◆第5章 新たな仲間との出会い(の前の一波乱!?)
アリシアと誠は村長に言おうと決めていたことがある。
「私は誠さんに着いていくことにします」
「アリシアさんと旅をさせてください」
アリシアと誠は村長であるアリシアの父に頭を下げた。
「彼には何度も助けられて、彼の人間性にも惹かれました。」
「村を出ることを許してください。」
村長である父は喜んで許してくれた。
「誠さんには恩義があります。村の活気を取り戻してくれました。
さらに村の周りにも強固な柱、
溝も掘って頂いて魔物の脅威からビクビクする生活もなくなりました。」
「ふつつかな娘ですが、何卒宜しくお願い致します。」
翌日の朝に二人で村を出た。
次の目的地はラズン村。
ギルドから預かった地図を見つつ歩きながら二人で相談する。
「……おそらく、ここを再整備すれば馬車も通せる。アイテムボックスで資材も運べるし……」
「とりあえず物資の補給が必要だから、ラズン村の前に近くの町に寄ろう」
「近くの町にはラズン村からの村民も移民してきているようだけど重い税で苦しんでいると聞いたわ。確か名前はガルデ・・・」
そんな話をしている時
風が、切り裂かれる音が聞こえた。
「――っ、馬?」
耳を澄ますまでもなく、急な蹄の音が近づいてくる。いや、それだけじゃない。
「助けて……誰かっ!」
女性の悲鳴。
誠は思考よりも先に、身体を動かしていた。
草原の向こう、小道を馬車が駆け抜けてくる。
荷台には一人の若い女性、振り落とされそうになりながら、必死に手綱を握っている。
「っ危ない!」
馬車は制御を失っていた。地面には幾つもの転倒跡、直進すれば、崖下へ。
誠は意識を集中させた。
「スキル〈空間移動〉」
空間が歪む感覚と共に、誠の身体は女性のすぐそばへ転移する。
風を切る速度。視界が揺れる。目の前で女性が目を見開いた。
「だ、誰……えっ、何、この……っ!」
「しっかり掴まってろ!」
彼女を抱きかかえると、すぐさま叫んだ。
「〈再配置〉!」
馬車の車輪、右後輪を少しだけズラす。
その瞬間、馬車の進行方向が変わり、軌道が逸れた。
崖に突っ込む寸前、誠は彼女を抱えたまま再び空間を歪める。
「〈空間移動〉――!」
草地の安全地帯へ、空間を一気に跳ぶ。
ドゴォン! という轟音とともに、馬車が崖下へと消えた。
二人の身体は、草地の上に転がった。
「……ふぅ。間に合ったか」
女性は、目を見開いたまま震えていた。
しばらくして、ようやく声が出たようだった。
「あなた……なに者……?」
誠は少し困ったように笑った。
「自分は誠と言います。ただの冒険者ですよ」
「え?あのセイラン村の!?私はでs・・」
「もう、やっと追いついた。」
アリシアが息を切らして走ってきた。
「まだ1度しか試していないスキルを乱発するなんて無茶しすぎよ…」
その言葉に、誠は頭をポリポリかきながら苦笑した。
「いや、すまない。身体が勝手に動いていたよ」
「ラズン村に行く前に怪我をしてセイラン村に逆戻りかと思ったわ」
アリシアは顔を膨らませて怒っている。
二人で言い合いしていたところに
「あの、割り込んでごめんなさい。」
女性は、少しだけ頬を赤らめながら、
立ち上がると背筋を伸ばして埃を払い名乗った。
「私はリリア・エステル=ガルディア。ガルディア領の小貴族の娘です。
あなたの“改革”の噂を、父の書類から知りました。
お願いです、私の町も、どうか……救っていただけませんか?」
その瞬間、誠は直感する。
これは自分に与えられたこの世界での使命だ。