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新釈古事記伝  作者: りんたろう
11/17

11.とある神の思惑

少々内容を変えました。あらすじは変わっていません。

 面白いと思ったのは最初だけであった。すぐに五月蝿いと思い、いまやその醜悪さに苦々しい気持ちしかない。

 あれら人を地上から一掃したい。だが、天変地異を起こせば他の生き物たちの生命まで危うくなる。そこでまずはあれらを作り出し、さらに助けている国津神たちを滅しようと考えた。国津神の加護がなくなれば、あれらは自然の脅威にさらされるだけでなく、火を使う、安全な水を得るといった日常生活すら立ち行かなくなるであろうから。


 地上で生まれる国津神は天津神と異なり、死ぬと力が使えなくなる。再び力を振るうためには輪廻転生の輪に乗りこの世に生まれなおさねばならない。黄泉国にいつの間にかあった輪廻転生の輪は、高天原から吹く風でかすかに回るだけで、人やそれ以外の生き物でさえ転生するには50年以上かかった。

 国津神とはいえ、神を輪に乗せ回すには弱すぎる力であり、相当時間がかかるということだ。つまり死者が増えれば黄泉国は魂で溢れかえり、時間がかかる国津神たちは他の魂に先を譲るであろう。


 そこで私は人の繁殖力をこっそりと増し、繁栄に導いた。人が増えたことにより増加した争いによって寿命以外の死が増え、さらに国津神たちも争いに巻き込まれて死亡し、急激にその数を減らし始め、あふれかえる死者の魂で黄泉国は混乱が起きた。

 思った通りだ。

 そんなときに黄泉国に王と呼ばれる存在が現れた。黄泉国の王は、輪廻の輪を回すことができた。私の邪魔をするのかと腹ただしさに、一度様子を探りに行った。 

 だが、かの王の魂魄の力では輪の速度は少々早くなる程度で、国津神を乗せると随分速度が落ちるようであった。この程度であれば、問題にもならないと安堵した。


 そんなときに天津神であるイザナミが死んだ。それまでに死んだ天津神が皆無だったこともあり、ほとんどの天津神が知らなかったことなのだが、我らは死んだあとも力が衰えず、黄泉国に行きはするが出入りは思うままなのである。

 しかしイザナミには愛しい伴侶がいた。死んだことによって肌や髪の色が変化した自分を見られたくないといった乙女心が彼女を黄泉国に足止めし、あろうことか輪廻の輪をその膨大な神力で回し始めた。

 せっかく滞っていた人と国津神の転生は非常に速い速度で処理され、この世に舞い戻ってきた。


 私の同胞であるイザナミ。だが、私の理想の世界づくりの邪魔となるのであれば排除するしかないと思った。黄泉国から連れ出すだけではだめだ。情が深い彼女は、出入り自由と知れば輪を回すために黄泉国へ通うに違いない。


 しょうがないので可哀想であるが神力を暴走させ、正気を失わさせることにした。理想の世界が出来上がった暁に、心の回復に尽力すればいいと思った。


 さて、どうやって暴走させようか?彼女が愛してやまないイザナギに新たな妻を娶らせようか?それとも行方不明の始まりの神の一柱であるアメノミナカヌシを探さねばならない状況を作り出し、イザナギに帰ってこれないほどの遠い別天地まで探させようか?イザナミに衝撃を与える方法に思い悩んでいたそんなときだった。


 賢いオモイカネは、天津神は黄泉国から連れ出すことができることに気がついた。きっと伴侶を亡くしてそれこそ屍のようになったイザナギに迎えに行くことを提案するだろう。

 なんと絶好の機会!

 以前、黄泉国の様子を探りに行ったときに根付かせておいたカタバミの花を通じて黄泉国の様子は把握していた。あの王と呼ばれている少女がイザナミに酷く依存していることも。そして相変わらずイザナミが変化した容姿に劣等感を持ち、恥ずかしく思っていることも。


 少女に囁くだけで十分だった。彼女はイザナミに「迎えに来たはずのイザナギはイザナミの姿におそれをなして逃げ出した」とつげ、見事に羞恥心を刺激し神力の暴走がおきた。

 計算外だったのはイザナギが岩で黄泉国を封鎖したことだった。カタバミの花での監視は黄泉国の中にしか配置していなかった。暴走のときに外に一緒に飛び出させ、花を通じて鬼と化した黄泉軍が人と国津神を減らしていく様を監視しつつ誘導しようと思っていた。なのに岩で塞がれて、その上結界までかけられてしまってその後の外の様子を把握することが出来なかった。更に、鬼もムカデオニもほんの少ししか外に出すことが出来なかった。


 黄泉国内は考えていた以上の状況で、暴走した神力に黄泉軍たちは言うまでもなく、黄泉国の王と呼ばれた少女すら個を保つことが出来ずイザナミに吸収されていった。まぁ、少女にとっては願いがかなって嬉しかろうと、思わず嗤ってしまった。

 ただ、イザナミと同化した黄泉軍どもがイザナミを慕うがゆえに再分離がなかなか進まず、すぐ使える手駒が外に出した僅かな鬼どもだけになってしまったのは誤算だった。時間が経てばやがては分離してくるだろうから、ある程度数が揃うまで待つこととした。

 黄泉国は封鎖され、輪廻の輪は使えないのだから国津神は蘇らないし、思い描いた世界が実現するのであればあと少し待つことぐらいなんてことはない。


 そう思っていたのにイザナギは黄泉のケガレから有能な子どもたちを生み出すと行ったまさに神業を成し遂げた。連れ帰った3人の神を見たときには人知れず歯噛みをした。その一人であるスサノオは第2の黄泉国である根の国を作り、あろことか擬似的に輪廻の輪まで生み出した。

 黄泉国が封鎖されているのに輪廻転生が行われていることに疑念を抱き、外に出した鬼に探らせ、わかったときには殺意が湧いた。しかも探らせに行かせた鬼をさらに根の国に近づけたところ消滅してしまった。どうやら根の国の外側には何かしらの結界が張られているらしかった。土に根を張る植物なら結界に反応しないと思われるが、小賢しいオモイカネの提案で、高天原から地上に降りることが難しくなり、細工をしに出掛けることができなくなった。黄泉国にあるカタバミも、強力な神力による封印で這い出させることは出来ず、根の国に手を出せない。おそらくあの有能な子供たちの力であろう。

 輪廻の輪が偽物であるせいか、誰だか分らぬが回しての力がイザナミよりも劣るせいなのかわからぬが、転生速度がイザナミの時代の5割程度であることで満足するしかなかった。



 黄泉国のカタバミの花を外の世界に出すために、イザナミからの分離で徐々に増えてきた鬼どもに岩を掘らせる。神力による封印は物理的な破壊によって歪みが出る。地上の理にある植物であれば、何百、何千と繰り返し挑戦すればいつの日か歪みを通り抜けることができるだろう。

 その時こそ今の世界の崩壊と理想の世界の始まりだ。

 それを思えばあと少し待つことぐらい、なんてことはない。



 その後、神の私ですら長いと感じる時間をかけ、やっと這い出させたカタバミは消失させられたが、天岩戸の前の大騒ぎの中、私は門番の一族の一人を手ゴマとして得た。


イザナミ、黄泉国の王、白鰐のガロ。誰かを慕う心が争いに繋がるとは。

本当に愚かなことだ。


神である私でもまだ学ぶことがあるものだと思わず嗤ってしまう。

登場人物が増えてきたので

明日はまとめ(ネタバレにならない範囲で)を載せます。

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