◆第9章 新たな街の名前
それから数日後の朝
広場に3人を集めたリノアが頭を下げていた。
リノアが抱えているのは、この世界にはない“現代建築のスケッチと“生活インフラの知識”を詰め込んだノートだった。
「みんな一生懸命に作業してくれたんだけど、ごめんなさい
やっぱりここを、ただの平凡な街で終わらせたくないの」
誠はリノアを見てにやっと笑った。
彼女の追究心は留まることをしらないようだ
「人が集まり、学び、働き、笑って暮らせる街にする。
――私が知ってる“便利な世界”の形を、この場所に築くの。」
「そう、ここの街には現在知識も詰め込みたいの」
「力を貸してくれる?」
「私たちの知識では十分立派になったと思うけど、違うのね?」
リノアはこくんと小さく頷いた。
「まあそうだな、今のままだと近くの街と変わらないから人が来ることはないよな」
誠は頷き、そっと胸の紋様に手を当てる。
「〈空間再構築〉――力を貸してくれ、ディメトリア。」
青い光が彼の掌に集まり、街全体を覆うように広がった。
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「まずは上下水道!」
リノアがノートを指差す。
「まずは地下に残ってた水脈を利用する!
それを分岐して家々に繋ぐの! 衛生が整えば人は集まる!」
誠のスキルが地中に伸び、地下水脈を光の糸で“切り取り”、
空間を繋ぎ直して街の中心に水源を生み出す。
「次は・・・古い材を全部取り除いて……!」
先日造ったばかりの小屋が空へ浮かび、誠の手のひらで解体される。
古材は瞬時に仕分けられ、鉄、石、木材に分解。
「こっちの設計図通りに並べ直して!」
あれ?これってまさか現代のマンション・・?
耐震性の高い鉄筋コンクリートのマンションを街の中に建てると
一気に近代的な街並みになった。
リノアが指示を飛ばす。
「家は全部、南向きに窓をつけて採光を取る!
キッチンとトイレを分ける! 調理場に煙がこもらないよう煙突を共用化!
ゴミは集積場に一か所に集めて焼却炉で処理する!」
広場には水源も引いた近代建築物が次々に形を成していく。
「電力は?」
それを待ってましたと言わんばかりにリノアが鼻をふふんと鳴らして提案する。
簡単に説明するとね
「水力発電よ! 崖の上の神殿跡の地下にも水脈が通っていたことが分かったから
まず水脈を水路に拡張。作り替えて補強して、街の地下に通した水路まで落としてループさせるの。
そうすると崖の上から地下水路までの落差エネルギーを電気に変える。
そして魔力石を蓄電池式にして永久発電システムを構築できるわ!」
話を聞きながらアリシアとミラはぽかんとしている。
いや、リノアさんこの世界の人にとっては次元が違いますよ・・・
リノアの現代知識がこの世界の魔法理論と交わり、
街の地下に“魔力循環炉”が新たに設置される。
空に小さな青い光球が連なり、街の通りを柔らかく照らす街灯に変わった。
その光は今後決して消えることは無い。
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中央広場には女神像と噴水が輝き、
石畳の通りは碁盤目状に整備され、
街の端には集会所、診療所、小さな市場の骨組み――
全てが整然と並び、人々が暮らす“都市”の息吹が漂っていた。
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ここで暮らす人たちの生活、笑顔や笑い声が脳裏に浮かんだ。
「まだ始まりよ。これで人が集まる。
人が集まれば物が動き、学びが生まれる。
――ここはもう“村”じゃない。誠、名前をつけて。」
誠は広がる街並みを見渡し、女神像を見上げた。
「この街の名前は――『ディメストリア』だ。」
夜明けの空に、女神像が小さく微笑んだように見えた。




