表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新釈古事記伝  作者: りんたろう
18/21

17.天津神の降臨~ニギハヤヒ その2~

 スサノオはニギハヤヒの右手を結界で素早く包み込むと、イザナミに挨拶してから後を追うと言ってその場に残り、すべての天津神を根の国の入口に移動させた。

 イザナミをかたどったものを消し去り、結界を強化し部屋の外に出ると因幡がそっと近づいた。

「皆様、入り口で待機されています。

 あれがツクヨミ様がおっしゃられていたオニムカデと言われているものなのでしょうか?

 あれのかけらを吸い込んだ自覚のある方はいらっしゃいませんが、皆様少々ご不安のようです。」

「ああ、あれがオニムカデだ。ただ、俺たちが生まれる間際に見た記憶のものよりずいぶん大きな固体だ。少々弱くなったとはいえ、結界に無理やりねじ込んできたのに形を保てるとは。

 しかしスサオミや俺が地上を守ってこの方、姿を見せたことなどなかったのに・・・。」

「いかがされますか?

ニギハヤヒ様に刺さったトゲやオニムカデの粉がどのような影響を皆様に与えるか未知数です。

 このまま根に国の外に出すのは心配かと。」

「・・・キサガイヒメの異空間を使うしかないだろう。

 スサオミを高天原に連れて帰る前に受けていた影響をすべて除去できるような代物だ。」

「ひょっとして今お持ちで?」

「・・・兄上のいたずらが嬉しくてお守り代わりに懐に入れていたんだよ!」

 兄弟愛に因幡が思わずニヤニヤすると、顔を赤くしたスサノオは懐から取り出した貝を因幡に押し付けた。

「気づかれないように根の国の入口につないで皆様に通り抜けていただけ。

 お前も忘れずに通り抜けろよ。」


 異空間に気が付くことなく同行者すべてが異空間を通り抜け、スサノオの館に帰り着いた。

 オニムカデの襲来で疲れた一同は早々に夕食を取り、部屋に帰って行った。

 皆が寝静まった頃を見計らって起きだしたスサノオは、ツクヨミにこっそり託されたスサオミとの通信用の鏡を久しぶりに起動させた。



 眠っていたスサオミは久しぶりの通信機の音に驚いて飛び起きた。

 そこには懐かしいスサノオの顔があった。

「どうしたの?鏡は兄上に回収されたんじゃなかったの?」

 嬉しさと驚きで声が弾んだ。

「兄上が今後必要になると思うと残してくださったんだ。

 夜更けにすまん、非常事態が起きたんだ。オモイカネ様を呼んでくれないか。」

 対照的に声が固いスサノオに、スサオミはオモイカネへ急ぎ連絡を取った。



「なるほど、オニムカデが根の国に侵入し、ニギハヤヒ様にトゲが刺さったと。」

「根の国の入口にキサガイヒメの異空間をつないだのは大正解だね。

 あの空間で呪いにしろケガレにしろ、すべてが除去される。

 異空間貝を渡したこと、通信用の鏡を残しておいたことすべてが我々の有利に働いたね。

 先見の明というか、弟への愛というか。」

 寝起きのまま駆け付け、苦い顔で話を聞いていたオモイカネだが、最終的に安心したように息をついた。しかし固い声で続けた。

「明日にでもこの話は高天原に伝わるだろう。

 ニギハヤヒ様にはタカミムスビ様、カミムスビ様に降臨関係の報告をするための通信機が渡されている。おそらく、呪いやケガレが高天原に入ることを危惧したタカミムスビ様がたから、降臨した神々に地上での長期待機が宣言されるだろう。」

「え、でもキサガイヒメの異空間ですべて除去できたのに?」

「キサガイヒメの異空間とその能力については、スサオミのこともあるので仲間以外には秘密にしている。よって除去されたことも秘匿しなければならない。よって今回のオニムカデによる神々への影響について時間をかけて観察していかねばならないとなるだろう。

 ただ、キサガイヒメの異空間のように呪いやケガレを祓う道具を作だせば、それさえあれば皆を帰せる名目となるだろうから、その開発を行っていくことを宣言しよう。

 さらに私のほうから高天原の完全封鎖を提案しよう。それによって敵の出入りも防げるしな。

 我々は高天原の神々の、スサノオは降臨した神々の監視を行っていくこととしよう。」

オモイカネの返答にスサノオは深く頷いた。

「わかりました。

 降臨の本来の目的通り、国々を回って争いを鎮めつつ監視を行っていきます。

 オモイカネ様、兄上に異空間貝と鏡のことお礼を伝えてください。

 スサオミ、顔がみれて本当にうれしかった。」

「僕も嬉しかったよ。

 兄上には僕からもお礼を言っておくね!。」

 そう言って鏡通信は終わった。



 次の日、オモイカネが言っていた通り、降臨した天津神たちは地上に長期待機することとなり、高天原は完全封鎖をされることとなった。呪いやケガレを祓う道具の開発はアマテラスが中心となって進められることになり、およそ100年ほどかかるとのことだ。


 ニギハヤヒは、皆の安全を思ったが故だったとはいえ、自身の行動の結果がこのようになったと部屋にこもり気味になったが、天津神たちは永遠と言える生の中でのわずかな時間の出来事と考え、全く気にするそぶりを見せず、国々をまわることに精をだすこととした。そのうち、ニギハヤヒ自身も身の回りを世話してくれている3兄弟妹によって徐々に立ち直った。特にミカシヒメの存在が大きかった。最終的には先陣を切って出かけるようになった。


 しかしながら不思議なことに、神々が争いを鎮め、場所を移動すると、再びその地で争いが始まるといったことが起き、いつまでたってもすべてが平和にはならなかった。そして、今まで姿を見せなかったオニムカデの目撃が増え、ついにその攻撃によって人間の死者が出た。


 

 根の国にやってきたオニムカデに攻撃された死者をみて、根の国の侍従は言葉を失った。

 その魂には毒素が色濃く染みついていた。

 慌てて、根の国で待機しているその他の死者の魂を確認すると、よく見なくてはわからないほどの毒素が付いている魂が多く見受けられた。

 それらは、オニムカデの目撃された地域で亡くなった死者の者だった。


「オニムカデと接触があった人間は魂に毒素がこびりつき凶暴な性質に変化させていることがわかりました。・・・さらに毒が付いた魂は転生した先で争いを起こすようです。」

「毒素を持った多くの魂が、そのまま転生してしまったとおもわれます・・・。」

 根の国の侍従からの急ぎの連絡で駆け付けたスサノオはその報告に言葉を失った。

遅れました・・・<(_ _)>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ