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◆第6章 新たな仲間との出会い ~見た目は子供、頭脳は大人・・・登場~

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誠たちはリリアに導かれ、隣領「ガルディア領」の町に足を踏み入れる。

そこはかつてこの辺りでは一番栄えた町だったが、今や荒れ果て、疲れ切った民の姿しかない。


そう、さっきアリシアが言いかけた廃村ラズン村から人も受け入れたということで表向きはとても寛大な領地だと言われているが実際は・・・


迎えたのは、リリアの父であるエステル=ガルディア卿。豪奢な服を身にまとい、民の苦しみには一切関心を示さず、誠を「道具」としか見ていない。


そう、裏では人民(税収)が増えたとしか思っていないのだ。


領主:「君の噂は聞いている。“無能スキルで改革した男”とか何とか。で、そのスキル、私のために使えるのかね?」


民の苦しみに心を痛めるリリアと、民の労苦を「税収と権力」の道具にしか見ていない領主。

誠は言葉少なに状況を観察しながら、決意を固める。


誠(心の声):「この男のためじゃない……この娘と、そしてこの町の人たちのために、動こう」


領主の応接間には大理石の床に絨毯を敷き、豪奢な椅子にふんぞり返っていた。


「おう、噂の“便利男”か。見た目はただの小者だな」


「……誠です。失礼ですが、なぜこの町の改革を望まれるのですか?」


「は? 税収が減ってるからに決まってるだろう? 

私は“民のため”なんて大層な理屈で動いちゃいないよ。

君の力で町を回復させて、税を払わせろ。それで十分だ」


「お父様……っ!」


(無視して):「娘がいくら美談を語ろうと、まだ子供だ。私は現実主義者だよ。君も“現実”を知ってる成人なら、わかるだろう?」


「ええ、私は“現実”を知っています。だからこそ、未来のない現実には仕えません。

あなたではなく――あなたの娘さんと、この町の人々のために、私は動きます」


「まあいい、結果的に私のためになるんだからな」

エステル=ガルディア卿が何か言っていたがその言葉を無視して、館を後にした。



そして、リリアの紹介の元、町の中の悩み事を一つずつ解決していった。


井戸から水が出ないと言われれば井戸の問題を現代知識をもとに考える。

(水が濁ってる……原因は水脈のズレか?)


 彼は地形図と町の地盤の感覚を頼りに、井戸の底に向かって〈再配置〉を行う。水脈に近い場所に、井戸の吸水面をずらすことで、水の流入量を調整する作戦だ。


「こんなことで水が復活するの?」


アリシアは誠が何をしているのかさっぱりわかっていない。


「まあやってみなければわからないさ」


〈再配置〉対象は水脈


リリアが井戸の中を覗き込むとチョロチョロと水の音が聞こえてきた。


「水です!皆さん、水が戻ってきました!!」


町の人々は歓喜した。


この町に来て業務改善したことはだいたいこんな感じ。現代の知識もフル活用だ

① 傾いた井戸の再整備

問題:井戸が傾き、水が濁って使えなくなっていた。

対応:〈再配置〉を使って井戸の中の水脈の構造を正しく戻し、石のずれを修復。

+現代知識:さらに雨水を集める簡易フィルターを設置し、濁りを減らす。


結果:村の水質が改善され、女性や子どもからの感謝が集まる。


② 道の整備

問題:雨が降るとぬかるみ、家畜や荷車が通れなくなる泥道。

対応:誠が小石や木材をうまく再配置し、排水の流れを変える。

+現代知識:簡易的な傾斜と水路をつけるよう提案し、泥の流れを分散。

結果:通行が格段に楽になり、新たな事業として町の中を周回する馬車も開通。



③倉庫の扉の再配置

問題:倉庫の扉が歪んで開閉できず、収穫物が湿気で傷んでいた。

対応:〈再配置〉で扉の軸や板のずれを修正し、ピッタリ閉まるように。

+現代知識:中にすのこを敷き、通気性を高めるアドバイスをする。

結果:保存状態が改善し、食料ロスが激減。町民から感謝される。



④魔物避けの柵の修理

問題:町の外れにある防柵がボロボロで、夜な夜な魔物が忍び寄ってくる。

対応:〈再配置〉で破損した部分を修復。さらに木の杭を組み直す。

+現代知識:トゲや音を鳴らす簡単な罠を設置するアイデアを出す。

結果:魔物の接近が減り、夜間の不安が軽減。警備班に一目置かれる。



あっという間に誠の評価はうなぎのぼり

「ねえ、“マコトおじさん”って、魔法つかえるの?」

「スキルって、なに? ぼくももってる?」

「おじさんじゃない、兄さんだっての……」

 笑いながら、誠は子どもたちをあしらっていた。



「一週間でここまでやるなんて、ちょっと化け物じみてるわよ?」

「おいおい、人を魔物みたいに言うなよ」


 笑い合うふたりの姿に、町の人たちにも次第に笑顔が戻ってきていた。

誠の技術にうんうんと納得する少女の姿が。


「……君、こんなところで一人で何してるんだ?」


建物の陰に、一人の少女が立っていた。

長い黒髪を三つ編みに束ね、あどけない表情の中にどこか大人びた影を宿している。

彼女の名は――リノア。


「……あ、えっと……」


言葉を詰まらせた少女に、誠はしゃがみ込んで微笑みかけた。

アリシアも少し離れた位置で警戒を解かずに見守っている。


「危ないからね、こんな遅くに子供が一人で来るのはよくないよ。……家はどこ? 迷子かい?」

リノアは少し俯いたまま、ぽつりと呟いた。


「……迷っては、いないよ。家は、あっち。南の端の、小さい家……でも、もう、帰らなくていいかなって」


その言葉に誠の表情が少し曇る。


「どうして?」


「私の言うこと、誰も信じてくれないの。お父さんもお母さんも、お兄ちゃんたちも。……気味が悪いって。私はただ、法則を伝えて便利になる方法を話したかっただけなのに」



「法則?」


アリシアが小さく目を見開いた。誠は、ゆっくりと立ち上がり、


「……もしかして、リノアって、この世界以外の記憶がある?」


その一言に、リノアの体がびくりと震える。


「どうして……わかるの?」


「俺も、そうだからさ」


沈黙の中で風が吹き抜ける。

リノアは、信じられないというように目を見開き、そしてぽろりと涙をこぼした。


「ほんとに……? ほんとに、そうなの?」


誠は優しく頷き、彼女の頭を撫でた。


「君の知識、無駄にしたくない。俺と一緒に来ないか?」


「……うんっ!」

その笑顔は、年相応の少女のものだった。


アリシアは、少しだけ寂しそうに微笑みながら、ぽつりと言った。


「可愛い妹分が増えたわね。……でもあまりなつかせすぎたら、嫉妬するかもよ?」


誠は肩をすくめて苦笑する。


「まあ、それはそれで楽しくなりそうだ」


こうして、また一人、仲間が増えた。

まだ見ぬ町での改革と、少女の知識が新たな奇跡をもたらす日も、そう遠くはなかった。


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