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新釈古事記伝  作者: りんたろう
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8.高天原追放

 平穏であるはずの高天原で、その騒動は突然はじまった。


「なんで父上は母上を連れ戻してこなかったんだよ!

 ずっと我慢していたけど、俺は毎日母上と一緒にいたいんだ!

 1ヶ月に一度しか会えないなんて!!」

 イザナギの館から三貴神と名高いスサノオの大声が響き、続いてなにやらなだめているような声が聞こえた。

「もういい!!姉上に話をつけてくる!」

 スサノオと思われる人影が泣きながら嵐のように飛びだし、文字通りまっすぐにアマテラスの館を目指した。

 途中の田畑を突っ切り、多くの稲や作物をめちゃめちゃにし、敷地内にある機織姫達がいる小屋に突っ込んだ。

 機織姫達は悲鳴を上げてアマテラスのもとに逃げ込んだ。

 アマテラスが小屋に駆けつけると、スサノオが座り込んで泣いていた。

 アマテラスは神力でスサノオを拘束しつつ何事かと問うた。

 母と毎日一緒にいたかったのに、父上のせいでバラバラに暮らすことになったと泣きわめく弟。

 仕方なかったことだと優しく声をかけたが、逆上した弟に拘束を跳ね返された。

 その衝撃で皆の衣を織っている大切な機織り小屋を爆風で吹き飛ばされ、地面には大穴が空いた。

 機織姫達は皆無事であるが、これではしばらく衣が作れない。


「そんなに母上と一緒に居たいのであれば、高天原出ていけ!!

 もうお前の席はここにないと思え!

 お前の顔など見たくない!お前が出ていくまで私は外に出ぬ!!」

 そう言い捨てるとアマテラスは館の裏にある岩穴に籠もり、岩で入口を塞いでしまった。

 そして、すべてが暗闇に包まれてしまった。


 暗闇の中松明が灯され、静かになったスサノオの隣にツクヨミが現れた。

「スサノオ、貴方の気持ちはわかりますがやり過ぎました。

 まずはオモイカネ様の館で謹慎してもらいます。

 壊したところを応急処置し、けが人等を確認してから姉上に謝りに行きましょう。」

 すっかり大人しくなったスサノオをオモイカネの館へと連れて行った。



 オモイカネの館で、謹慎用にとキサガイヒメによって頑丈に作られた異空間の部屋にスサノオが入り、

 さらに沈痛な顔をしたイザナギ、ツクヨミ、オモイカネが部屋に入って行くのを、こちらもまた沈痛な顔をした家令が見送った。



 部屋の扉が完全に閉まるとぐふっとツクヨミが吹き出した。

 イザナギは腹を抱えて床に膝をついて震えていた。

「君たち二人は本当に笑い上戸だね。」

 ちょっと呆れたようにオモイカネは言った。


「オモイカネ様、けが人は居ませんでしたか?

 田畑は仲間の所有地だし、機織姫達も仲間も潜り込ませて避難を誘導させたのですが。」

 スサノオの問いかけに

「けが人はいなかったよ。

 ただ機織姫たちがショックを受けて、数人が寝込んでしまったそうだ。

 妻が癒やしの香を持って見舞いに行くことになっている。

 ・・・ははは、ちょっとやりすぎちゃったようで、妻に怒られてしまった。」

 スサノオとオモイカネは少々やらかしすぎたとしょんぼりし、笑い崩れているイザナギとツクヨミを恨めしそうに見た。


「・・・ごめん、だっておまえ、その顔で、凄いマザコン発言・・・。」

 やっとそう言うとツクヨミは膝をついて震え、それを聞いたイザナギは完全に地面に転がってひくついた。




「すみませんでした。どうしても笑いが抑えられず・・・。」

「すまん!本当にどうにもならなくて・・・。」

 ふかぶかと頭を下げる二人に、少々呆れた視線を向けつつオモイカネは次の計画の確認を始めた。


「アマテラスが岩穴に引きこもったことですべてが暗闇に包まれている。

 危険防止のためとして、現在高天原の出入りを一切禁止し、通常以上の結界を張っている。

 この結界は通信は通るがすべて検知するようにしている。敵が何かしらどこかと連絡を取ってくれれば嬉しいのだが・・・。

 岩穴の前には続々と神々が集まってアマテラスの説得が始まっているが、もちろんすべて無視してもらっている。

 そろそろ私のところに相談が来るだろう。


 さて、これからの行動だが、私は神々すべてを岩穴の前に集め、どんちゃん騒ぎをさせ、不審に思ったアマテラスが岩の隙間から除いたら引っ張り出そうと提案する。さらにアマテラスはスサノオの顔を見たくないだろうから、その間にツクヨミによってスサノオを根の国の入口まで連れて行かせようとも提案する。

 ツクヨミはスサオミを連れて帰ってくるように。

 スサオミの気配を感知されると困るので、キサガイヒメが作られたこちらの貝に封じて連れ帰っておくれ。

 こちらは携帯用の異空間箱となっている。いやいやほんとすごいよね。私も入ってみたんだけど妻にも気配が感知できなくなったよ。


 スサノオは根の国の入口に拠点を築くとともに、スサオミの神力の玉で黄泉国の封印を続けるように。

 あ、私の玉も予備で持っていってね。持ち出しに気が付かれないように、これはもう一個のキサガイヒメの貝に入れておくから。」


 オモイカネの話が終わり、皆でうなづきあったところで扉を叩く音がした。

「オモイカネ様、アマテラス様が岩穴から出てこられないのでお知恵を借りたいとタカミムスビノカミ様が代表としていらっしゃいました。」

 家令の言葉にオモイカネはつぶやいた。

「始まりの神の一柱がいらっしゃるとは。驚いたな。」

「まぁ、他の二柱であるアメノミナカヌシ様は別天地の探索といってこの星を飛び出して以来音沙汰なしで、カミムスビ様は天地創造後から一日20時間睡眠を取っていらっしゃるから、筆頭の天津神としていらっしゃったのだろう。責任感の強いお方だ。」とのイザナギの返答に、スサノオが続けた。 

「タカミムスビ様はこの世の空間の神だけあってこの世界をとても愛していらっしゃる。

 めちゃめちゃにした俺のことをお怒りだろうな・・・。」


「おまえはタカミムスビ様を慕っているもんな。スサノオがとてもとても反省していると伝えておくよ。」

 ツクヨミが慰めるように肩をたたいた。

 スサノオにこの部屋で体を休めるように言って、オモイカネ達は計画を進めるべくタカミムスビノカミに会いに行った。




 アマテラスが閉じこもった岩穴の前に高天原のすべての天津神(もちろん、一日20時間眠りたいカミムスビノカミも)だけでなく、すべての侍従や家人もあつまり、大きな篝火が焚かれ、皆に酒と肴が振る舞われた。後世に語り継がれた天岩戸伝説が始まったのであった。



 その裏でツクヨミとスサノオは根の国の入口に降り立ち、スサオミの光の玉を黄泉国の封印として起動させると同時にスサオミ自身を貝の異空間に移した。

「話す時間はなかったなぁ。」寂しそうなスサノオに

「お前が戻るまでに、いっぱいお前の逸話を話しておくよ。

 もちろんこの前のマザコン発言も!」

 思い出し笑いをごまかしつつツクヨミが言った。


「うん、よろしく。

 鏡通信も敵に情報が筒抜けなる可能性があるから控えたほうがいいってオモイカネ様が仰って、

 兄上に預かっていただくように言われたんだ。

 ・・・・俺の顔忘れないでね。」おどけてスサノオが言った。

 ツクヨミは固くスサノオを抱きしめていった。 

「忘れるわけ無いだろう!

 お前たちが一番つらい役割になって済まない。

 不甲斐ない兄で本当に済まない。

 お前たちのような力がないことが本当に悔しい。

 私達はいつもお前のことを思っているよ。

 早く皆が自由に一緒にいられるように精一杯頑張るよ。

 ・・・・鏡通信はお前が持っていておくれ。

 オモイカネ様にはバタバタしていてうっかり忘れたと怒られるよ。

 お守りとして持っていて欲しいんだ。必要になるときが来そうな気がするんだ。」


 いつにない真面目なツクヨミにスサノオはコクコクとうなづいた。

「名残惜しいが私はそろそろ戻らなければならない。

 姉上が岩穴からお出ましになったら神々が解散し始めるだろうから、私の指揮で一人ひとり追跡を行うことになっているのだよ。

 巻かれてしまう場合もあるだろうが、それはそれで情報になるしねってオモイカネ様も仰ってね。」

 ツクヨミの言葉にスサノオはツクヨミの手をぎゅっと握ると、俯いていた顔を上げ、ツクヨミの目をしっかり見つめ、

 明るい表情を作った。

「俺は大丈夫!

 遠く離れていても一緒に頑張ってる俺達は一つだ!

 さぁ兄上、気をつけて帰ってくれ。

 ここには仲間たちもいる。」

 その言葉を聞いて後ろで控えていたスサオミの侍従が一歩近づいてツクヨミにお辞儀をして言った。

「精一杯お仕えさせていただきます。

 我々はスサオミ様同様にスサノオ様のことも敬愛しております。」


 スサノオはツクヨミから一歩離れ、侍従はその隣に並んだ。


 二人を見てツクヨミはうなづくと神力で帰り道を展開させ、微笑んで手を振るとその後は振り返ることなく高天原に戻っていった。

神様の名前と設定を少々修正いたしました。

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