表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/36

◆第3章 新たなスキルの可能性

その夜、寝床で今日の事を思い出していた。


「〈再配置〉」


このスキルが助けてくれたことは間違いないが、どういう事だろう。


そういえば魔物を解体していた村人が騒いでいたな。

生物にしては骨格が明らかにおかしいと・・・


「ん?・・・もしかしたら!」


誠は布団から飛び起きてすぐにアリシアの部屋のドアを叩いた


「アリシア起きてる?」


ドアの向こうから返事が返ってきた。

「起きてるわ、こんな遅くに女性の部屋のドアを叩くってどうかしてるわよ?」


「ごめん、どうしても気になる事があって」


「今ドアを開けるからちょっと待ってて。」


利き腕が使えないことで着替えるのに手間取ったのだろう


少し間が開いて普段着のアリシアがドアを開け迎えてくれた。


「ちょっとだけ、スキルを試させてもらうね」


その場で誠はアリシアの右腕に向かって右手をかざす


《スキル〈再配置〉》


パーッとアリシアの右腕が眩く光り、

腫れあがっていた腕がみるみる細くなって元の腕の細さに戻っていくのが分かった。


「え???? 痛くない!? すごい、腕が治ってる。」


誠はこれで確信した。


そう、このスキルは骨を自分の思った通りに再配置できるんだよ!


アリシアは固定していた木の板を外して誠の胸に飛び込んだ。


「ありがとう!これで明日から仕事もできるわ!」


「おやすみ」誠の頬に小さな唇が触れた。


アリシアはそっとドアを閉めた。


誠はその場で呆然としてしばらくの間立っていた。


_________________________________________________________________________________________________________________


アリシアの傷もすっかり癒えた頃、

ある朝、村長に呼び出される。


「お前、ギルドに行って正式に冒険者にならんか?」


「……え?」


「この辺りの村は、冒険者が少なくて困っている。だが、お前のように動ける奴がいれば、村の依頼もこなせる。腕は無くとも、知恵と根性がある。それに……」


村長はニヤリと笑う。


「アリシアも最近、妙にお前に懐いてるようだしな」

「ちょ、ちょっとっ……!」


赤くなるアリシアを横目に、誠は迷いながらも決断する。


「わかりました。挑戦してみます」


_________________________________________________________________________________________________________________


村から徒歩で半日の町〈フローレ〉──小さな冒険者ギルドがある。

受付嬢は小柄な女性で、まじめそうな眼鏡をかけていた。

そして今、目の前の男性を不審そうに眺めている。


「誠さん……スキルは《再配置》?ですか。……うーん、他にスキルは?剣の経験は?え?あ、無しですか……本当に冒険者登録して大丈夫ですか?依頼に失敗すると罰金もありますよ?」


「大丈夫です。この人は一人で牙狼(フォレスト・グランウルフ)を討伐したんですよ!」

アリシアが強く主張する。


「え?ほんとですか!?牙狼だと各個体で脅威度C以上ですよ!?まさかそんな。。。」


「いや、運が良かっただけです!!」


スキルの事は二人の秘密にしようということになっているので疑われても無理もない。


誠は例の赤い石をカウンターの上に出した。

「確かにこの魔石の色合いはC級ですね、半信半疑ですが、わかりました。それでもくれぐれも無理はしないでくださいね。」


こうして、誠は無事に冒険者登録を果たした。ランクは最下位の「Fランク」。

それでも、彼にとっては大きな一歩だった。


「あと、この魔石の買取もお願いします」



「わかりました。C級なので銀貨50枚で買い取らせていただきます。」

初めてこの世界でお金を稼ぐことができた。


「そういえば、皮と爪も渡されたんだった。」


「これも買い取れますか?」


カウンターの上に鋭い爪を出した。


皮は内側から突き刺さった骨でとてもじゃないが人様に見せられる代物では無くなっている。


「こちらは1つ銀貨5枚で買い取らせていただきますね。」

「冒険者登録したその日に買取って中々ないですよ!」

「これからも頑張ってくださいね。」


受付の女性に簡単に会釈して

二人は冒険者ギルドを後にした。


_________________________________________________________________________________________________________________


「さて、今日はどの依頼をしようかな」


誠はこの数日間毎日簡単な依頼をこなしていっていた。


そのほとんどの依頼は報酬が安く誰もやりたがらないような雑用だが、

誠は充実感に満ちていた。


前の世界にいたときはここまで感謝された覚えもなかったから猶更かもしれない。


誠の次の仕事は、「近隣の村の修繕の応援」だった。

報酬は銀貨10枚と安いので今まで誰も受けなかった仕事。

それでもまた誰かの役に立てればと思い受けることにした。


_________________________________________________________________________________________________________________


馬車に乗って1日がかりで辿り着いた「ベイナス村」は、村全体がボロボロで廃村かと目を疑った。


誠は、冒険者ギルドからの依頼で来ましたと説明し村長の元へ


誠が案内された村長の家は、ひと目でわかるほど傾いていた。


壁には大きなヒビ、屋根は苔むし、今にも崩れ落ちそうだ。


「こりゃあ、ひどいな……」


頑張って修繕を手伝おう。だがここまでひどいと建て直しかな・・・


 中に入ると、年老いた村長が咳き込みながら出迎えた。


 ふと、傍の柱を触れると、ギシ……と不穏な音が鳴る。


「うわ、マジかよ……これ、嵐が来たら家ごと倒れるんじゃ……」


上を眺めていたら、うっかり躓いて


「おっと!危ない」


目の前の柱に触れた。


《スキル〈再配置〉》発動しますか?〈Y/N〉


「ん?ここで?・・・・よく分からないがYES」


ギシギシと軋んでいた柱が、音もなく正しい位置に“戻った”。


「……は?」


傾いていた柱がすっと真っ直ぐに収まった。


「もしかして」


家の中の柱一つずつにスキルを発動していく


そのたびに、家全体が少しずつ軋みながら安定していく。


村長は目を見開いたまま固まっている。


1本の柱に目をやった。


「この柱、傾きを直したら上の梁まで届いてないじゃん・・・」

「これいらないじゃん・・・」


「村長、この柱は建物を支えている柱ではないので外して柱の場所を移動しますね。」


「え・・・・」


〈再配置〉

「で、この場所に柱があると安定するので今外した柱を」


〈再配置〉


「???」


「柱の補修は終了です。」


強固な柱になってしまえば、屋根の補修も壁の補修もさほど問題ではなかった。



今にも倒壊しそうだった家はまっすぐな柱に再配置され、

さらに無駄な柱を取り除いたことで

・・・・なんということでしょう。


あの狭くて今にも倒壊寸前だった家が・・・

広々とした空間を確保、風通しのいい家に

村長もご満悦です。


びふぉーあふt・・


この出来事で誠は村長のお墨付きをもらい村人の家を訪れては〈再配置〉を行って、一気に村のおうち事情をさらっと解決。



村の修繕は瞬く間に終わってしまった。


_________________________________________________________________________________________________________________


さらにさらに村の中心で提案(プレゼン)を行った。


「このルートを改善し、共有の備蓄庫を作れば、防衛と物流、どちらにも利が出ます」


「確かに考えたこともなかった。」


「だが、この中心地には建物が既に建っているから全てを取り壊して建て直すとなると10年はかかるんじゃないか?」


「試しにやってみていいですか?」


「それはいいが、どうやって?」


「このスキルの使い方がわかりました」


《スキル〈再配置〉》《スキル〈再配置〉》

《スキル〈再配置〉》《スキル〈再配置〉》《スキル〈再配置〉》《スキル〈再配置〉》


目の前で建物の位置が次々と変わっていく光景をただ唖然とみていた村の長


あっという間に目の前に広い空間ができた。


〈スキルを何度も使用していたことで効果対象のエリアが広がっていることに気付き、

なんと建物ごと再配置できるようになっていた。〉



「この空間に共有の巨大な備蓄庫を作れば直接馬車も乗り入れが可能な物流拠点ができますよ」


その働きぶりを見て、村中の人達からの尊敬の眼差しがすごい


「そうでしょ!誠さんはすごいのよ!」

「誠様ばんざーい!」「うちの娘をもらっT」



「いや……褒めすぎですよ。」「いやいや、私には勿体ないです」


誠は照れながら、これまでとは違う“感謝される仕事”に、充実感を覚えていた。

_________________________________________________________________________________________________________________


「これでこの村での依頼は達成で良いでしょうか?」


「もちろんですよ、むしろこれだけしか報酬を渡すことができずに申し訳ないことです」

村長が深く深く頭を下げながら言った


「いえ、皆さんが喜んでいる顔を見れてよかったですよ!」


報酬の銀貨を受け取り誠は満足そうに笑った。


「では、また」


村人に見送られながらベイナス村を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ