29.天津神の降臨~ニニギ その4~
少々遅れました<(_ _)>
よろしくお願いいたします。
因幡の部屋にオオクニヌシを残し、自分の部屋への向かうスサノオの背中をニニギは追った。ニニギはスサノオの姉であるアマテラスの孫であるが、生まれる前に地上に(偽)追放となったスサノオに会うのは今回が初めてであった。祖母のアマテラスやツクヨミからよく話を聞いていた。力強く前向きで皆を引き付け愛される存在。そんな風に語られるスサノオに会えること、そしてしばらく一緒に地上で暮らせることを本当に楽しみにしていた。
実際にあったスサノオは、隔離世に住む双子のスサオミから腹黒さを抜いて、純粋さと単純さと男臭さを足したような魅力的な神だった。天津神たちを高天原に戻して、早くここに戻ってこようとワクワクした。そしてあの騒動が起きた。
アマテラスから降臨を命じられた時、大役を仰せつかったなとは思ったが、大きな問題が起きるなど考えもしなかった。因幡が悲鳴を上げて倒れ、地上に落下していくのを穴から見た時、誰だか分らぬ敵に相対していることを初めて実感したのだった。
ニニギはスサノオの部屋に通され、念のためと話が聞かれないように結界が張られた。異空間貝は奥の手だから気安く使うなと言われちゃったからな、自分はくす玉とか仕込んで因幡に持たせたくせにとスサノオがくすっと笑った。そしてまだ表情が硬いニニギの肩を軽くたたくと、椅子に座るように促した。
「うちの娘婿のオオクニヌシ、いい奴だろう?彼がいると心が落ち着くんだ。おかげで冷静になれた。
ニニギ殿、礼を言うのが遅くなってしまった。地上に戻ってきてくれて本当にありがとう。困難な局面でお迎えすることになってしまい申し訳ないが、俺に力を貸してほしい。」
「そんな!それは僕のセリフです。そして、僕のことはニニギとお呼びください大叔父様。」
「ありがとう、ニニギ。では俺のことはスサノオと呼んでくれ。」
「ではスサノオ様と呼ばせてください。ツクヨミ様もそのように呼ばせていただいているので。」
「ではニニギ、早速だが今後の地上での方針について相談させてくれ。正直俺は頭脳派ではない。本来はウワハル殿たちがオモイカネ殿と相談後にすぐに戻り、魂魄の毒素が浄化される手法を組織的に行う予定であった。あ、魂魄の毒素の浄化については聞いているのか?」
「簡単には。転生の中で喜ばしい経験を積むことが浄化につながるといった程度ですが。」
「そうなんだ。ただ、浄化の程度に個体差があるってことで、監視と場合によっては軽い手助けなどが必要になりそうだから、組織を作ったほうが良いだろうというところで話が止まっている。組織作りについてオモイカネ殿とウワハル殿たちが相談してくるはずだった。」
「なるほど・・・。実験的に魂魄を転生させていたと聞いていたのですが、その際は監視をどうされていたのですか?」
「キビヒコという国津神の血が濃い人間が使役する鳥に、ウワハル殿が呪いを掛けて長生きで賢い生き物を生み出して・・・。」
「それはまた離れ技を!」
スサノオを話を聞いたニニギはしばらく黙って考え込んだ。
「スサノオ様、地上での今後の活動ですが、二通りしかないと思います。
まず一つ目は、いままでどおりオニムカデを退治し、毒素を浄化して回ること。そして二つ目は、一つ目にプラスして少しずつでも魂魄の転生による浄化を進めることです。ウワハル様たちが戻ってこれない間、少しづつでも毒素がこびりついた魂魄を減らすことができますし、少しづつやるということは、じっくり観察でき、データがきちんととれるということです。僕は農耕を司っていますが、豊作の恩恵を与えるだけではなく、どのような条件で何をどのように行うか、データを取り最適な方法を見つけ出すの得意です。」そうゆうの大好きですと、にっこりした。
「なるほど!少しづつしか浄化できないのではなくて、少しづつだからこそ出来ることがあるということか・・・。それはもちろん、2番目の提案しかないな!地上の天津神は我ら二人きりだし、手伝ってくれる人員も少ないが、少ないからこそ丁寧に心を合わせて取り組めるというもの!よし、明日の夜の打ち合わせではこれを提案して皆を驚かせてやろう。きっと元気も出るに違いない。」
スサノオとニニギは少しはよく眠れそうになったなと笑い合い、ではもう明け方だけど寝るかと腰を上げた時、オオクニヌシ様がお呼びです、至急因幡様のお部屋にいらしてくださいと呼びかけられた。
◇
二人が駆け付けると、目覚めた因幡がオオクニヌシに背中を支えられ水を飲んでいた。
「因幡!」
スサノオが寝台に駆け寄りニニギも続いた。
「先ほど、突然目を開けられました。ニニギ殿が剣を振られ、衝撃を感じたところまで記憶があるそうです。地上に落下する途中で、鷹のアキヒコに助けられたとだけお話ししています。混乱されましたが、すぐに落ち着かれました。」やっと目覚めた親友にオオクニヌシは安堵の涙を浮かべていた。
「因幡、本当に目覚めて良かった・・・。どこか痛いとか、気持ちが悪いとか無いか?」
「スサノオ様、ご心配おかけしていたようで、申し訳ございません。痛みも気持ち悪さもないのですが、
なんか力の入りようがおかしいような、変な感じがいたします。」
因幡の返答にスサノオとニニギの顔色が悪くなった。
「神力を感じるはずの感覚に何か違和感が。僕に何があったのか教えていただけませんか?」
スサノオはオオクニヌシを見やった。
「私は退出したほうがよろしいでしょうか?」
空気を読んで申し出たオオクニヌシを因幡が止めた。
「ここにいて欲しい。僕と君は相棒だろう?僕に何があったか、これから僕はどうなるか知ってほしいんだ。スサノオ様、オオクニヌシにも聞かせていただけないでしょうか?」
「・・・そうだな。因幡とこれからも行動を共にすることになるのであれば、補い合う必要があることだしな。」スサノオは了承し、オオクニヌシに因幡の寝台に座るよう促した。
ニニギが剣を振るった時に生じた波動で因幡の神力に関する体内の器官が壊れてしまったこと、器官が壊れたことで天津神と認識されなくなり高天原から落ちたことを簡潔に説明した。原因がおそらく白鰐の姫にもらった腰紐の石であることは絶対に言えなかった。
スサノオの説明に、因幡は黙って涙を流し、オオクニヌシはめまいを起こした。涙を流す因幡が癖のように腰紐の石を触ろうとしたが、そこには何もなかった。
「すまない、落下する最中にどこかに行ってしまったらしい。」
危険物である腰紐の石を回収せねばとスサノオとニニギは心の中で思った。
皆で因幡に寄り添い、数刻がたった。
ハーっと因幡がため息をつき、近くの手ぬぐいで顔を拭いた。
「ありがとうございました。まだ全然心の整理は出来ないですが。ところで、この耳輪は何ですか?」
「あーそれは因幡の神力の塊だよ。俺、因幡が誰かに襲われたらっておもって、寝てるお前の周りに結界張ってたら、漏れ出した神力が溜まってて。小さくまとめてみたんだ。オモイカネ様たちが神力の玉作ってただろ?あれと同じ感じの物らしいよ。お前の役に立つかもって、ツクヨミやオモイカネ様が。」
「なるほど!ってことはこれから神力を抜き出して使えるってことかな?スサノオ様、オモイカネ様たちの神力の玉から力を抜いて使うところ、後でちょっと見せてください。」
「後でなんて遠慮するな!今のお前のためならなんだってするぞ!」
スサノオはオモイカネの神力の玉を走って取りに行った。
結果として、因幡は自分の神力を耳環から取り出し上手く使えることが分かった。オニムカデの毒素の浄化もできそうだった。
「オオクニヌシとこれからも相棒でいられるな。」
嬉しそうに笑う因幡をオオクニヌシは抱きしめた。
「神力が使えようと使えまいと、因幡は僕の永遠の相棒だよ。神力がつかえたらより一層頼もしいけど、剣技だって顔だってぴか一なんだから。」
抱き合う二人をニニギがまぶしい気持ちで見ていると、スサノオはパンと手をたたいた。
「もう朝になってしまったが、とりあえず腹に何かを入れて一休みしよう。夜にはまた会議が待ってるしな。因幡が目覚めたことを知ったら、みんな喜ぶだろう。特にツクヨミが。あいつ絶対泣くぞ。」
「僕もいつか会えると良いな。」
因幡がちょっと涙声になり、オオクニヌシがさらにぎゅっと抱きしめた。ぐえっと変な声が出た因幡を皆で笑った。その輪の中で、僕が絶対にいつか会えるようにするんだ!とニニギは心に誓った。
明日も更新予定です。




