■ミラの正体
「そういえば、武器はどうするんだ?」
誠が尋ねると、ミラは空になった皿を名残惜しそうに撫でながら、さらっと言った。
「質屋にある。」
「……は?」
誠、アリシア、リノア、全員が揃って固まる。
「いや、だって生活費とギャンブルで手放すしかなかったんだよぉ。でも大丈夫、質札はちゃんとある!」
そう言って、ポケットからくしゃくしゃになった札を誇らしげに取り出すミラ。
「お前ほんとに冒険者か……?」
アリシアが呆れた声を出すと、ミラはキュッと口角を上げ、不敵に笑った。
「ふふん、実は私――Bランク冒険者です。」
「……は?」
またしても静まり返る空気。
ミラは深く帽子を被り直し、耳を隠しつつ背筋を伸ばした。
「……さらに言うと、エルフです。」
「エルフ!?」
驚愕する一同。ミラは帽子の下からちらりと尖った耳を見せる。
「いや、だって……目立つじゃん?エルフ嫌われる地域もあるから。
色々と面倒だし、食いっぱぐれたくないし」
「隠してる理由が小市民的すぎる!」
リノアがすかさず突っ込んだ。
「でもまあ、ご飯をおごってくれた恩もあるし――お姉さんが一肌脱いで、ダンジョン攻略、手伝ってあげましょうかね♪」
ウインク一つで誠たちに迫るミラ。
「ま、まあ……頼もしいけど……まず質屋に行こうか?」
「うむ。お宝より先に、あたしの“神器”を回収だ!」
こうして、謎に満ちた(そして若干だらしない)Bランク冒険者のミラが正式にパーティ加入。
一行はまず武器を取り戻すため、ダンジョン前に質屋へと向かうのだった。