■ 街の名物《ディメストリアの杯》
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女神ディメトリアの加護を受け、
空間を編み直し、リノアの現代知識で廃村は生まれ変わった。
その名は――《ディメストリア》。
女神の名を冠し、空間を司る祝福を宿すこの場所は、
もはや“村”ではなく、誠たちだけの新たな“都市拠点”だった。
広場に立つ女神像の前で、誠は深呼吸をする。
「ここを……俺たちの拠点にする。」
言葉にした瞬間、空気が凛と張り詰め、
街の中央に立つ古代神殿が、新たな“本拠”としての息を吹き返すように光を帯びた。
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「でさぁ、誠……」
彼女はいつもよりずっと真剣な顔で、けれど手には空の酒瓶をぶら下げている。
「せっかく街を作るんだ。だったらさ……
酒が飲める場所を作ろうよ!
飲んで騒いで、つまみを出して、歌って寝転がれる酒場が欲しいの!」
ぶれないな・・・
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「酒場……か。」
誠は少し笑った。
新たな街――
そこに“人の匂い”を宿すなら、確かに酒場ほど象徴的なものはない。
「いいだろう。作ろう。」
女神さまの加護が発動しなかったら自分たちで建てるしかないけど・・・
ミラの耳がぴくりと動き、目を輝かせた。
「やったー!!誠最高!!
ついでに私専用の席も作って!常連席!!」
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アリシアが呆れたように笑う。
「……どうせなら、外から来る人を迎え入れる顔にもなるわね。
“女神の街ディメストリア”の入り口に、立派なパブを構えよう。」
「女神様すいません、こんなことにスキルを使う事をお許しください・・・」
「・・・・・」
誠が空を仰ぐと、いつもより時間がかかったが
胸の紋様が淡く光った。
無事許可されたようだ。
「〈空間再構築〉――発動。」
壊れた廃屋の残骸が浮かび上がり、光の中で分解される。
リノアのスケッチを元に、
石と木が組み合わさり、古代神殿の横に重厚な木造の二階建ての建物が組み上がる。
リノアはアリシアに手伝ってもらい何か大きな機械を組み立てている。
まあ多分あれだよね。
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重厚な扉、暖かいランプの光、
カウンターの奥には完成した大型の魔力冷却庫があり、リノアが設計した“魔力冷蔵システム”で冷たい酒がいつでも供される。
大きな樽とテーブルが並び、
壁には暖炉と女神像のレリーフ。
誠は最後に看板を掲げた。
《ディメストリアの杯》
「ほら、ミラ。お前専用の席はここだ。」
カウンターの一番端に、深く腰掛けられる特製の木椅子。
座面にはミラの名前が刻まれている。
「きゃははは!やったやった!
誠、大好きー!!」
ミラは誠に飛びついて頭突きをかましつつ、さっそく席に座り、カウンターを叩いた。
「さぁ!祝いだ!一番高い酒を開けろー!!」
「「「かんぱーい」」」
この日ばかりはみんなで乾杯した。
未成年のリノアに酒を無理やり飲ませようとしたのでミラは三日間の禁酒を命じた。




