表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/36

◆第7章 酒場での新たな出会い

_________________________________________________________________________________________________________________

少しずつではあるがリノアのレベルも上がり、

一人でも弱いモンスターであれば倒すこともできるようになった。

だが、護身用の杖は回数制限があるので早めに攻撃スキルを身に着けたいところだ。


このままダンジョンに入ると杖は破損してしまうので武器を検討するため

一旦近くの町にやってきた3人。



「リノアの武器を考えないとな……だが、まずはとりあえず腹ごしらえだな!」


誠がそう呟いて、仲間たちと町の中央通りにある大衆酒場に足を運ぶと、ちょうど夕飯時で店は賑わっていた。獣人の店主が大声で客をさばく中、こちらと目が合った。


「はーい!いらっしゃい!何人だい?」


「3人だ」


「はーい、そこのテーブル席に座ってくれ!注文が決まったら呼んでくれよ!」


程なくして、注文した料理が運ばれてきた。


_________________________________________________________________________________________________________________


「この煮込み肉、ほんっと美味しい!」

「パンもふかふかで最高……」

アリシアとリノアが口々に感想を漏らし、誠は満足げに頷いていた。


ふと、誠の視線がテーブルの向こう側、壁際の隅に座るひとりの女性に留まった。


深い黒の帽子を目深にかぶり、身体を覆うボロボロのマント。顔のほとんどは帽子の影で見えず、銀の髪がちらりと覗く。どこか、場違いなほど影の薄い存在。


だが――彼女の視線だけは、強烈だった。


こちらのテーブルに置かれた料理の数々を、じっ……と見つめている。


温かいシチュー、バターの香るパン、香ばしく焼かれた肉串……

そして自分の目の前の皿に置かれた、石のように硬そうな黒パン。


彼女は――それらを交互に見比べていた。


「……こっち見てるね。」

リノアは小声でアリシアに囁いた。



誠はおもむろに席を立ち、彼女の元へ


「……よかったら、一緒に食べませんか?」

誠がそう声をかけると、黒い帽子の女は一瞬ぽかんと口を開けた。


「え?……いいの? じゃ、すいませーん! ここのテーブルに盛り合わせ追加でお願いしまーす!」

図々しいほど元気な声で注文を飛ばした。


誠たちのテーブルに座るや否や、彼女は勝手に肉に手を伸ばし、パンをちぎって口に運び、スープをぐいっと飲み干す。

見事な食べっぷりだった。


「……あの……」

アリシアが戸惑いの表情を浮かべる。


「まあまあ……」

誠も苦笑いしつつ、彼女の勢いに押されて文句を言う気も失せていた。


ようやくひと息ついた女は、スプーンを手にしたままぽろぽろと涙をこぼした。


「……んぐ……ごめん、なんか、久しぶりに……ちゃんとしたご飯食べられて……」

ぽろぽろと涙を拭いながら、彼女は少し照れくさそうに笑った。


「一週間ぶりなんだ……ちゃんとした食事。お金なくてさ……パンと水だけだったの……」


誠は静かに頷き、リノアが小さな声で「かわいそう……」とつぶやく。


「そりゃ大変だったね。でも、もう大丈夫だ。たくさん食べて、元気取り戻して」

誠の言葉に、彼女はこくりと頷いた。


「うん……ありがとう、ほんとに……」


「もぐもぐ、、自己紹介が遅れました。もぐもぐ、、、魔法使いのミラです。」

そういってあいさつはしているが、

口の中に食べ物を詰め込んでいる・・・


「いや、挨拶は食べ終えてからにしようよ・・・」

3人は半ばあきれ顔だ。


「一応こちらも自己紹介しよう」


「誠だ」「アリシアよ」「リノアです」


ってずっと食べててこっちの話、全然聞いてないし!!


その日、誠たちのテーブルからは笑い声と食器の音が途切れることなく響いていた。


_________________________________________________________________________________________________________________



「……で、なんでそんなにお金に困ってたんだ?」

誠がふと尋ねると、黒い帽子の“魔法使いミラはスープの中に顔を突っ込みたくなるくらい俯いた。


「……ギャンブルで、ちょっと……」

ぼそりと漏らすその声に、一同がピタリと動きを止めた。


「え、まさか――」

「はい、すりました。ぜんぶ。所持金、ぜんぶ」

潔く両手を上げて降参ポーズ。


「バカじゃないの!?」

アリシアが半ば呆れ、半ば本気で叫ぶ。


「だって、いけると思ったんだもん!朝は寝坊しなかったし、

今日はツイてるって!ラッキーカラーも赤だったし!」


「そんな理由で賭け事に手を出すなぁ!」

アリシアの突っ込みが冴える。


「ギャンブルってなにが流行ってるの?」

リノアが興味津々で聞いてくる。



「うん、えっとね……簡単に言うと、ボールを転がして赤か黒、どちらのマスに落ちるかを当てるゲーム」

「今日のラッキーカラーが赤だったし、最初は勝ってたから・・・全財産を賭けた途端に負けました」


「え?バカなの?」

「うっ……リノアちゃん、辛辣……!」


ミラは椅子の背もたれに崩れ落ち、頭から黒帽子がずれ落ちかける。


「そもそも、なんでそんなことしたの?」

誠の問いに、ミラはぼそっと答えた。


「だって、楽に生きたいじゃん?一攫千金、夢見たの……」


「で、今は?」

「スープが身に染みて泣きそう……」


苦笑する誠たちの中、ミラは結局、残った食事も全力で平らげて――


「恩返しのためにも!ぜひ、あたしを仲間に入れてくださいっ!」

食後に、勢いよく頭を下げたのだった。


誠は少し考え、にやりと笑った。

「ま、面白いし悪くない。けど、ギャンブルは禁止な」


「えぇえええええええっ!?」

こうして、魔法使い”ミラがパーティに加わるのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ