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新釈古事記伝  作者: りんたろう


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25.天津神の降臨~ニニギ その2~

 天津神たちを覆った結界は光りながらゆっくり上昇し、地上の生き物が豆粒ほどになるとスピードを上げ、あっという間に高天原の入り口前に到着した。


「皆さま大丈夫ですか?気分が悪くなった方はいらっしゃいませんか?」

 ニニギの問いかけに、天津神たちは大丈夫と口々に答えた。

 久しぶりに見る高天原の門。その内側では友や家族があつまっているのが見える。皆うれしそうざわめいていた。


「では”エイ、ヤア、トー”の掛け声で行いたいと思います。

 トーで太刀を振り払うと波動が生じ、皆さまを包みながら後ろに流れていきます。そよ風程度の波動なので大丈夫だと思いますが、心配な方はしっかりと足を踏ん張っていてください。」

 懇切丁寧なニニギの説明に皆大きくうなずいた。

 ”エイ、ヤア、トー”と掛け声とともに、行列の先頭でニニギが天叢雲剣を振り払った。


 穏やかな波動が神たちの体を通り抜け、(侵されていないけが)毒素が払われていった。その衝撃波が最後尾に届いた瞬間、うわっと叫んでその場にいた因幡が倒れた。

 皆が振り返ると、因幡の体が青紫にひかり、その光が消えると同時に、雲を突き抜けて地上に落下していった。

「落ちたぞ!!」誰かが叫び、あちらこちから悲鳴が上がった。

「因幡殿だ!誰か早く助けろ!!」

 それから高天原の入口の外側と内側は大騒ぎとなった。


 ◇


 天津神たちを包む光は、豆粒ほどの高さまでゆっくり登るとスピードを上げて去っていった。もう何も見えない天をずっと見上げていたスサノオだったが、高天原のほうから何かが落ちてくるのに気が付いた。


 不信と不安から目を凝らす。

 ・・・あれは因幡だ!!

 落下してくる因幡を指さして叫んだ。

「キビヒコ!因幡だ!鳥たちに命じろ!」

 いつにないスサノオの鋭い命令に、キビヒコが素早く反応した。

「アキヒコ、行け!」

 シタハルの呪い(まじない)によって巨体となった鷹のアキヒコがキビヒコの足元の影から現れ、因幡を目指して飛び去った。


 気を失った状態の因幡をアキヒコは見事に空中で捕まえ、スサノオたちの元に戻ってきた。息をしており、怪我ないことを確認したスサノオは因幡を抱え上げた。高天原に帰ったはずの天津神が天から落ちてきたことに人々が心配そうにざわめきだした。

 スサノオはナガスネヒコを呼び、目撃したものたちへの口止めとこの場の収集を命じた。ニギハヤヒの息子のウマシマジも早速ナガスネヒコを手伝いだした。高天原のほうを再び見上げたが、他に落ちてくる者も動きも見えなかった。念のためキビヒコに上空の監視を命じ、因幡を抱えて屋敷に戻った。 


 ◇


 何が起きたかわからないまま真夜中になった。客室の寝台で眠り続ける因幡の横にイスを置き、その顔を見つめていると、”ニニギ様がおいでです”と扉の外で侍従が囁いた。

 侍従に因幡を見ているように言い、ニニギが待つ応接室に向かった。


 応接室に入ると疲れた顔で椅子に座っていたニニギが立ち上がった。

 良いから座れと促すと、どさりと座りスサノオに頭を下げた。

「申し訳ありません!因幡殿を危険な目に合わせてしまいました・・・。」

 因幡が落ちた場所から下をのぞき込んでいた天津神が、大きな鷹が彼を救ったぞ!と声を上げたときには腰が抜けるほどホッとしたのを思い出し、ニニギは身震いした。

「何があったんだ?」

「天叢雲剣をふって波動を発生させました。

 波動が一番後ろのたどり着いた瞬間、彼が悲鳴を上げました。近くにいた者によると、悲鳴を上げた瞬間、床に倒れ、彼自身から青紫の光が発せられたそうです。2秒ほど光って、それが消えると同時に床の雲を突き抜けて落ちていったそうです。あっという間で掴む暇もなかったと泣いておりました。」

「その後どうしたのだ?」

「彼を助けろと叫ぶ神や、自分の立つ床も抜けるのではとパニックになる神で大騒ぎになりました。

 門の内側では完全封鎖を解いていないのに外に飛び出そうとする者もいて、ツクヨミ様が眠りの呪いを掛けておられました。門の外側では、因幡殿が鷹に救われたことで少々落ち着き、床が抜けるかもしれないとの危惧から、天津神たちをすべて結界で包みなおし浮かせることで静まりました。

 その後、高天原の門を開き皆さまを帰還させることができましたが、この騒ぎのため、再び完全封鎖となってしまい、私だけは地上に降りることが許されました。」

「・・・では、ウワハル殿たちは帰ってこれないということか?」

「はい、すぐ戻ることは難しくなってしまいました。申し訳ありません。

 ・・・おばあさまもオモイカネ様も希望となる計画が始められると本当に楽しみにしていたのに。」

 理性的な説明に努めていたニニギはついに涙をこぼした。


 その涙を見てスサノオははっとした。青年の姿をしているが、彼はまだまだ若い神だった。懸命に事態の収拾に努め、疲れ果てながらも大急ぎで地上に戻ってきてくれたのだろう。

「いや、今回のことはニニギ殿は全く悪くない。すまなかった。

 ありがとう。急いで戻ってきてくれたんだろう?」

 申し訳ありませんと涙が止まらなくなったニニギを抱き寄せると、耳元で「オモイカネ様が明日の真夜中に異空間で鏡通信をと」と囁かれた。

 泣きながらも上手く状況を使い、役割をこなすニニギをぎゅっと抱きしめた。


 疲れただろうと侍従に部屋に案内させ、スサノオは再び因幡の眠る客室に戻った。

 未だ目を覚まさない因幡の頭をそっと撫でた。青紫の光とは何だろう。彼の体に異常がないことを祈るばっかりだった。

そこそこの長さになったような?

今日もありがとうございました。

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