第2話 限界の会長と全開の副会長
生徒会室に足を踏み入れた瞬間から空気がずっしりとして重い…。室内の温度などでもなく……。精神的に重い。
─それに加えて、雪村玲華会長の“貼り付けた笑顔”がずっと俺に向けられていて不気味さを感じる。
(この何と言うか……写真撮影で『もう一度お願いします』を20回ぐらいやってる顔…)
「小日向くん。とりあえずそこの椅子に座ってくれるかしら?」
優しい声で促す雪村会長。
声は落ち着いている。
表情も笑顔。
……なのに。笑顔と声がの温度が一致しなさすぎて背筋が凍るほど寒い…。
俺は促された椅子にゆっくりと腰を下ろす。
「最初に…臨時でサポートを引き受けてくれて感謝するわ」
「えっと……まぁ…。」
(言えない……!春川先生に半ば強制で押し付けられたなんて……!)
この表情を見ると冗談を言って和ませることなんて心底できない。
「……詳しい内容とかは春川先生から聞いてるかしら?」
「何にも……。雪村会長から詳しく聞けと…」
俺の言葉に雪村会長は驚いたような表情になるが、すぐに無表情になり、ため息をつく。
「……やっぱり春川先生ね。…ま、いいわ。」
(ため息が『呆れました…』とかの類じゃなくて『人生』に向けてため息ついてる?めっちゃ重いんですけど…!)
雪村会長は頭に軽く手を当てて喋り出す。
「本当は、先生から最低限は説明しておいてほしかったのだけど……あの人、肝心なところは全部後回しにするから」
「確かに…」
(すごい共感できる。そして多分俺もその被害者側なんだよな……)
今回の件はとりあえず春川先生を恨んでおく。
雪村会長は姿勢を正して、俺の方に向き直す。
「…とりあえず作業は明日からでいいわ。小日向くんのサポート期間の期日は決まってないけど私たちで仕事が抑えられるぐらいになれば終わりでいいと思うわ」
そう言うと、自分の席や他のメンバーの席にへと視線をやる。
(なんだこの量は……!?)
机一面を覆い尽くす程の書類の山。
「文化祭や体育祭に関するクラスや部活。委員会の書類でね…。人手も足りないからミスが増えてるのよ……。その度に私が直してるけど…」
小さく笑うが、その声はどこか震えていた。
「そろそろ限界だったのよね……」
小さく零れたその言葉。
俺は雪村会長の方を見る。
そして、気づいてしまった。
─これは嘘のない本心なのだと。
(これはやっぱり助けた方がいいかもしれない……)
─このままでは会長が倒れてしまう。空気が重いのもそれが原因だと悟る。
「だから、小日向くん。あなたには──」
会長が何かを伝えようとした時。
ガラッ!!
ドアが勢いよく開いた。
「会長〜!今日の仕事、一通り終わったよ〜!!」
生徒会室の重い雰囲気とは違い、明るく弾ける元気な声が響く。
それと同時に、会長が再びため息をつく。
(この人が朝比奈 結衣副会長か──)
この人の登場で更に生徒会室は地獄になっていく─。




