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新釈古事記伝  作者: りんたろう


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31.天津神の降臨~ニニギ その5~

今週もよろしくお願いいたします<(_ _)>

 今晩の打ち合わせにはアマテラスも参加となった。因幡が目覚めたとの報告に、オモイカネとツクヨミは肩を抱き合って泣いた。特にツクヨミは号泣だった。そんな二人を見て涙目になりながらもアマテラスが深刻な声で白鰐の姫も目が覚めたが記憶を一部失っていることを告げた。

 「それは兄上がかけた眠りの呪い(まじない)が影響しているのか?」

 「いや、私がかけたも呪いではなく、姫が自身で心の一部に封印をかけてしまったらしい。」

 「そうなの。姫が記憶を失っていることが分かった直後に白鰐の長に会いに行ったんだけど、門番の一族の本能の様なものらしいの。彼らは高天原を守らねばならないでしょ?自身の心の動揺でその役目を果たせなくならないように、心に強い衝撃を受けると記憶を封印したり改ざんしたりするらしいの。あまりに強い衝撃だと、高天原を守る役目だけを果たす存在になってしまうそうよ。」

 それを聞いたスサノオとニニギはぞっとした。

 「よかった・・・。姫がそんな存在になり果てることがなくって・・・。」

 「本当だよ。因幡に合わせる顔がもうなくなる所だったよ。」またツクヨミが泣き出した。

 「ちょっともういい加減に泣き止んで!話が進まないじゃない!!」

 「そうだな、決めなくてはいけないことは多い。まずは因幡と姫についてからだ。」

 「因幡ですが、彼の神力の塊を耳飾りとして装着させたところ、そこから神力を抜き出して使用する技を身に着けました。おそらく、今までと同じようにオオムカデの毒素の浄化を行えるかと思います。

・・・因幡には神力の器官が壊れたことを話しました。治らないであろうことは言いませんでしたが、おそらく察しているかと。スサオミ、オモイカネ様、本当に治らないのでしょうか?治らないなら因幡はこれからどうなるんですか?」

 「母上の神力の暴走が何とかならないかと思って、色々試していたんだけど、あの器官はガラスの器と同じでね、器官自体が自然に治ることはなさそうなんだ。ただ、器官に神力を満たしてからこぼれないように封印で丸ごと包めば上手くいくんじゃないかと思っている。」

試したってどういうことだろうとニニギは思った。

「姉上にお願いして地上の鳥を呼び寄せて高天原を歩かせたんだ。そのままだと地上に落ちていくんだけど、体内に神力を溜めた小さな封印物を入れると歩けたんだよ。ただ長持ちしないし、入れる時ちょっと痛いみたいで。封印や結界が得意な白鰐のお姫様に手伝ってもらったんだけど、かなり嫌がられちゃったよ。人間や天津神で試せてないから因幡に使えるか心配だけど。どう?疑問は解決したかな?」

なんでわかったんだろう、スサオミ様おそるべしとニニギはぺこりと頭を下げた。

「次に神力が無くなった天津神だけど、前例がないから何とも言えないんだけど、身体は強いと思う。そもそも人間や国津神と素材が違うからね。だから多分老化もしないか、非常にゆっくりだと思う。同じ理由で寿命も長いだろう。だけど不死ではないと思う。国津神は不死でほぼ不老だろう?だが人の力で殺すことができる。因幡は不老でおそらく人の力で殺されることはないがいつか寿命がくる存在になったと思う。」

「因幡が死んだらどうなるんだ?天津神はそのまま甦るだろう?」

「それも本当に予想だけど、おそらく人間と同じ道をたどると思う。天津神は神力があるからそのまま甦る。国津神は死後に輪廻の輪を使い記憶を持ち、神として生まれてくる。これは神だからだ。だからおそらく神でない因幡は、死んだら前の記憶を持たない人間として生まれてくると思う。」酷だけどね、と最後にスサオミはポツリと言った。

「じゃ因幡には俺の屋敷に居てもらう。人に害されることはないと言っても、”おそらく”なのだろう?それにオニムカデや天変地異などにあったらどうなるかわからない。俺の屋敷なら安全だ。」

スサノオが言い切り、因幡を失いたくない面々が賛同するように頷きあう中、ニニギが意を決したように声を上げた。

「スサノオ様、因幡殿を閉じ込めてはだめです。彼は耳環の神力を使えることがわかって喜んでいたでしょ?自分にできることがあることが嬉しかったのではないでしょうか?高天原に帰れない因幡殿に生きがいを感じれる場所が必要だと思うのです。因幡殿にはオオクニヌシ殿との旅がそれなのではないでしょうか?だから、僕がオオクニヌシ殿と因幡殿と共に行こうと思います。お二人とご一緒することは僕にとっても有意義ですし。」もちろん、因幡殿が旅に行きたくないと言えば尊重したいと思いますが、と慌てて付け加えた。

いつまでも小さいと思っていた孫のニニギの発言に、鏡の向こうのアマテラス達は目を見開き、顔を見合わせ大きく何度も頷いた。スサノオだけは、皆で旅に行っちゃうの?俺だけ置いてきぼりじゃん、とぼやいた。

「そうだな。ニニギの言うとおりだ。因幡の望む道が健全であるように精いっぱいサポートしよう。そして彼が生きている間に最善の道を模索して行こう。ゴールは白鰐の姫との婚礼だな!」

因幡と白鰐の姫のなんやかんやを全く知らなかったスサノオは、オモイカネの発言に一人驚き、周りがニコニコとうなずき合っているのを見て、これも俺だけ置いてきぼりかよと、ぶつくさ言った。


感動的なニニギの宣言で元気になった一同は、因幡と姫について以下のことを決めた。


ひとつ、因幡の神力の器官が壊れたことは仲間たち(姫と因幡を含む)には言うが、治らないかもしれないとは言わない

ひとつ、因幡の神力の器官は壊れたが、治すための方法を検討していると仲間たち(姫と因幡を含む)には言う

ひとつ、因幡の神力の器官が壊れた理由(姫の腰紐の石)はこの場にいるもの以外には言わない

ひとつ、因幡がオオクニヌシと旅に出たい場合は止めないがニニギが同行する

ひとつ、白鰐の姫が記憶を一部失っていることは白鰐の長と仲間たち(因幡は含まない)以外には言わない


「ところで、白鰐の姫が因幡に渡した腰紐の石だけど、腰紐ごと見当たらないのです。高天原で因幡が倒れた時か、地上に落ちた時にどこかに行ったのではないかと思って。地上ではキビヒコの鳥たちに探させていますが、今のところ見当たりません。そちらはいかがですか?あれって危ないものなんですよね?」

「あの騒ぎの後、因幡が落ちた穴をふさいだり、高天原の入り口付近の安全確認をしたが、何か見つかったとの報告はなかった。高天原内も白鰐の一族が見回りを行っていて、見慣れない物や出来事があれば報告が来るように手配しているが、特に何も上がってきてない。石自体は、因幡が長年持っていてい何も起きなかったこと、ニニギの神力を通して発動した波動が、もう一つの石に影響して今回のことが起きたことから、特に危険ではないと思う。だが、回収できたほうがもちろんいいので、お互いに探索は続けよう。」オモイカネの返答にスサノオはよかったと笑って見せたが、すぐに真面目にな表情で続けた。

「姫の従兄弟は見つかったのですか?姫は従兄弟は何か知らないのですか?」

「いや全く足取りがつかめない。姫にも行方不明のことは知らせたが、思い当たることはないとのことだった。封印されてしまった記憶に紛れているかとも思ったが、アマテラスによると封印されているのは因幡たちが門の前に来た直後かららしいから、おそらく本当に知らないのだろう。屋敷のもの達にも、騒動の現場に戻るとだけ言って出ていったそうだ。」

「白鰐の長は何かわからないのですか?」

「白鰐の長は我々の仲間でないから、表面的にしか聞けないのだが、心当たりはないそうだ。ただ、気配の探索をやってみると申し出てくれた。」

「気配の探索?初めて聞きました。」

「私も知識でしか知らない物なのだが、高天原の守りを行う白鰐の一族は、高天原全体に神力を伸ばして天津神たちの位置を把握することができるそうだ。」

「それって、スサオミは大丈夫なんですか!?察知されたら・・・。」

「異空間貝の中身を察知されることはないと思うが、異空間貝があることを気付かれるかもしれない。なので、気配の探索には私も立ち会わせていただくことをお願いした。異空間貝や万が一その中のスサオミの存在が知られたとき、長の反応や行動次第で、対処しようと思う。」

「え?対処って?」

「場合によっては口封じをする。」

オモイカネらしくない物騒な発言に、スサノオが冗談だろうと皆を見渡すと、苦虫をつぶした顔をして全員が頷いていた。

「スサノオ、私たちはそこまで腹をくくらねばならない局面に来ているの。」

茫然としたスサノオにアマテラスが言った。

「白鰐ちゃんの父上だとしても敵だった場合は見逃せないの。逆に、敵でないかどうか、私たちの味方にできそうかもわかるの。大きな賭けだけど。」

「・・・口封じとは何をするのですか?」

「天津神同士であるが、白鰐の長と私とでは格が違う。一番緩いところで神力で人格を抑え込んで、こちらの意のままに操るといったところだろう。抵抗が大きかった場合は、余計なことを話せないように存在を折りたたんだ上で監禁し、体調が悪いと表舞台から消えてもらい、姫を長に据える。おそらく滅することもできるが、騒動が大きくなるのでそこまではしないつもりだ。」

オモイカネの説明のあまりの内容にスサノオは言葉を失った。

「準備が必要とのことで、3日後に行うこととなった。準備段階から我らの仲間を送り込んでいる。」


沈黙が続く中、アマテラスが言った。

「・・・もうすぐ夜が明けるわ。今日はここまでとしましょう。また明日同じ時間で。

明日は、魂魄の毒素の浄化について話しましょう。この通信も何度もやるものではないから、ひとまず明日で最後としましょう。

・・・スサノオ、白鰐の長はきっと我らの味方になるわ。大丈夫よ。」

アマテラスの言葉にスサノオは小さく頷いた。

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