35.天津神の降臨~ニニギ その9~
昼食後、スサノオが選定したメンバーが客室に集まった。因幡の部屋で連日会っている面々がほとんどだが、スサノオの娘のスセリビメは、夫のオオクニヌシに久しぶりに会えたということで、嬉しそうに腕にぶら下がっていた。人間である侍従と侍女のタツキとムツキは日頃あまり会うことのない神々たちと客間に通され、部屋の隅っこで緊張していた。
「よく集まってくれた。スセリビメとタツキとムツキ以外はもう良く知っているが、改めて紹介しよう。ニニギだ。俺の姉であるアマテラスの孫だ。これからしばらく地上で俺達と行動を共にする同士だ。」
「よろしくお願いします。ニニギです。得意なことは農耕と情報分析です。」
ニニギがぺこりと頭を下げた。
「そして今回集まってもらったのは、鳥たちの卵を孵化させるためだ。」
始めて話を聞く3人が顔を見合わせた。
まずは実物をと、ゴーマとゴーマの卵の殻を見せ、ニニギが説明を行った。
可愛らしいゴーマに3人は歓声を上げて撫でまくり、自分たちも相性の良い卵に会って見せる!素敵な名前を贈るんだ!と鼻息を荒くした。
スサノオを屋敷の裏にある森の奥に大きな洞窟があり、卵が集められている部屋となっていた。
扉の前で卵を守っているのは、今日はオナガであった。ただし呪いがかけられているので体は金色で羽は青光りし、身体も普通より二回りほど大きかった。スサノオたちを先導している鷹のアキヒコに頷くと、スサノオたちに恭しくお辞儀をし扉を開いた。
扉の中には通路と壁を掘った棚が作られていた。棚にはやわらかそうな羽や布が敷き詰められ多くの卵たちがいた。アキヒコによるとその数はおよそ500個。鳥たちの種類によってそれぞれまとめられているとのことだった。
「通路に沿ってお一人づつゆっくり歩かれてください。ゴーマによると、卵が自然に回転するとのことですので。」アキヒコの説明に、一同が緊張した顔で頷いた。
まずはスサノオから歩いてみることになった。
ウキウキしながら出発したがどの卵もピクリとも動かず、がっかりした顔でスサノオが戻ってきた。
「お父様はにぎやかすぎるから、卵に嫌われたんじゃない?」とスセリビメが笑い、私は好かれると思うのと通路に向かった。結果としてスセリビメにも卵は動かず、父娘でしょんぼりする羽目になった。
「まぁまぁ、お二人とも今回はたまたまですよ。そのうち相性のいい卵が生まれてきますよ。」二人を慰めつつオオクニヌシが通路に向かうと、同じ場所に置かれた二つの卵がくるくると回った。スサノオとスセリビメが凝視する中、オオクニヌシがその卵たちを手に取った時、扉からのぞき込んでいたオナガがやった!と声を上げた。
「あのオナガの子供たちなんですよ。」と苦笑いをしてオナガをたしなめたアキヒコが言った。
「子供たちをよろしくお願いします!オオクニヌシ様がお相手とは何て幸運なんでしょう!」とオナガの父親が嬉し気に卵と同じ様にくるくると回った。
いいな、いいなとスサノオとスセリビメの小さな声が響く中、皆順番に通路に進んでいった。
結果として、キビヒコにはシジュウカラの卵が3つ、ナガスネヒコにはウグイスの卵が3つ、タツキとムツキにはキジバトの卵がひとつづつ、そして因幡にはメジロの卵が一つ、ニニギは今回はゼロとなった。
「俺達だけなしか・・・。」
「しょうがないわよ、また次回に期待しましょ・・・。」
しょんぼりする父娘を、また卵が生まれたらご連絡しますからとアキヒコが慰めた。
「ねえアキヒコ、お前はこの通路を歩いたことはあるの?」
スセリビメの問いに、私は日頃キビヒコ様の影に潜んでいますのでとアキヒコが首を横に振った。
「じゃあ歩いてみたらどうかしら?鳥同士でも相性がいい場合もありうるかも。」
やってみる価値はある!との声にアキヒコが恐る恐る通路を歩き始めた。
すると、鷹の卵が3個くるくると回り始めた。
「これは!私の子供たちです・・・。2番目の呪いがかかった妻との間に生まれた卵たちです。孵らないものと思ってあきらめておりましたのに!」
アキヒコは言葉を詰まらせた。キビヒコが駆け寄り、その卵たちをそっと用意していた箱に入れ、アキヒコをなでた。
「なるほど、鳥同士でも相性の良い相手となれるのだな。
これは素晴らしい!!一度、呪いがかかったすべての鳥たちにここの通路を歩かせよう。」
スサノオとスセリビメは素晴らしい発見にすっかりご機嫌になった。
元気になって良かった良かったと思いつつ、畏まりましたとキビヒコは頭を下げた。
その後、すべての鳥たちに通路を歩かせたところ、更に23個の卵が孵化できることとなった。
これから地上での活動が始まります。
今週もありがとうございました<(_ _)>




