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新釈古事記伝  作者: りんたろう
13/15

12.イザナギの決断

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 私の大切なイザナギに、とてつもなく苦しい決断をさせてしまった。

 彼は天津神であるイザナミの記憶の一部を消し去るために天の川の水を求めて旅立ってしまった。私の星読みの占いでは無事に帰ってくると出ているが、天津神である私ですら長いと感じるほどの時間がかかる。だがイザナギならやり遂げるだろう。



 会いたくてもすぐに会えない場所へと旅たってしまった友を心に思い浮かべ、オモイカネは心の底から無事の帰還を願った。

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 スサオミとスサノオの交代は、拍子抜けするほど上手く行った。この私、オモイカネも驚くほどに。

 ツクヨミによって連れ帰られたスサオミは体力が落ちて弱っていたものの身体にも精神にも異常はなく、隔離用の異空間で数日過ごすうちにすっかり元気になった。異空間とその機能を使いこなし、随分快適な世界を作り出し”隔離世(かくりよ)”と名付けた。


 スサノオもスサオミの神力の玉を使いこなし、黄泉国の封印を更に強固にしたことで這い出してきたカタバミも萎れて消滅した。現状維持と言う意味ではこれ以上にないほどの成功だった。

 ただ、我らの最終目的はイザナミとスサオミを取り戻すことだ。スサオミを高天原に連れ帰ったとはいえ、その存在は秘匿され本当の自由はなく、イザナミに至っては未だ暴走が止む気配がない。


 スサノオの状況を確認するとの名目で、イザナギとともに根の国に赴いた私は、遠くからでもわかるイザナミの神力の暴走の気配に呆気にとられた。

「話には聞いていたが、ここまでとは、、、。」

「母上の父上に対する想いが深いが故なのでしょう。最近、急激に岩の向こう側で気配の数が増えていることから、母上に吸収された鬼たちの分離速度が速まっているようです。

 神力の暴走の影響が凄まじいので、おそらく鬼たちは狂気化したままかと。

 時間が経てばたつほど、個として戦える鬼とかした黄泉軍の兵士の数が増えことになります。

 いまは大丈夫ですが、封印が解けでもしたら世界が大変なことになるかと。」

 絶句する私にスサノオが苦悩の表情で現状を伝えてきた。


「イザナミの暴走を鎮めない限り、時限爆弾を抱えているようなものということか・・・。」


呟く私の目を見つめ、今まで黙っていたイザナギが言った。

「俺はずっと考えていたんだ。本当はお前はわかっていたんだろう?

 イザナミの俺への想いが暴走につながっているのであれば、その想いを消すことが最良だと。

 俺が悲しむと思って黙っていたんだろう?」


 そうだ、世界を守るにはそれが一番確実であろうことはわかっていた。

 だがそれではイザナミとスサオミを取り戻すということにならない。

 イザナギを悲しますことは選択肢にはなりえない。

 そう伝えると「全くお前って、、、。本当に大好きだ!」

 と嬉しいことをいってにっこり笑ってくれた。


 そしてさらに続けた。

「イザナミが俺を忘れてしまうと思うと本当に苦しい。

 だけど、イザナミがそれで穏やかでいられるのであれば、それでもいいんだ。

 俺を忘れたからって、俺のイザナミへの想いが無くなることはないんだ。

 イザナミが俺を忘れたって、また愛してもらえるように側にいることができるようになるのだから。」

 ああ、そうだ。そうだった。

 イザナギはそうだった。 

 彼は恐れず前進できる奴だった。  



 様々な薬草の組み合わせによって、望む記憶を消せることを私は調べ上げていた。

 そして天の川の水とともに摂取すれば、天津神が対象でも記憶を消せることを伝えた。天の川はとてつもなく遠く、イザナミという時限爆弾の爆発に間に合わない可能性もあることも含めて。

 他の者に生かせるという選択肢もあったが、危険があるかもしれないこと、スピードが必要なことから、仲間の中でもっとも体力、武術、神力が優れているのイザナギが最適であることは明確であった。

 イザナギは、後を私や子供たちに任せて行かなければいけないこと申し訳ないと何度も言っていたが、自身がイザナミのためにできることがあるのが嬉しいと、旅立ちを選択した。

 一緒に話を聞いていたスサノオは母に続いて父とも離れる寂しさに年甲斐もなくイザナギに抱き着いて泣いたが、私は君に対する思いと誇りで微笑んでいた。



 根の国から戻ると、イザナギは、スサノオの改心のなさの懺悔をしたいとして、アマテラスが立てこもった岩戸にひきこもることとすると宣言をした。

(この宣言に関しては、アマテラスもツクヨミもスサオミも、スサノオの更なる醜聞となることに難色を示したが、当のスサノオは大笑いして快諾した。)

 岩戸を住まいとして改築し、食物等は岩戸内で自給自足をするとしてイザナギは見せかけの引きこもりを始め、彼はこっそり天の川へ旅立った。

 見送りはできなかった。



 いつも心で君を思ってる。

 無事に帰ってくるのをまってるよ。




「ところで封印されている黄泉国の中で、暴走している母上にどうやって天の川の水を飲ませるんですか?」

スサオミの隔離世で感傷に浸っている私にツクヨミが聞いてきた。

「そんなの黄泉国の封印を解いた瞬間に天の川の水ですべて水没させるにきまってるだろう。キサガイヒメにお願いして作ってもらった大容量の異空間タンク持たせたし。」


ツクヨミ:(飲ませるんじゃなくて溺れさせるんだ・・・。)

アマテラス:(全然ロマンチックじゃない・・・。)

スサオミ:(ま、それが妥当だよね!)

3連休に入りますね。

次の投稿は火曜日を目指しています!

皆様良い休日を。

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