表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/36

■ 臨時収入

正午過ぎ。


王都へ向けて出発する準備を整えた誠たちの“移動拠点馬車”は、

広場の女神像のそばに停められていた。


女神さまに祈りをささげて、旅の無事を祈ろうと思ったからだ。


行商人たちは噴水広場に集まり、いつものように屋台を並べ、

荷馬車の荷ほどきをしていたが――

ふと視線の先に、見慣れない馬車が停まっていることに気づいた。


「おい……あれ、見たか?」


「魔鉄の車体だ。街道用の荷馬車じゃないぞ。」


「窓が……いや、扉に紋様?何だあれは。」


行商の頭目格の男が、おずおずと誠に声をかけた。


「……誠様、失礼を承知でお聞きしますが……

あの馬車、中を少しだけ見せてもらえませんか?」


誠は苦笑しつつも、構わないと手で扉を開いた。


初めて見る“空間拡張の中”

がらり、と重い扉が開いた瞬間――

行商人たちの目の前に広がったのは、外からは想像もできない広さの空間だった。


「……嘘だろ。」


「家じゃないか、これ……!」


床にはふかふかの絨毯、壁沿いに本棚、

奥には寝台と酒場コーナー改めミニキッチン、天井には魔石のランプがきらめいている。


「これが……馬車の中!?」


リノアが腕を組み、ちょっと得意げに笑う。


「外寸は普通の荷馬車。でも中は私の設計と誠のスキルで拡張してるの。

荷物を運ぶだけじゃなく、移動中も休めるし作業もできる。」


行商人の一人が思わず声を上げた。


「これがあれば……!

長旅の間に雨が降っても、夜盗が出ても、仲間が眠れて……

小さな子供や年寄りでも商隊に同行できる……!」


頭目が誠の前で深々と頭を下げた。


「お願いです、誠様……!

この馬車を量産できないでしょうか?

いや、完璧に同じでなくていいんです!

荷台だけでも、寝床と隠し収納を拡張できるだけでも……

これがあれば、この街にもっと行商人が集まります!」


誠はちらりとリノアを見る。


リノアは少し考えて、真剣な声で言った。



「空間拡張は誠のスキルありき。でも、

魔力炉と符術で“簡易版”なら設計できるかもしれないわ。

誠が起点を作って、魔導技師が拡張符を調整すれば――

行商用の小型“空間キャビン”として量産できる可能性はある。」


行商人たちの目が一斉に輝いた。


「造って頂けるなら前金でこれくらいはお渡しします!」

「いやいや、うちはこれくらい出しますよ!」

「だったらうちは即金で全額お支払いします!」


商人たちは我先にと誠に交渉を持ち掛けた。


誠は大金の袋をどんどん渡されてもう断ることは既に出来なかった。


「皆の意見はわかった!謁見が終わり、街に戻り次第組み立てるから

順番に予約の名前を書いてくれ!!」


リノアに予約票を作ってもらい、

商人たちの列から解放された時には既に辺りは暗くなってきていた。



こうして――

女神の街ディメストリア発、

世界初の“空間拡張キャビン馬車”の量産化計画が、

思わぬ形で動き始めたのだった。


「うん、今日の出発はやめて明日の朝にしよう」


皆がコクンと頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ