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新釈古事記伝  作者: りんたろう
16/19

15.因幡くんと白鰐ちゃん その2

因幡くん視点→白鰐の姫視点→白鰐のガロ視点と変化します。

(16日:後半少々修正いたしました。よろしくお願いいたします。)


 天津神の降臨に随行することになった。

 地上での諜報活動に立候補はしたし、それなりの表向きの名目が付くのだろうなと思っていたが、まさかの天津神の降臨の随行だ。

 随行する天津神は大勢いるし、僕も一応天津神だが、一族の長の息子とはいえ三男坊が抜擢されるのは不自然が過ぎるのではないだろうか?


 僕が随行することで、同じく随行する女性の天津神がキャッキャしてるとツクヨミ様に言われた。

 確かに”ご一緒できてうれしいわ~”とか“地上ではわたくしと一緒に〇〇を見に行きませんこと?”とかのお声がけが多い。

 ツクヨミ様のお使いの途中、また声をかけられているところを、オモイカネ様のお子様であるウワハル様とシタハル様に目撃されてしまった。お二人の目の奥がニヤニヤしている。僕はね、あなたがたのお父様とツクヨミ様のせいでこんな目に合ってるんですよー!と声を大にして言いたい。 


 この度の天津神の降臨はタカミムスビ様のご提案により、地上へ天津神の存在と情を示すために行われ、ご子息のニギハヤヒ様を筆頭に人員構成された。

 人員は30名を超え、警備のための物部(もののべ)(=兵士)、降臨のための乗り物である天鳥船の操縦士を加えると100名弱を動員する。


 その中で、我々の仲間としてはウワハル様とシタハル様を筆頭に8名だ。

 ウワハル様は女性、シタハル様は男性の双子の天津神で、ウワハル様は学問と開拓を、シタハル様は剣技と裁縫をつかさどっている。お二人ともそっくりでたおやかな見た目をされているが、中身は苛烈で賢くしたたかであり、見た目でだまされてはいけないの典型的なお方たちだ。

 ほんと、あのお二人のお子様である。


 仲間以外は知らないその中身を隠してお二人がうふふと近寄ってこられた。

「因幡、今回はご一緒できてうれしいよ。

 君が高天原をしばらく不在にすると知って、寂しがる女性がいっぱいいるだろうね。

 特に白鰐の姫とか。」


 お二人には姫に”ふけつっ”とか言われているところを目撃され、”ぷー、くすくす”されている。

 姫にはこの数日はすれ違っても目も合わせてもらえない。というか僕を見かけると引き返したりわき道にそれたりされている。

「はは、姫にはすっかり毛嫌いされて、この頃はお声もかけてもらえません。」

 そうなのだ、しばらく会うことができないというのに・・・。いつもの色男調で答えたのだが泣きたい気持ちがちょっと表情に出てしまった。

 ウワハル様がちょっと目を見開いて僕を見るとふわっと僕の耳元に近づいた。

「いいことを教えてあげよう。この前、白鰐の長に剣術を教わったであろう?

 その前に父上とツクヨミ殿が長に何か提案したことが原因らしいぞ。何をしたか父上たちに聞いてみたほうがいいと思うな~。私としては。」

 びっくりしてウワハル様を、続いてシタハル様を見やるとうんうんと大きく頷いていらっしゃる。

 お二人は苛烈で意地悪だが優しい。

 僕は急いでオモイカネ様とツクヨミ様を探しに行った。





 

 因幡が天津神の降臨へ随行することになった。

白鰐の一族の時期長としてのお役目で、見回りを行っている最中に、随行する女性の天津神たちが”一緒に地上を楽しみたいわー”とかキャッキャと話しているのを見かけた。

 何を言っているの!地上は戦があちこちで起きていて、それらを鎮めるための降臨だというのに。

 あなた方がどの程度の腕前なのか知らないけど、自分たち天津神は国津神や人に傷つけられることはないとでも思っているのかしら?


「浮かれている場合ではないと思いますがね。」

 私の侍従として付き添っているガロが彼女たちに聞こえないように囁く。

 不快に思っていることが顔に出てしまっていたらしい。

「因幡のやつも誘われて満更でない感じでしたよ。まったくお役目を何だと思っているのやら。」

 そうなんだ・・・満更でもなかったんだ・・・。

「あんななよなよした見た目でどれほどの腕前なのか知りませんがやっていけるんでしょうかね。」

 あ、そういえば。

「腕前といえば、先日父上が因幡に剣の稽古をつけていたぞ。

 なんでだろうと思っていたが、降臨に随行するからだったのだな。

 稽古の後にえらくご機嫌だったから、それなりに満足できる腕前だったのだろう。

 因幡のことは可愛がっているし、安心したのだろうな。」

 そう言うとガロが勢いよくこちらを見た。

「え、何ですかそれは?長が剣の稽古を??」

「ああ。オモイカネ様とツクヨミ様が何か話しに来た後、因幡を呼びつけていたぞ。

 降臨の話がおおやけになる前だったが、おそらく根回しだったのだろう。

 まぁ、父上のお墨付きであれば因幡きっと大丈夫だ。」

 思わず因幡を案じるようなことを言ってしまって、あたふたとしつつガロを見るやると心ここにあらずといった感じで空を見つめていた。

「姫、おそばを離れてもよろしいでしょうか?」

 突然申し出てきた。高天原の門番の一族として見回りを行っている最中に持ち場を離れることを申し出るとはと、今までにないことに驚いたが、ガロの勢いにおもわず頷いてしまった。

 急ぎ足で立ち去るガロを見送った後、空を見上げつぶやいた「お守り作って渡そうかな・・・。」






 なんだと!長みずから剣の稽古をつけるために呼びつけただと!!

 嫌な予感がして、俺は疑問をぶつけるために姫の元を離れ長のもとに駆け戻っていった。

 本当に降臨のためだけの稽古だったら良いんだ。 

 でも、オモイカネ様とツクヨミ様がいらした後というのが気になって仕方ない。

 -------------

 天岩戸騒動の時に俺を呼び出した高貴なお方は待ち合わせ場所にピンクの花びらをまとったに鈍い光を放つ小さな球体を使わされた。

 そして間もなく因幡が高天原を出るようなことが起きるとおっしゃられた。

 その時、この球体を彼に持たせるようにと。さすれば二度と戻っては来れないだろうと。

 その言葉に喜びと共に恐怖を感じた。

 居なくなればいいとは思ったが、やりすぎなのではないだろうか?

 そんな俺の気持ちを見透かすように、まぁ決断は君に任すよやさしい子よ、とくすっと笑った。

 -------------

 そんなことを思い出しながら白鰐の一族の屋敷に戻ると、長と因幡と話しているの見つけ、とっさに物陰に隠れ耳を澄ました。


「あの、それはいったい??」

顔を真っ赤にしてわたわたとする因幡に長がニマニマと見ていた。

「なんじゃ?オモイカネ様たちから話を聞いてきてるのだろう?

 どうやらおぬしたちは思いあっているようだから考えてみてくれないか?と言われたから、剣の腕前を見てやったというのに。あれだけの腕前があれば我が一族の姫への入り婿として申し分ない!

 まぁ、娘と二人っきりで合わすのは降臨から帰って来てからだがな。しっかりお勤めしてくるように。」

「え?え??

 僕はオモイカネ様たちから、すべて聞きましたって長に言えって言われてきただけなんですけど?

 思いあってるって?入り婿って??姫は僕の事嫌ってるんじゃ?」パニックを起こしていた。

「落ち着け。

 なんじゃ、全然聞いてきて無いではないか。」

 嵌められたな!と長は大笑いであった。

「なんで?なんであの二人は知ってるんです???」

 もう誰に話しかけているのかもわからないセリフを因幡は叫んでいた。

「本当に落ち着け。

 わしも忙しいのじゃ。簡単にまとめると、お二人はお前たちの思いをなぜか知って、珍しく橋渡しをしに来たってことだ。

 まぁ、わしの妻に確認したところ姫の気持ちにはうすうす気が付いているといっていたから、わしもお二方の気持ちにこたえたってところだ。」

「・・・良くわからないけど、わかりました。

 こんなことがっ・・・。もう、言葉が出ません・・・。」

「だが!このことは娘には内密にな!!

 あやつは天邪鬼だから、降臨前の時間のない時にこじれたくないだろ?

 帰ってきたらじっくりと話し合うが良い。

 そなたが帰ってくるまで娘もわしも待っているから。」

「もう気持ちがいっぱいです・・・っ。姫に伝えられないのが苦しいですが・・・。いや、伝えるのは今の僕には無理・・・。

 兎にも角にもお役目を早くに終わらせて必ず無事に帰ってまいります。」

 顔を真っ赤にした因幡が長に頭を下げた。

「よしよし。

 楽しみにしているよ。とにかく準備をしっかりな。

 わしも忙しんじゃ。もう行きなさい。」

 長にせかされて因幡は何度か振り返り、おじぎをしながら走り去った。


 一番最悪な想定の会話を聞き、物陰で呆然と立たずむ俺に長が声をかけてきた。

「ガロ、おるんじゃろう?

 なんとまぁ、とんでもないタイミングにやってきたな。」

 俺が黙って物陰から姿を現すとため息をつかれた。

「すまんな。

 こんな形で知らせることになるとは思っていなかった。

 お前が娘に心底惚れているのはわかっていた。

 お前自身も心優しく優秀な若者だ。だからこそ婿候補として扱ってきた。

 だが、我ら門番の一族は守りたい存在がいればいるほど結界の力を強められる。

 娘自身の思いのためだけでなく、一族の存在目的としても、大切な存在を得ることは至高なのだ。」

 長の言いたいことはわかる。我ら天津神は存在目的を達成することを至高とする。

「大丈夫です。俺にも天津神の本能は感じ、理解できます。」

「すまん。」

「失礼いたします。姫の元に戻らねばなりません。」

 長の声に頭を下げると、胸元に忍ばせていた高貴な方から頂いた鈍く光る球を服の上から握りしめて歩き出した。

 姫の気持ちには気が付いていたが、因幡も同じだとは思わなかった。しかもあいつの素を始めてみたが、色男は演技で単にいい奴だということも分かったしまった。姫が毒牙にかかると思っていろいろ吹き込んだことが後ろめたい。二人がこじれているのは俺のせいでもあるだ。だが、高貴な方は俺と姫は運命だとおしゃっていた。頭の中がぐるぐるとし、足取りが重い。


 姫は俺の姿を見かけると走り寄ってきた。

「どうしたの?だいじょうぶ??」

 ろくに訳も言わずにそばを離れた侍従なのに、心から心配してくださる。

「本当は見回り中に私のそばを離れてはいけないのよ。

 だから、今日のことは誰にも言ってはダメよ!」

 姫のやさしさに大人しく身を引こうかと思った時だった。

「あのさ、因幡にお守り渡してみようかなって思うの。

 さっき一人になったとき考えたんだけど、無事に帰ってきてくれたらしっかり話して、気持ちの整理をつけたいと思うの。」

 気持ちの整理をつける?それは、因幡をあきらめられるということなのだろうか? 

 俺との運命がそこから始まるということなのだろうか?

「姫、じつは俺、守り石としていいものを持っているですよ。

この石を使って因幡にお守りを作ったらいかがでしょうか?」

 奇麗だなーガロはすごいもの持っているなーと素直に喜ぶ姫をみながら、高貴な方がおっしゃった俺の運命を信じ、身を任せよう。俺は長年婿候補として扱われ、姫への思いを育てる十分な時間を持ってしまったのだ。簡単にあきらめることなどできないとあがくだけの資格もある。

 ただ、もしこの石を渡されても因幡が戻ってきたら。それはそういうことなんだろうと受け止めよう。

明日も更新できるように頑張ります!

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