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新釈古事記伝  作者: りんたろう


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22.天津神の降臨~ニギハヤヒ その5~

 オモイカネは決断の時を迎えていた。


 高天原を完全封鎖して100年近くがたった。

 高天原と地上のあいだで怪しい動きはなく、ニギハヤヒからの定期的な報告がタカミムスビとカミムスビにあるだけだった。その報告も、二人を通じてオモイカネにも知らされ、怪しむところは全くなかった。

 その一方で地上では大きな混乱が起こっていた。

 オニムカデが各国で大繁殖し、その毒素で生き物を凶暴な性質に変化させた。その毒素は魂魄にこびりつき、転生先でも影響を与える。人をはじめとした地上の生き物たちだけでなく、多くの国津神たちが亡くなった。

 毒素のこびり付いた魂魄はスサノオが破壊をすすめ、どんどん生き物が減っていった。生きている物も、国津神たちが減ったせいで非常に環境の悪い中でなんとか生きている。特に人間の生活環境は悪化の一途をたどった。


 しかしながら彼の可愛い娘のおかげで、転生する中での経験次第で毒素が浄化されていくことが分かった。


 高天原を完全封鎖中、この膠着ともいえる状況を何とかしたいオモイカネは、すべての出来事の見直しを行った。そしてある仮説にたどり着いた。敵の目的である。

 敵は、黄泉国で輪廻の輪を回したイザナミを狂わせ、根の国で輪廻の輪を回した存在であるスサオミを排除しようとした。最悪、転生がほぼ行われない状況になる所だった。そして今回は、オニムカデに毒を巻き散らからせ、結果、スサノオが魂魄を破壊し、数がどんどん減っている。

 ・・・敵は、生き物を減らしたいのだ。理由はわからないが。

 根の国が混乱し、死亡した国津神たちの転生が遅れがちになり、生活環境の悪化で生き物が育ちにくくなるのといった流れも織り込み済みなのだろう。敵の気の長い用意周到な考えに腹が立つとともに称賛する気持ちにもなる。


 そして、このようなことを企めるのは、地上と黄泉国とその命の流れ、国津神を含めた生き物たちの因果関係を把握している者。そう考えると、始まりの神であるタカミムスビ、カミムスビ、そしてどこかを放浪しているアメノミナカヌシが怪しいと見当をつけた。なにせ、始まりの神たち以外は、司るものが具体的である分、それ以外の事柄にこれほどまでに長い時間執着できない。膨大な数の神たちすべてに対して、司る事柄を一人一人確認はしていったが、該当する神はいなかった。

 では、いずれの始まりの神か?

 アメノミナカヌシが旅立つ前に何かしらの手を打ったとして。イザナギがアマテラスたちを生み出すことや、スサノオが根の国を作り出すことを予測するのは非常に難しいだろう。

 タカミムスビはどうであろう?空間を司る彼から見て、空間に存在している生き物たちが気に入らなかったとしたら?

 カミムスビは?大地を司り、耳が良い彼女はイザナギが引きこもった(設定)の時に、地上が少々騒がしいと言っていた。騒がしいどころではなくうるさいと思っていたとしたら?

 十中八九、二人のうちのどちらか、あるいはどちらともであると思う。

 ・・・が、もし、本当はそれ以外の誰かが首謀者だったら?

 それでも、敵の目的は生き物の数を減らすことなのは間違いないだろう。

 だから、スサノオが魂の破壊をしなくて済みようになり、根の国を正常に機能させることができれば、とりあえずこちらの勝ちだ。さらにイザナギが戻ってきて、イザナミを鎮め、黄泉国が復活しオリジナルの輪廻の輪をイザナミが回せるようになれば・・・。


 彼の悪いところをあえて挙げるとすれば、冒険ができないところだ。石橋をたたいて叩き割るくらいに叩きたい。だが今回は大丈夫だ。

 だれが首謀者であろうと、”とりあえずの勝ち”は確信した。

 オモイカネはにやりと笑った。




 そして冒頭に戻る。


 オモイカネは決断の時を迎えていた。


 彼は二人の始まりの神の前に座り、意見を求められていた。

 タカミムスビは穏やかな微笑みを浮かべつつも困った表情を浮かべ、カミムスビは眠たそうな目をしながら腕を組みイライラとしたように指でたたいていた。地上の天津神たちを帰還させたほうがいいのではないか?というか帰還させたい。それが彼らの意見であった。

「ニギハヤヒから定期的に連絡が来てはいるが、やはりじかに話を聞いてみたいと思っている。

 それに、天津神たちも争いの鎮圧に随分疲れているようだね。彼らは帰還させて、別の天津神たちを送るのはどうかな?アマテラスの開発している道具も出来上がりそうだと言っていただろう?彼女の孫のニニギを送ったらいかがだろう?」

 (この100年ほどの間にアマテラスは孫ができていた。もちろん、ばぁばと呼ばせることはない。)

「地上では争いによってずいぶん食料も不足していると聞く。彼は農耕を司っているから作物の種も共に地上に下せば生き物たちの手助けにもなろう。」

 腹が減ったとの声がひどくて寝不足になりそうなのだ。とタカミムスビに続いてカミムスビが言った。


 先日、アマテラスから、まもなく道具が出来上がるとの連絡があり、タカミムスビ達にも伝えてあった。決め手となる浄化に適した石が見つかったと、声が弾んでいたのをオモイカネは思い返した。

 ウワハルたちと今後についてじっくり話したい。これはオモイカネにとっても旨い話であった。だがウワハルが地上の人間と良い中になりつつあると、シタハルからコソコソっと伝えられた。ニギハヤヒ殿もだ。それに場合によっては双子には再び地上で活動してほしい。

「しかし、地上に残ることや、再び地上に戻ることを希望する天津神もいるかと思います。タカミムスビ様のご子息であるニギハヤヒ様は、ご子息を設けられたと伺いましたが。」

「たしかに。だが我が息子は高天原で果たさねばならない役目がある。そのほかの天津神たちはどうされるかわからないが、それぞれ都合もあるだろう。各自の判断に任せよう。」

 絶対帰還というわけでもないらしい。しかしもっとも怪しいと思っている二人からの提案だ。なぜ天津神を帰還させたいのだろう?高天原の門を開けさせるのが狙いなのか?表向きまっとうな提案な上に、自分にとっても好都合。オモイカネは、頭をフル回転して悩んだ。・・・そして決断した。

「素晴らしいご提案かと思います。地上の生き物たちの食糧まで気に掛けられるとは。私のほうから追加案として一つ。門を開けることはやはり危険を伴います。白鰐の一族に高天原の入口の前にもう一つ結界を張らせ、入り口とその結界の間で皆を浄化いたしましょう。」

 それだけ手順を踏めば安全だ。さすがオモイカネだねとタカミムスビ達の称賛を受け、オモイカネの提案は受け入れられたのだった。


 大丈夫なはずだと自分に言い聞かせて日々を過ごすオモイカネのもとに、道具が出来上がったとアマテラスからの連絡があったのは、すぐのことだった。

アマテラスさまは孫までできていましたが、

もちろん若くてかわいいままです。神様なので。


明日も更新するつもりです。

よろしくお願いいたします。

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