル発動には僅かながら魔力を必要とする。

だが、カイルは魔力を感知出来ない。


つまり、魔力が感知出来ない→スキルを発動する事が出来ない→無理だ。

というわけだ。


ならばということで、魔力を感知出来るようにと、私は必死に説明した。


「ほら?!なんか体の中に流れてる力の源みたいなのない?ブアーってするやつ。」


といった具合に。

まぁ、勿論、そんな説明でわかってもらえる筈もなく、無情に時は流れていったわけだが。



(ああ!一体どうすればいいの!?)

私が頭を抱えていると、あくびをしながらユースケがこちらへ近付き、カイルへと手をかざした。


「ゆ、ユースケ、何するんだ?」


「魔力を流す。それで魔力の感覚を覚えろ!」


「あ、ああ、わかった。頼む。」


そんな会話を耳の端に捉えながら、私は重大な事を思い出した。

ユースケを止めようとしたが既に遅かったようで、大霊山の麓にはカイルの絶叫が響き渡った。


「ぐぁああああ!!!」



(うわぁ、あれ痛いんだよなぁ…)

魔力の譲渡はさほど珍しいことではなかった。

同レベル程のMP量ならば…。

なぜ同レベル程のMP量でなければならないかといえば…痛いのだ。譲渡される時にものっすごく!


だが、ユースケはカンストレベルの魔法使い。

例え1%の魔力しか流していないとしても、元の魔力量を考えれば、最近魔力が備わったカイルにとっては限界値に近いであろう。

とはいえ、命に関わるものではない。


その叫びを聞きながら、元日本人組は何とも言えない苦い表情を浮かべるのだった。






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